ジャニオタ八十三番地

長く咲く花を見つめています

マニアックはマニアック(ネタバレ感想)

 

この記事は全力でマニアックのネタバレをしています。これから観劇される方は、ネタバレを見ずに観劇されることをおすすめします。

 

 

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先日行って参りました、音楽劇「マニアック」@森ノ宮ピロティホール!!土日月と見てきて、次回までは日も開くので忘れない内に諸々殴り書いておこうと思います。

上にも書きましたががっつりネタバレなので、以降は自己責任でご観覧下さい。最後まで読むと毎度のごとくとても長いので、お暇な時の時間潰しにでもなれば幸いです。ちょこちょこ追記しています。

 

 

 

 

あらすじ(ネタバレ)

※個人の記憶・印象によるもので台詞もニュアンスです。演出や感想については後で書くのでここは物語の内容だけです。メインキャスト(パンフレットに基づく)の方のみ役名の後ろにお名前を書いています。人が死にますし、非人道的な描写や下ネタと捉えられる部分が沢山ありますがそのまま書いています。

 

 

・一幕 

舞台はとある町の山の上に隔離された「八猪(やずま)病院」。

パニック障害の発作で一般病棟に入院していた、元新聞記者で現ジャーナリストの花旗一郎(浅野和之は、入院中、不思議な幻覚のようなものを見る。彼を見舞いに来た妻の花旗珠代(頼経明子は一郎の話を笑い飛ばすが、実際八猪病院では、見舞い客が身体検査を受け携帯電話やカメラを預けなければならなかったり、開放病棟にも関わらず患者が異様に少ない等、引っかかる点があった。

この病院は何かがおかしい…ジャーナリストの勘がそう言っている…。すると怪しむ一郎の病室に、突然見知らぬ入院患者が入ってくる。目の下は黒く顔はやつれ、正気ではない。彼は「助けてくれ…ここで生きたくない…!」と叫ぶと、腹にナイフを刺して自害した。一郎は驚き、呆然とする。

 

 

一方、病院の中庭では植木職人達が木を刈っていた。三日間かけて病院中の木を刈り整える予定だ。

植木職人の一人である犬塚アキラ(安田章大は、考えていることが無意識に植木の仕上がりに反映されてしまうほど、まっすぐで素直な性格。アキラは三年前に離婚をしていて、元嫁がソシャゲにハマり二百万円もの借金を作り、挙句家を出て行ってしまったという苦い経験の持ち主。にも関わらず、アキラは「もっとしてやれることがあったかもしれない」と後悔をしていた。

植木屋の先輩である柴賀ユタカ(小松和重が殺虫剤を取りに行っている間、アキラが作業中の中庭には、病院の院長である八猪不二男(古田新太、ホテルチェーンを経営する女社長・百合本由梨(山崎静代とその側近である漆原清(宮崎秋人がやってくる。

某有名ホテルチェーンの派手な帽子を被った有名女社長ような風貌の百合本は、この病院をリノベーションし、新感覚のホラー体験ができるホテルにしたいと考えているようだ。 

しかし、ホテル側の提案を不二男は一蹴。

そこへ不二男の一人娘・八猪メイ(成海璃子が、医大での研修を終えて二年ぶりに八猪病院に帰ってくる。メイはどこか不機嫌で浮かない様子だが、メイを溺愛する不二男は大喜び。メイを連れて、粘る百合本達を無視して病院内へ戻ってしまった。

ホテルに改装する提案は断られてしまったが、簡単には諦めない百合本と漆原。院内にはまるで患者がおらず、建物も老朽化しているのに、こんな状況で経営が成り立つわけがない…何か裏があるに違いない…と、二人は怪しんでいた。

植木を刈っていたアキラが図らずもその話を聞いていると、ユタカが中庭に戻ってきた。そこへ突然、拘束具のようなベルトが付いた服を着た入院患者が現れる。話しかけるも言葉は通じず、足取りもフラフラで、正気とは言えない様子。

アキラは、刃物を振り回して暴れ出したその患者を止めようして、腕に切り傷を追ってしまう。傷を手当をしてもらうため、ユタカに連れられ病院内へ入った。

 

 

病院内の診察室では、帰って来たばかりのメイが不二男と口論になっていた。

メイは幼い頃から、医者になり不自由な人々を救う夢を持っていたが、「大量出血が無理」という致命的な理由で医者になることを諦めかけていた。大学病院でも、出血を目の当たりにしては何度も意識を失ったのだと言う。

それならば、ここに戻ってきて「研究者になりなさい」と言う不二男。なんでも不二男は、研究のために新たな病棟、通称「北棟」を作り、ある研究に力を入れているらしいのだ。

その研究とは、眠っている神経を呼び覚まし、脳みその麻痺によって自らの意思で動けなくなってしまった患者を、自在に動かすというもの。不二男の命で、車椅子に乗った一人の男を連れてくる看護師長の甘木乃絵(堀内敬子。メイはその車椅子の男・寿を知っていた。

寿はメイの同級生だった。貧しい家庭に育ち、母の再婚相手の暴力や家庭環境の悪化でグレて、シンナーを吸い覚醒剤をやり頭がおかしくなった結果、ある凄惨な事件を起こした男だった…。(※事件については後述)

不二男が指示を出すと、車椅子から自力で立ち上がり嘘のように動き出す寿。しかし目の焦点は合っていないように見える。その不気味な光景にメイは驚く。

そこへ、一人だけミニスカートのセクシーな看護師・小神田一子(山本カナコ)がやってきて、北棟から患者が脱走したことを不二男に伝える。状況確認のため、小神田と共に診療室をあとにする不二男。

 

 

不二男がいなくなり、メイは「この二年で何があったの?」と甘木を問い詰める。

甘木曰く、不二男はメイがいない寂しさを埋めるためか研究に没頭し、単身海外に渡って新しい技術を得て、帰国後に病院を改造し、素晴らしい成果をあげているとのこと。甘木は不二男の研究にすっかり陶酔している様子だったが、メイは不信感を拭えなかった。

二人が話をしていると、百合本と漆原が慌てて診療室にやってきて、先程中庭に患者が逃げ出したことを報告する。追ってアキラとユタカも診療室へ到着。甘木はメイにアキラの手当てを任せ、車椅子の寿と共に外へ出て行った。

怪我をしたアキラに、「うちの患者さんがすみません…」と申し訳なさそうに謝るメイ。目がぱっちり、色白、頭の良い女性がタイプなアキラは、好みのタイプどんぴしゃなメイに一目惚れをしてしまう。百合本と漆原が診療室を出て行き、メイがアキラのタイプの女性だと気付いたユタカも気を利かせて彼女と二人きりにしてくれた。「笑うと更にかわいい〜!」と内心盛り上がるアキラ。

血が苦手なメイはアキラの腕の傷をなかなか見ようとしなかったが、途中、アキラの手の甲にある特徴的なホクロの並びを見て、幼い頃に公園で怪我した自分を手当をしてくれた人を思い出す。

「え?!あの時のあの子なんや?!」

「はい!その節はありがとうございます!」

なんと、アキラとメイは子供の頃既に出会っていたのだ。アキラは親の都合で関西に引っ越しをしていたものの、戻って来たこの町で運命的な再会を果たした二人。お互いの名前を伝え合い、アキラの恋心は膨らんでいく。

 

 

メイと出会った日の夜、アキラはユタカと町のスナックで呑みながら、メイと付き合うためにはどうすればいいのか、作戦会議のごとく相談をしていた。

すると話を聞いていたスナックのママが、八猪病院について知っていることを教えてくれる。

元々は大きな病院だったが、インターンに行ったメイが家に帰ってこなくなってから、不二男は大勢いた医師や看護師をほとんど解雇し、自分で出来る範囲の診察に切り替えたそうだ。八猪病院は、医療費の払えないような人達もやってくる指定病院。そのような人がやってくると不二男は必ず家族構成を聞き、身寄りがないと知ると、あれこれ理由を付けて北棟に入院させるらしい。その上、北棟が出きてから病院はかなり儲かり始めたとのことで…。

怪しい噂だらけな上に、娘を溺愛する不二男は過保護でメイに寄り付く男を許さない。医者と植木屋、禁断の格差恋愛に直面し、寧ろ燃え上がってしまうアキラの恋心。

「……俺が彼女を助けなきゃいけない気がする!」

 

 

明くる日の北棟内では、メイが不二男に詰め寄っていた。

寿が不二男の指示で動いていたことや、甘木に聞いた海外の話等から、脳に何か特殊なチップを埋め込んでいるのではないか?倫理的に公表できない研究なのではないか?と、疑うメイ。すると不二男は「さすがメイ!」とあっさりそれを認め、ベッドに寝ている自分の患者達を紹介し始めるのだった。

「お父さんの言うことをきく奴隷、八猪北棟オールスターズだ!」

その中には、勿論あの寿もいた。自身もブラジルで脳に特殊なチップを埋め込んできた不二男は、言葉なくとも患者を操ることが出来る。身寄りのない犯罪者予備軍の人間を集め、薬漬けで廃人にして手術をし、その上で自分の意のままに奴隷のように動かすという恐ろしい研究をしていたのだった。不二男の人体実験により、廃人だが視覚が発達した者、聴覚が発達した者、味覚が発達した者…。人道を外した父親の行動に絶句するメイ。不二男は完全におかしくなっていた。

 

 

一方、アキラとユタカが中庭で仕事をしてると、病院内の不可思議を調べるため病室を抜け出した一郎がやってくる。一郎を警戒するアキラとユタカだったが、彼は開放病棟の患者だとわかり一安心。

「この病院には何か裏がある…!」

一郎曰く、立入禁止とされている北棟には、様子のおかしい患者達がベッドに拘束されて並んでいるらしい。ジャーナリストとして真相を確かめるべく北棟に潜入したいが、入院中の一郎はあいにくのパジャマ姿。このままじゃ目立ってしまうため、植木屋の作業着を貸して欲しいと二人に頼み込む。

北棟へ忍び込み、昨日のような脱走騒ぎを起こしてそれを自分が止めれば、メイに活躍する姿を見せ惚れてもられるかもしれない…。アキラは一郎の提案を受け入れ、ユタカと共に三人で北棟へ向かった。

 

 

その頃、諦めの悪い百合本&漆原コンビもまた、清掃員に化け、こっそり院内に潜入していた。怪しむ甘木の目をなんとかパスして、病院の謎を探るべく北棟へ向かう。

甘木は看護師の小神田と共に、病室からいなくなった一郎を探しに。美人でセクシーな小神田は不二男のお気に入りで、不二男に傾倒している甘木は彼女をややライバル視していた。

 

 

アキラとユタカ、作業着に着替えた一郎が北棟に着くと、そこには目を疑う光景が広がっていた。

恰幅のいい一人の患者が、服を血だらけにして、人間の腸のようなものを食べていたのだ…。そしてその傍らには、食われてバラバラになった看護師の死体が転がっている。暴れ出した患者に襲われて食べられてしまったらしい。

一行は逃げ出そうとするが、その人食い患者・太摩呂(読み:ふとまろ)が寿を食べようとする様子を見て、正義感の強いアキラは助けようとする。見兼ねたユタカと一郎も協力し、太摩呂を抑えながら奮闘。その内に百合本&漆原もやってくるが、死体を見た百合本はショックで気絶してしまう。「腹減ったぁぁぁぁ!」と叫び、止まらない太摩呂。一郎がどうにか寿を車椅子に乗せて連れ出すが、逃げ遅れたユタカが太摩呂に足を噛まれてしまい、北棟内は大パニックに。

その後もアキラ達が必死で応戦していると、ようやく甘木がやってくる。棟内の騒ぎを目の当たりにすると、一体誰が勝手に入ったのかと怒り出すものの、看護師達に診療中の不二男に知らせるように指示をし、電話でメイを呼んだ。そして注射を使って太摩呂を鎮静させる。

メイはすぐに北棟にやってきた。惨状を見て驚くメイに、アキラは大声で言う。

「メイさん!あんたの父親はおかしい!!」

すると甘木が「先生を侮辱しないで!」と声を荒げる。甘木は北棟のことも、不二男の研究についてもよく知っていて、その上で彼を支持し忠誠を捧げているようだった。

太摩呂に襲われたユタカの傷は、一先ずメイが診ることに。足をかじられたユタカは、ゾンビに食われた自分もゾンビになってしまう等と取り乱すが、甘木がそれを否定する。

「太摩呂さんはゾンビじゃありません。お腹が空いていただけです。あなた達は何もわかっていない」

そう、太摩呂はゾンビじゃない。死んで生き返るのがゾンビなのであって、太摩呂は一度も死んでいない。不二男の手術によって味覚が発達しすぎただけで、点滴だけじゃ満足いかず、お腹が空いていたから人間を食べてしまっただけだと。

甘木の言っていることの意味がわからず、呆気にとられるアキラ達。そこへ騒ぎを聞きつけた不二男が到着し、「太摩呂くんはゾンビじゃない。脳みそが壊れただけのこと」等と無茶苦茶な説明をする。アキラは、こんなものは犯罪だ、人間をこんなふうに扱っていいはずがないと糾弾するが、もはや意味はない。

「こんな病院、俺が潰したる!!」

アキラは怒り、警察に全て証言してやると啖呵を切るが、不二男は「がたがた言うなボケ!メイとヤりたいだけだろ!」と言い捨て、アキラとユタカ、そして気絶した百合本を拘束してしまう。

そして不二男は、寿を連れて逃げた一郎夫妻を追うことに。

 

 

 

 

・二幕

一郎とその妻・珠代は、連れ出した寿を車椅子に乗せたまま逃げていた。警察にも駆け込もうとするが、実験によって五感が秀でた患者を使い二人を追跡していた不二男に見つかってしまう。どうにか応戦し、なんとか寿を連れたまま不二男を撒いて逃げる一郎夫妻。

 

 

北棟ではアキラと百合本がベッドに拘束され、捕まっていた。ユタカはカーテンの向こうで、メイによる怪我の緊急処置を受けている。血が苦手なメイも、「火事場の馬鹿力です!」と、この時ばかりはなんとか力を奮ったようだ。

その間、病院の看護師達が太摩呂に食われた看護師の亡骸を片付ける。甘木はお気に入りの鉈を片手にアキラ達を見張っている。不二男の研究は正義だと言って曲げない甘木と口論になるアキラだが、同じく、ユタカの処置を終えたメイが生まれ変わったような顔付きで 「私は父と戦います!!」と宣言。甘木にも「私は父を許せない」ときっぱり言い切る。凛々しいメイに、アキラは「ジャンヌダルクや!」等と更に惚れてしまう気分。

それでも甘木は、メイは不二男を誤解している、先生の研究は世のため人のための社会正義だと言って譲らない。

 

 

その頃、社長の百合本を助けるため北棟から逃げていた漆原は、助けを求めて駆け込んだはずの警察でなぜか捕まっていた。公務執行妨害だと言われ、全くもって納得のいかない漆原だったが、この町の警察には既に不二男の息がかかっていたのだ。

不二男と町の警察が繋がっているのには、理由があった。

それには、北棟の患者であり、メイの同級生でもあった寿が過去に起こした事件が絡んでいた。寿は高校一年生の時、仲間二人と共に一人の女子高生を拉致し性的暴行を加えた挙句、絞殺して彼女の死体を遺棄したのだ。当時、寿や仲間達は未成年。法律では満足に裁かれなかった。

被害者の女子高生は、なんと町の警察署長の娘。そして八猪病院の院長である不二男は、警察署長と幼馴染だった。そして三年前、警察署長はあたためていた復習計画を話し、不二男がそれに協力した。出所させて病院に送り、薬漬けにして廃人になった後、不二男の実験台にするというものだ。寿は、不二男の不道徳な研究における最初の実験台だったのだ。そこから火が点き、無差別的に人体実験を繰り返すようになった。

警察署長と不二男は繋がっている。だから八猪病院から逃げ延びた人間が、この町の警察に駆け込んでも無駄だ。性犯罪者は放っておいたら治らない…治らないものを治してさしあげている…だから先生の実験は正義であると、甘木は説明する。

「お父さんはもう実験がしたいだけよ!」

「こんなことのために看護師になったんじゃないでしょ?甘木さん、あなたが正しいと思うことをして!」

不二男を深く信じ込む甘木はなかなか聞く耳を持たないが、メイを筆頭に彼女を真摯に説得して、なんとか病院から共に逃げ出す展開に持ち込んだ。甘木の指示で操られた患者達はアキラ達の拘束を解き、全員で外へ。

と、思いきや、今度はメイが一人でここに残ると言い出した。お父さんは私を支配したいだけ…不二男が自分に執着していることをよくわかっているメイは、みんなの代わりに一人残ると言って聞かない。

「あの人、私のマンションに監視カメラをつけてたのよ。だから二年間私が帰ってこなくても平気だった!だから私は…監視カメラに向かっていやらしいことをしてやった!カメラに向かって股を開いて、私はいい子じゃないって思い知らせてやろうって…!」

感情のまま話している内に、言わなくていい情報まで口にして脱線し始めるメイ。そんなメイを落ち着かせて、一緒に逃げるよう説得したのはアキラだった。ユタカと百合本は甘木と共に先に逃げてもらい、自分もメイを連れて後から追いかけると約束した。

 

 

メイはこんな目にあっても自分を助けようとしてくれるアキラを不思議に思うが、アキラは「ぶっちゃけ、あんたに惚れたんや」と告白する。

それから、放っておけない理由がもう一つ。元嫁がソシャゲ廃人になり精神を病んだ頃、精神科で適当な医者に大量の薬を処方され、症状が悪化したにも関わらず酷い逆ギレをされてしまったことがあり、アキラはその経験から悪どい医者をどうしても許せないのだった。だからこそ、メイには素敵な医者になってほしい。

「医者の世界も狭い。きっと父は逮捕されるし、どこへ行っても八猪の娘って言われる…」

もう医者にはなれないと下を向くメイを優しく励ますアキラ。塞ぎ込んではいけない、人間は内に篭ってないで外に出て動かなくちゃいけない。外へ出て太陽を浴びていかなくちゃいけない。だからメイもここを出て、また知らない町でやっていけばいい。医者が無理だと言うなら、自分と一緒に植木や花の仕事をすればいい。

アキラのまっすぐな思いに心を動かされたメイは、父のことは警察に任せ、この町を出てアキラについていく決心をした。

「本当に…私でいいんですか?」

「あんたが、俺を選んでくれるなら」

アキラとメイは手を取って、二人で北棟を抜け出す。 

 

 

所変わって、一郎夫妻は変わらず不二男から逃げていたが…。一郎が飲み物を買いに行っている間、珠代が辺りを見張っていると、突然、廃人だった寿が意識を取り戻し喋り始める。寿は一人でゆらゆらと車椅子から立ち上がり、不気味なことを呟きながら珠代を襲い始めた。どうやら不二男から遠く離れたことで管轄を外れ、自由意志で動けるようになったらしい。性犯罪者としての感情がまだ染みついている寿は、目覚めた途端から珠代をレイプしようとする。間一髪で一郎が珠代を助けるが、その最中で三人は不二男の息がかかった警官に発見されてしまい、拳銃を突きつけられ、成すすべなく八猪病院へと連れ戻されてしまう。

 

 

先に北棟から逃げていた面々は、病院の正面からではなく森を通って逃げようと画策中だった。しかし、忠誠心の強い甘木が不二男を裏切ることは決してなかった。不意打ちのスタンガンで、甘木に気絶させられてしまう百合本。ユタカは甘木と揉み合いになるものの、逆に甘木にスタンガンを食らわせ、なんとかピンチを脱した。

そこへ病院の看護師達が数人やってきて、アキラとメイもそこへ合流。看護師達は不二男や甘木側ではなく、アキラ達の味方だと言う。

そんな矢先、いきなり銃声が響き渡り、看護師の内一人が撃たれて死んだ。脱走は間に合わず、不二男が拳銃を持って病院に帰ってきてしまったのだ。捕まってしまった一郎夫妻や、寿、漆原の姿もある。もはや人の命をなんとも思っていない様子の不二男は気まぐれに看護師を殺し、歯向かうアキラにも銃口を向ける。なんとか不二男を正気にしようと止めるメイ。

そんな緊迫した状況の中で、なぜかユタカがひっそりとうずくまっていた。ユタカの行動を不審に思った不二男は、「お前まさかチンコかいてんのか?」とその場にきおつけさせようとする。頑なに拒むユタカだったが、銃で脅されて仕方なく従うと、不二男の言う通りユタカはこの状況で勃起していた。不二男にキチガイだと評されるユタカだが、曰く、これまでこんなことは全くなかったのに、殺された看護師を見た途端こうなってしまったのだと言う。

不二男はその現象を気持ち悪いと面白がって、次は唐突に珠代を銃殺。一郎が叫ぶ。その光景を目にしたユタカは更に勃起を繰り返し、現場はどんどん混沌に包まれる。ユタカの突然変異に理解が追いつかないアキラ達。不二男は気絶していた甘木や百合本も起こすと、まるでゲームのように「次は誰にしようか」と銃口を泳がせる。例え全員殺したって、医者の自分にはどうにだって処理できるのだと。大量死でてきとうに片付けてやると。

悪夢のような状況は続き、漆原は不二男の脅しで仕方なく百合本を鉈で斬り殺すと、不二男に撃ち殺されて死ぬ。それを見てまた更に反応してしまうユタカ。不二男はどんどん面白がって、更に人を殺す。

すると、見かねたメイが不二男の前に割って入った。そして彼女はとんでもないことを告白した。

「やめて!この人のアソコが大きくなるのは私のせいなの!!」 

「私、血を見るとチンポが吸いたくなるの!!」

不二男を筆頭にポカーンとする一同。

メイによると、メイは血を見るとどうしても性的興奮を抑えられなくなってしまう500万人に一人の奇病にかかっていて、太摩呂にかじられた足を治療した際、カーテンの向こうで我慢ならずユタカの局部を「吸っちゃった」せいで、その奇病をユタカに移してしまったらしい。だからユタカは人が死に血を見るたび、異常なまでに興奮してしまうのだと。

「お前何言ってんだ!?綺麗な顔して…」

娘の謎のカミングアウトに戸惑う不二男。その隙をついて一郎が不二男から銃を奪おうとするが、揉み合いになり、甘木が流れ弾に撃たれて倒れてしまった。またもや局部が反応し、もはや痛くて泣き叫ぶユタカ。

不二男は甘木の死に怒り、刃物やチェーンソーでの大乱闘になる。負けじと戦うアキラ達。誰かが死ぬたび泣き叫ぶユタカ。もう我慢できない!とユタカにがっつくメイ。不二男の奴隷である患者達もやってきて、現場はとんだはちゃめちゃな状況に。一郎はジャーナリスト魂を燃やし、ニュース配信しようと事態を動画に収める。

そんな中、包丁を持った一人の看護師がふらりとやってきて、なんの前触れもなく不二男の背中を刺した。アキラ達と大乱闘していたのに、突然名もない看護師に刺され、呆然としながら倒れる不二男。

「その、あんまりしゃべってなかったんで…最後くらい目立ちたいなと思って…」

か弱い声でそう言いながら、看護師は再び歩き出すと躊躇なく次はユタカを刺殺。

「だってかわいそうじゃないですか。こんな病気絶対治らないじゃないですか」

抑揚なく不気味に話しながら、更にユタカを滅多刺しにする。それを止めようとした最後の看護師も刺され、彼女は最後に自分の首を切って自殺した。

 

 

生き残ったアキラとメイ、そして一郎…。

一郎は撮影した動画を持ってこの事件をスクープし賞を獲るのだと、アキラの制止を振り切って病院を去っていく。死屍累々を見渡して愕然とするアキラ。登場人物はほとんど死んでしまった。こんな凄惨な状況にも関わらず、自分に欲情し、うっとりとした眼差しで見つめてくるメイにドン引きするアキラ。

「アホばっかりや!なんじゃこの台無し感…!」

自分はなんのために戦ったのかと呆れ返るアキラに、メイは、自分の病気は奇病ではなく伝染病で、大学病院でも沢山の人に移してきたのだと話す。だからどんどんこの病気は広まり、みんなが自分のようになっていずれモラルは崩壊、少子高齢化も解決するはずだと。 

「だからアキラさん!知らない町で子供いっぱい作ろ!テヘペロ♡」

キチガイ!!!」

恐ろしくなったアキラは、慌ててメイを置いてその場から逃げ出そうとする。彼女もまた、マニアック側の人間だったのだ。

「待ってアキラさん!!」

「待つか変態!!!一人になってもなぁ…世界の果てまで逃げたるんじゃ!!!!」

こうしてアキラは一人、八猪病院を抜け出した。

 

舞台上には、ギターをかき鳴らすアキラの姿。その後ろには男性器をかたどった金色の巨大なオブジェに乗ったメイと、周りで盛り上がるアキラ以外の登場人物達が現れ、歌と共に、祭りのような賑わいの中で幕が下りていく。

 

 (閉幕)

 

 

 

 

 

感想

・全体的な感想

初見での感想は「マニアックめっちゃマニアックだった」でした。Twitterでもそう呟いたし、カテコが終わってピロティホールの階段を下りていく中で、至る所から「マニアックだ、マニアックだ」と聞こえてきました。

やはり終わり方が終わり方なので……だって、金色のチン…像が登場してみんなが笑顔で歌い踊る前で自担が超かっこよくギターを弾いてる、というカオス情景でしたから、正直結構面食らったんですが、でも、結論としては大変楽しかったです。どちらかと言うと、二度目三度目の方が楽しめたかなぁ。本当に突拍子も無いことが起きるので…初見で展開がわからずハラハラして見るより、落ち着いて音楽や振付をじっくり楽しめたので、より満足感があったんだと思います。この内容で「音楽劇」なのがやっぱり肝ですよねぇ。歌が要所要所であり、俺節と言うよりはジレッタに近いです。

 

好き嫌い分かれますよね、マニアック。治安が悪い(笑)清々しいくらいに不謹慎ですから、苦手な人はとことん苦手だと思うし、その苦手感は「安田くんかっこいい」の気持ちだけじゃ清算できないくらい、がっつり拒否反応を起こす方もいる気がします。もうそれは仕方ない。クライマックスでは窒素くらい軽〜く人死ぬし、古田さん演じる不二男のマッドサイエンティストっぷりもえげつない。太摩呂さんは血だらけで人の内臓食べてて怖いし、俳優さん達の廃人の演技が上手すぎて本当に怖い。目がヤバイ。道歩いてて正面から歩いてきたら爆速で逃げると思う。なんだか、触れてはいけないような怖さがあるんです。

私みたいにエイトが出演する舞台しか見てない演劇素人タイプであれば、なおさらダブーを感じてしまって少し不安になる。「これ面白いと思っちゃっていいのかな?」みたいな。「自担が主演してるから良かったと思ったのかもしれない。安田くんを切り離したらどう感じたんだろう…」みたいな。結果的に「深く考えたら負けだな」って、どうでもよくなるんですが。

マニアックの「これ大丈夫なの?見ていいの?感」は、波はあれど最初から最後まで舞台上に漂っている感じでした。なので、しょっちゅうハラハラしました。例えば「性犯罪者は治らない」とか「ブロークンブレイン」とか、普通口にしにくいような不謹慎で過激なことを、あの堀内敬子さんが美しくかわいい声で歌って踊っているわけですし、安田くんの台詞に「脳みそパンクしそうや!」みたいな縁起でもないものもあって、オチはとりあえず笑っとくしかないようなド下ネタ。雑誌インタビューで安田くんと古田さんも言ってたけど、これは本当に、中学生くらいの子供と親で見に行っちゃいけないやつだ…と思いました。帰り道絶対気まずいよ。「ヤスかっこよかったね…」しか言えないよ!w

 

でもこういうのって、やっぱり舞台ならではだなと思いました。

仮に、マニアックが歌も踊りもない映像作品だったらグロテスクすぎてホラーが苦手な私は見れないと思うけど、インモラルな内容をとってもポップにラッピングしてお届けする感じが、結構癖になりました。なにしろ役者さんが最高だし、曲もダンスも素晴らしく楽しい。無駄にクオリティが高いので、展開がカオスでも突き抜けるパワーで押し通される感があり、悪い気がしない。形にするとショッキングピンクの毒キノコみたいな、スワロフスキーいっぱい付いた骸骨みたいな、かわいらしさと怖さが同居しているような感覚。私はマニアック側の人間じゃないから、そっちに行ったら死ぬってわかってる場所になんて絶対に行かないけど、でも、ちょっと覗いて見るくらいならいいかな…どうかな…って。

舞台には色々なマニアックが氾濫していたと思います。人体実験をするマニアック。性犯罪を犯すマニアック。人を信じ込むマニアック。性的興奮のマニアック。復讐計画を企てるマニアック。人を食べるマニアック。人を殺すマニアック。どんな状況でも自分を貫くマニアック。

マニアックとは一体なんだろう?でもマニアックって、実はどこにでも転がっている気がします。それは誰かのマニアックかもしれないし、自分のマニアックかもしれない。自分が異常だと思うことは、相手の正常かもしれない。その反対もそう。この舞台が伝えたいことは、「人道に反する行いは絶対に駄目だ」ってことじゃなくて、マニアックは、マニアックであることとそうでないことの背中合わせの一線違いであって(引用:わたし鏡)、見てみないふりをしているだけで誰しも秘めているものだという、警鐘にも似たメッセージなのかと思いました……なーんて考えてみたけど、別に伝えたいことなんて何もないのかもしれません。1gだって涙出ませんでした。あ〜楽しかったな〜。

こういう感想を抱く作品の主演が自担だということに、改めて驚きます。

 

 

・セットと音楽と振付

舞台上は灰色ベースのシンプルなセットで、基本的には病院内が舞台。建物が老朽化している設定なので、少しホラー感漂う雰囲気です。場面転換は全体的にとてもわかりやすく、大変見やすかったです。ピロティホールで言えば、一番右端の席(サイド指定席)に座った日がありましたが、ストレスなく観れました。

客席から見て舞台左上の奥には、劇中の音楽と生演奏を担当するバンド・浅草ジンタさんがスタンバイ。セットに組み込まれているイメージです。演奏担当なので、カテコでは降りてくるまでほとんど姿は見えないんですが、オープニング曲の「マニアック」では、チンドン屋のごとく優雅に演奏しながら少し現れたりもして…とにかく浅草ジンタさんがとても素敵だった。生演奏贅沢すぎます。個人的には、サックスの音が特にかっこいいなぁと思ったり。

物語は現代の話で、OKグーグル!も出てくるし、振り付けにDA PUMPの「U.S.A」が入っていたり、金爆さんの「女々しくて」の替え歌がちょっと出てきたり。理解には苦しむかもしれないけど、物語そのものの難解さはないと思いました。簡単に言ってしまえば、超ヤバイ人間が起こした超ヤバイ事件に普通の人が巻き込まれて死にかける…ってことだけですし。

安田くんが演じるアキラくんは植木屋さんなので、劇中ではほとんど作業着だけど、あの作業着も良かった。デニムのブルーと白のストライプで、インナーがオレンジやカラフルなのを選んでいるのが大変似合っていました、ちょっとダボっとしていて。眼鏡もいい感じにマッチしてた。成海璃子ちゃん演じるメイのお洋服もかわいかったです。グレースコンチネンタルにありそうな、花柄刺繍のワンピースだったり。ちなみに、メイがヒールを履いているせいか、並ぶとアキラの方がちょっと小さくてそこもまたかわいいポイントでした。

 

劇中歌は全部で12曲!どれも粒ぞろいで大好きです。色んなテイストの曲があるって、やっぱりお得感もあるし楽しいんですよね。中には歌詞が酷いやつもあるけど…(笑)でも恐ろしく耳に残るので、観劇後から毎日私の脳内を代わる代わる支配しています。気が付くと、「太摩呂さんはゾンビじゃなぁ〜い」とか「マーニマニマニマニアック」とか「あれは十年前〜」とか歌ってしまってるんですよ、怖い怖い。「お腹が空いていただけなの〜〜〜」…怖い…歌ってしまう…。一番最初のオープニング曲・マニアックのイントロは、場面転換で流れることも相まって、隙あらば頭に浮かんで消えません。昭和っぽさもあり、鬱蒼とした行進曲みたいなあのメロディがぐるぐるする…あまりにもサントラが欲しい。あまりにもサントラが欲しい!

歌う人の心境を代弁するものもあれば、過去回想や状況説明のものもあって、全体を通して歌っているけど物語を語っているような感じです。途中で掛け合いが入ったりもしますし。安田くんがメインで歌う曲は5曲。どれも捨てがたく好きすぎる。メイへの想いを歌うラブソングが多いですが、それぞれ違ってそれぞれ素晴らしいです。みんな違ってみんな良いやつ!!歌が上手い OF 上手いです。ギターもアコギとエレキ両方聞けちゃうし、本当にありがとうございます。安田くんの歌唱とダンスについては、また後で気が済むまで書きます。

 

振り付けは、エイト担にはお馴染み振付稼業air:manさんということで、抜群の安定感がありました。キャッチーで記憶に残るし、グロテスクで毒々しい、でもつい見たくなるマニアックの世界観にぴったりだと思いました。

色々面白いところがありましたが、まずオープニングのダンスからすごく癖になる。前に進んできては下がって、またゆっくり歩いてくる…すごく不気味。すごく不気味!!他にも、一幕で堀内敬子さん演じる看護婦長・甘木さんが患者を従えてミュージカル風に歌う「ゾンビじゃない」も脳内ビジョンで繰り返し見ています。二幕でメイが歌うソロ曲のサビ、「バーイバーイ!独裁者!」の部分の振付も大好きです。二本指でカトちゃんぺするところ、ヒトラーのヒゲなのかな?途中で周りのダンサーをドカドカ足蹴にするのもいいよね…。

舞台上では、やれ人体実験やれ性犯罪やれ銃殺刺殺と陰惨なことばかり起きまくる話ですが、歌って踊ることによって、ブラックな空気も途端楽しくなってしまうから不思議。やっぱり、素敵な振付は曲を更に魅力的に印象的にするものですね。曲と振付がセットになって記憶に染み着くので、見たものがすんなりと頭の中に浮かびます。

音楽と振付、生演奏と演出を通して、マニアックが「音楽劇『マニアック』」である必然性を感じました。

 

 

・古田さんの本気がやばい

俳優さんについて思ったことは山程あったんですが、まずはこれです。古田さんがすごいんですよねぇホント。

古田さん演じる不二男はマジキチ☆マッドサイエンティストですが、本当にやってそう感が漂いまくってました。普通に怖い。目が笑ってないんだもん…。ええ、ちょっと、舞台降りて家帰ったら、地下シェルターとかで本当に人体実験やってんじゃないの???って思えてくる。

娘を溺愛するお茶目な部分もあるし、ギャグを言ってふざけて笑いをかっさらう場面も沢山あるんですけど、だからこそ、怖い時とのコントラストが濃い。ケラケラ笑いながら面白いなぁ〜と思ってたら、いきなり氷点下まで冷え込むみたいに怖いんですよ。不二男が銃口を向けた途端、ものすごい緊張感が走る。薄っすら笑ってる古田さんに拳銃向けられたら、ふざけてるのか本気なのかわからなくて、もはや客席にいても怖い。関わりたくない、見つかりたくない…ってなった。

何か考えているように見えて、何も考えてない。深いようにみせかけて、まるで浅い。タネも仕掛けもないものが、怪しいものに見える。見えない余白を感じさせる空気感って言うのかなぁ…。マニアックが中身のない話のようでぎゅうぎゅうに詰まった作品に感じたの、古田さんの力も大きい気がします。支配人の本気を浴びて、めちゃくちゃシビれました。

 

 

堀内敬子さんの助演女優賞総ナメ感

舞台で見られるなんて!と楽しみにしていた堀内敬子さん。お声がとってもキュートで美しいし、ドラマで泣かされたこともあるので、とりあえずはちゃめちゃやってらっしゃることにびっくりしました。「この舞台出ていいの?そんなこと言って大丈夫?」感は、安田くんよりも、成海璃子ちゃんよりも、ずっと強かったと個人的には思いました。テレビや映画で拝見するイメージしかなかったので。

でも、本当に素晴らしかった〜!歌声もさることながら、何を言っても何をしててもチャーミング。えげつないこと言ってても、ミルクたっぷりまろやか仕立てに仕上がる不思議。鉈持ってても、お料理教室くらい治安良く見える可愛らしさ。子供の頃のメイの真似をするカラカラとした声色から、突然トーンが落ちる威圧感まで、魅力グラデーションに終始うっとりしました。「ゾンビじゃない」の序盤、好きすぎて延々と見れそう。

甘木さん役かなりカロリー高いだろうなぁと思いつつも、とても記憶に残るキャラクターで大好きです。そういえば堀内さんおいくつなんだろう?37歳くらいかな〜?と思ったらwikiに47歳って書いてて今めっちゃ二度見しました。美。

 

 

・違和感ゼロでめちゃ強い布陣

先に書いたお二人然り、キャストがめっちゃ強い。この手のふざけた展開って、一瞬でも我に帰ったら自分の中で多少シラけると思うんですが、一人残らずHPが高いので現実世界に連れ戻されません。みんな似合ってた〜似合いすぎてた〜〜

何度も書きましたが、患者役のみなさんがリアルに怖い。中盤、前の方や客席に降りてきてパフォーマンスする場面もあるけど、ひやひやして近くにいても目合わせられなかった…。目の下が浅黒くて、どこ見てるのかわからなくて、ゾンビみたいな感じなのに、話の中では「この人たちゾンビじゃなくて改造された人間なんだよね」と思うと、物語そのものに対する恐怖心が煽られました。拘束されて薬漬けにされて実験台にされて、えぐいなぁ…と思ってたらすぐポップ風でハッピー風になるから、まさにジェットコースターみたいな舞台でした。

アキラの相方・ユタカ役の小松さんの、しっくりくる適役感が心地よかったです。良き先輩だけど飾らない素朴さがあって、アキラとのコンビネーションにはずっとほんわかしました。主人公のアキラと、アキラとずっと一緒にいるユタカが、とにかく普通。それゆえ、マニアックのマニアックたる影の部分が浮き彫りになるのではないかと思います。パンフレットのキャストインタビューで、小神田役の山本さんが「(小松さんは)何をしても下品にならない魅力」っておっしゃってたんですが、本当にそれ!ユタカめっちゃいい人なのに、変な病気うつされるわ刺されるわで可哀想だったよ…。

黒い十人の女」や「昭和元禄落語心中」を見ていて成海璃子ちゃんも好きだったので、ヒロイン役も嬉しかったー!果たしてヒロインと呼べるのかどうか…(笑)元々、成海璃子ちゃんには良い意味で清純派のイメージを持ってなかったので、最後のヒドい台詞を聞いて「この上なく適役すぎる」と思いました。ホント「きれいな顔して何言ってんだwww」状態で。綺麗で、小さすぎず華奢すぎず、意思の強い感じが滲み出ていてとても素敵でした。綺麗な女優さんにただ「チンポが吸いたくなるの!」って大声で言わせればギャップで面白いっていう単純な攻撃じゃなくて、成海璃子ちゃんだからこそ余白が想像できるというか、何倍も効くパンチになったような。デビューの時は確かに清純派寄りだったかもしれないけど、成人してるから別にいいのに喫煙やら何やら言われて、昔やっていたような役では見かけなくなったけど、振り幅のある役を沢山演じている今の方が魅力的で好きです。最後、チン…像に乗ってる時のうっとりとした乙女の表情が超かわいかった〜。

浅野和之さんは色んな映像作品で見ていたから、染み渡るような安心感があって、なのに途中誰よりも動いてて大爆笑させられました。せかせか動いてる浅野さんを見て、舞台上で思わず笑っちゃう安田くんと小松さんコンビがかわいかった^^再婚した奥さん役の頼経さんとの掛け合いも夫婦漫才チックで楽しかったです。しずちゃんの癖の強い喋り方も物語の中でとても活きていたし、漆原役の宮崎さんとのコンビも楽しかった。宮崎さんは初めてお見かけしたんですが、漆原のなんとも言えない舎弟感素敵でした。「リ………ホテル」ってハンドサインやってる時のお顔がとってもかわいかったです。一人で何役もやってらした山本さんの変化しない七変化もずーっと面白かった。小神田さん妹何人いるんだ…ホテルのカウンターのくだりすごくツボでしたww

あとは、あの最後に不二男を刺した看護師さんがめっちゃ怖かったな。一番サイコパス感出てました。わざと棒読み風の話し方をするので最初はみんな笑うんだけど、ユタカ刺し殺したあたりから怖くなってきて、客席シーンとしたよね…。

 

 

・安田くんにマジで恋する二時間半

沢山振り返ったので、最後に安田くんのことを書きたいと思います。

古田さん、青木さん、この舞台に安田くんをキャスティングしてくださってありがとうございます…。本当になかなか出会えないタイプのインモラルな作品だと思うので、自分の大好きな人がまた一つ新しい扉を開けた瞬間に立ち会えて素直に嬉しいです。そう思うのは前提として私がマニアックという作品にハマれたからではあるけれど、安田くんが出る舞台は毎回バリエーションに富んでいるので、やっぱり色々な景色を見せてもらえるのは楽しいです。今回はちょっとヤバイ箱開けちゃったねってことで。

安田くんは何でもできる。どんな場面でも戦える。どんな色でも馴染む。近年の安田くんはそういうことをもう言われたくないのかもしれないけど、私はやっぱり「安田くんは何でもできる」と言いたいです。カンパニーも先輩方ばかりだし、体のこと含め緊張感や不安が変わらずあったのではないかと思いますが、舞台上にあったのは、あまりにも堂々と楽しむ座長の姿で、全私が「余計な心配をしてすみませんでした!!!つべこべ言ってないで黙ってあなたの才能を浴びます!!!」と降伏しました。安田くんはすごい。強い。プロ OF プロ。千秋楽までに古田さんにも感謝のお手紙を書きたいです。

 

全体感想で書いた通り、マニアックの物語自体は1gも涙出ないんですが(笑)やっぱり私は安田担で安田くんが見たくて劇場に行く側面が強いので、久しぶりの小規模会場近距離安田くんを目の当たりにして、「うわあああ〜〜〜〜〜安田くんが動いてる〜〜〜〜〜踊ってるしゃがんでる転んでる回ってる〜〜〜〜うわああああ〜〜〜〜」となり、初日はそれでばしゃばしゃ泣きました。治ってる!回復してる!もう感動が突き抜けるクララが立った状態です。本当によかった。勿論、オタクとしてはずっと心配なんですが、舞台に立てるまでに回復している事実に、序盤アキラが蜂を避けて転んだ瞬間からありがたさクライマックスでした。

そして、どうしたって好きすぎるんですよ…安田くんの、安田くんによる、安田くんだけの表現が…。歌、ダンス、役になる力。全部最高〜〜〜〜シャンパンを開けたい〜〜!ビールかけしたい〜〜!!神輿を担ぎたい〜〜〜〜〜!!!あとアキラが関西弁だとは思ってなかったので、関西弁にしてくれてありがとう青木さん〜〜〜〜〜〜!!!!

 

まず、アキラがメインで歌って踊る5つの楽曲。全部スルメ。最初からおいしいのわかってたけど食べたらやっぱりおいしくて、且つずっとおいしいしどんどんおいしくなるタイプの進化系スルメです。

最初の曲「Comeback to me!」はポップで楽しくてかわいい。掛け合いも多いので、一番ミュージカル感(当社比のイメージによる)があります。離婚した奥さんの話を説明してくれる歌なんですが、もう安田くんが「ソーシャルゲームはアリ地獄」って歌ってるだけで既に面白い。「ガチャやれガチャやれ」の動きがソーキュートだし、「最初ははした金でも〜」の語尾の伸びが素晴らしい…早々に心の中の歌うまいボタン連打しました。振付もがっつりしゃがんで跳ねてなので、前述したように泣きながら、「ああ、私この舞台安心して見ていいんだね?大丈夫なんだね??痛くないんだよね?しっかり見るね…」となりました。

次に、メイに一目惚れした時歌う「恋に走ろう」。これは踊らない代わりにアコギ付き!やったー!!仁王立ちでしっかり舞台上手に立って、太い声でまっすぐアキラの心境を歌う姿に胸キュン(古い)でした。古田さんはこの曲が好きだと対談でおっしゃっていたはず。全体的にテンポ早めで疾走感があるので、ときめいている内にあっと言う間に終わってしまう。最後のこぶしもたまりません。

 

私が一番好きな「Rescue her」はあと三千万回くらい見たいと思っています。安田くんのジャニーズ的魅力を存分に詰め込んだ一曲。曲調はムーディーな昭和歌謡で、スナックで呑んでいる時にメイのことを思って、突然出てきたコーラス隊と共に赤いジャケットを颯爽と羽織って歌い出します。ジャケットの羽織方からしてもう2億点です。……バサッ!って。

いやもう、なんだろう、好きしかないんですよね。「Street Blues」みたいな優しくて色っぽい歌い方で。サビの歌詞で繰り返しになる「I'll rescue her」の「her」の部分の、やわらか〜くそっと置くような丁寧さ!そして何より振付が…!シンプルな動きなんですけど、足の運び方、手の伸ばし方、体の傾け方、リズムのとり方、極め付けの美しいターン…、シンプルな動きにこそ際立つ安田イズムが迸っていて泣く。指の先まで丁寧に伸びたその距離を図ってギネスに認定したい。安田くんのダンスにおける限りなくコントロールされた自由を国宝にして称えたい。丸ちゃんとの「The Light」の間奏で、安田くんがしゃがんでいるダンサーさんの頭上で手のひらをすっと持ち上げる振りあるじゃないですか。それに似た手の振りがあるんですが、素晴らしく美しい。何もない、空気しかないはずなのに、手のひらに何かある。もう、安田くんが上手いとかすごいとかって言うより(上手いしすごいんだけど)、自分の好きどストライクなんですよね。好み。本当に好み!だからこそ安田担やってるんですけど、やっぱり安田くんのダンスを見て最高だと噛みしめる満足感って安田くんからでしか得られないから、改めて感動しました。歌い終わって履ける時のおじぎ、プライスレス。

 

メイがアキラについて行くことを決めた後の曲、アコギ演奏での「花」は、かわいいからとりあえずへらへらしちゃいます。突然打ち込まれる平和…。アキラが手を差し出してメイがそこに手を重ねるってくだり、何回やるんだっていう(笑)少し前まで殺伐としていたのにいきなりハッピーな空気になるし、劇場全体がほっこり和みます。伸び伸びした安田くんの聞き親しんだ歌声と、明るいメロディーで、見ていて思わず頭を横に振ってしまいそうになる。途中から成海璃子ちゃんも歌に加わって、「らららら〜らららら〜」と軽やかなステップを踏み始めるので、もう話このまま終わろうや…って気持ちに一瞬なる。ほっと一息つける場面だなと思います。途中、瞬間曲が止まってから手をとるところや、最後去って行く時の二人の笑顔にもときめく…。この曲の前に、アキラがメイに言う台詞、「あんたが、俺についてきてくれるなら」があるんですが、最高です。

アキラが病院から逃げた後、ラストのラストで歌う「出口」。これがマニアックのエンディング曲ですよね、多分。カオスだから他にくらべてあんまり強くは覚えていないけど、とりあえずワイワイお祭り感があるのと、ギターをノリノリでかき鳴らす姿にひたすらテンションがあがりました。「一人でも生きてやる!」って言葉が反響する、明るいロックナンバーってイメージです。結構ギター弾きながら反ってたりもするし、足でばしばしリズムも取ってたと思うんですが、終幕を見ている段階では心配も吹っ飛んでいたので、楽しく見られました。音に乗っかる安田くんの生き生きとした姿…よきかなよきかな…。最後、一瞬でパッ!と暗転する終わり方もよかったです。

何度か見る内に、この「出口」の洒落たところというか、「出口」で終わる意味合いを強く感じました。残念ながらパンフレットには歌詞が載っていないけれど、最初の「マニアック」と対になっているんですよね、きっと。アキラ視点からはマニアックでキチガイに見える人々だらけですけど、反対から見れば、マニアックでキチガイなのはアキラの方かもしれない。これってものを見つけて、他人に左右されることなく気が狂うほどその対象に熱狂していることは果たして頭がおかしいのか素晴らしいことなのか…。「マニアック」も「出口」も歌っている内容は、一度きりの人生好きにやれってことだと思うので、観劇の回を重ねる度、ぐっとくるものがありました。やっぱり、アキラを演じた安田くんがそう歌っていることも説得力がすごくあるから。

 

物語の中でのアキラは、最初から最後まで生き残り、且つ常識人という唯一の役柄。おかしな人ばかり出てきて、なんだか怖いし、不安になる中で、真っ当なことを主張し続けるアキラくん。正義感が強く、優しく、メイやみんなを助けようとしてくれるアキラくん。真っ暗闇の中の愛、光、希望状態。それを既にバチバチにかっこいい安田くんが演じるわけですから、憎いキャスティングですよね。加えて歌に踊りに演奏もある。そんなの素敵に見えるに決まってるじゃん!!って言う。だから話のテイストはアレだけど、安田担の自分にとってはめちゃくちゃご褒美舞台なんですよね、マニアック。

実際、過去安田くんがやってきた舞台みたいに観劇後にメンタル削られる感じはまったくなくて、単に「あ〜あ、おもしろかった!しょうもな!安田くん最高だな〜!」で、心の中は満ちています。

不二男の企みがわかってからは怒りで口が悪くなるアキラくんですが、それもまた良いよね…オタクだからさ…自担の口悪い台詞って盛り上がっちゃうので…。「〜じゃ!!!」っていう言い回しが…「脳みそ腐っとるから人が食えるんじゃ!!!」、「一人になっても逃げたるんじゃ!!!」とかね…渾身の「アホか!!!」もよかったですね。

何度舞台を見ても、カーテンコールで自担がカンパニーの真ん中に立つ姿は胸を打たれるものがります。最初は明るく気さくな兄ちゃんって感じで、そこから事件に巻き込まれて真相を知り、怒り、立ち向かい、最後は呆れ返るまでの機微を、めちゃくちゃでキャラの濃い登場人物の中で埋もれることなく、しっかり主人公していました。好きしか無くて、どうしたってマイナス要素が出てこないや…。

 

 

・おわりに

全然想像つかないんだけど、どんな感じなんだろう…とそわそわしていた「マニアック」。個人的には、良くも悪くも気負うことなく見られる自由な舞台だと総括します。面白かった人は当たりくじ、苦手だった人はちょっとした事故。大人だってプロだって、こんなふうに遊ぶときもあるよね!!っていう。きっと見に来てくれるであろうメンバーの感想が楽しみだな…どこかに書いてくれたら嬉しいな…。

先日、業界に詳しい友人伝いで「古田さんは滅多に役者を褒めない」というのを聞いたんですが、 その古田さんがしっかりと褒めてくれて、一目置いてくれているということに素直に喜んでいます。雑誌もあれこれ読んだけど、一緒にやりたいと思ってキャスティングされたことがファンとしても本当に嬉しいです。パンフレットの古田さんと安田くんの対談ページに「俺節」の写真も載っているくらい、古田さんはコージを気に入ってくださっていて、安田くんが手術後という大きな爆弾を抱えて挑んだ「俺節」が、あの時見た魂が震える瞬間みたいな言葉にならないものが、また一つ、大人を巻き込んだ作品に繋がっていることに改めて感動しました。

安田くんの「繋げる力」は本当にすごいんだ……ペイ・フォワードなんだ!!!!!

 

さて、こんなところまでスクロールしてくださってありがとうございました。色々あった2018年を自分なりに乗り越えて味わった「マニアック」、楽しかったです。ありがたくもまだ観劇する予定があるので、もっともっと楽しめるように、心の準備をしたいと思います。

安田くんに対する私のマニアックも、結局まだまだ治りそうもありません。アキラくんが、千秋楽まで無事に駆け抜けて逃げられますように!