ジャニオタ八十三番地

長く咲く花を見つめています

わたしが見た『俺節』

 

この記事には、舞台『俺節』の内容(怒涛のネタバレ)と、観劇しての感想を好きなだけ詰めこんでいます。

 

なるべく細かい部分まで覚えている内に残しておきたいと書き始めて、どのシーンも好きなのではしょれないでいたらめちゃめちゃ長くなってまった…。キャパも大きかったのでありがたいことに沢山観劇できましたが、もちろん全部覚えているわけじゃないので、台詞などニュアンス的なところも多々あり、たまに日本語も支離滅裂ですが、まあ個人の備忘録ということで大目に見てやって下さい。どちらかと言うと赤坂ACTシアター基準です。

 

 

 

▼公演は終わってますが、以下ネタバレです

 

 

 

 

吹雪の中、借金の取り立て屋が老婆と喋っている。老婆はすっかり腰が曲がっていて、頭に被った頭巾で顔はしっかり見えない。取り立て屋は受け取った札を数えながら、「一人で孫育ててるばあさんのところに取り立てに来んの、気分わりぃんだよ」なんて言いながらも少し気にかけている様子かな?老婆の孫は、なんでも〝人の目もまともに見て喋れないような男〟らしい。

取り立て屋と別れた老婆が向かった先は駅。吹雪は紗幕への映像投影で表現されていて、途中で紗幕が上がると駅が現れる。鯵ヶ沢駅。田舎町の駅のベンチでは、物語の主人公・コージが電車を待っている。コージは老婆の姿を見るなり立ち上がって、

「ばっちゃん…?!」

来てくれると思ってなかったのかびっくりしている。コージは、育ててくれたばっちゃんを故郷の津軽に残して一人で上京するところ。

 

「ばっちゃん…堪忍な…」

「東京は謝りながら行くところでねえ」

 

コージはおそらく育ちも貧しくて、見送りに来てくれる友達もいない。ばっちゃんは、ふるさと(津軽鯵ヶ沢)を離れるコージに「ばばは流行りがわがんねえからそれでいいべ。それさえ着てれば、いっちょまえの都会の人間だ。なんも恥ずかしいことはねえんだ…」と、借金だってあるのに立派な〝背広〟をくれる。そしてコージをそっと抱きしめようとするけど、やっぱりやめて煙草に火をつける。ばっちゃんツンデレ…( ⊃_⊂)

それからばっちゃんはコージに、東京へ行って何をするのかと聞く。すると「もう負けたくねえ…笑われんのもこりごりだ…」と、じっとつぶやくコージ。駅に電車がくる音。

「でも、おらんだって武器あるって気づいたべ……。世の中、とっくり返してやれるもの!!」

 

コージの力強い台詞の後、時代劇のオープニングのごとく渋くてカッコイイ音楽。それと共にプロジェクションマッピングによる【俺節】のタイトルと忙しい都会の景色が流れる。

舞台は一気に東京へ!

 

 

時は1990年(平成2年)、四月。

ばっちゃんとふるさとへの思いを背広に背負って、夢の歌手デビューを目指すコージは、上京早々、大ファンである演歌界の大御所・北野波平に弟子入りするため北野プロダクションを訪ねる。が、事務所のスタッフたちにまるで相手にしてもらえず、かれこれ4時間くらい土下座をしていた。それだけでもう、コージがちょっと普通じゃない青年なのがわかる…真面目とかいうレベルではないぞ…とにかくまっすぐ。

そこへ突然!そんなコージをこれまた4時間くらい見守っていたという男・オキナワがアコギを掻き鳴らしながら登場する。オキナワは、以前北野プロで作曲家として働こうとしていたものの、財布泥棒をやらかしてクビになった問題児だった。二人はそれぞれ、北野の側近である大橋「先生は弟子とってないんだよ」「二度と先生の前に顔出すなと言った」と切り捨てられるも、しつこく食い下がる。コージにいたっては、人殺し以外なんでもやるからと土下座するほど。

その内お調子者のオキナワに乗せられて、北野波平と北野プロの面々は、弟子にとるかどうか、試しにコージの歌を聞いてみることになった。意気揚々と背負っていたギターを構えるオキナワ。

「おい『なみだ船』でいいな?一発かまして、とっとと弟子になっちまおうぜ!」

「…へば!」

 

♪なみだ船/北島三郎

なみだ船 - 北島三郎 - 歌詞 : 歌ネット

ここがコージの初歌唱。(初日は「ああ!歌くる!」と思ってめっちゃドキドキした…><)いざ歌い始めると、その歌声にスタッフたちは少しざわめく…のに、10秒くらいで続きを歌えなくなって、コージはオキナワのギターを止めてしまう。

「みんな見てるからちょっとぉ…。人前で歌うのめぐせくて…」

「めぐせえって何だ!?」

 

説明しよう!「めぐせえ」とは「恥ずかしい」の津軽弁で、コージはなんと極度のあがり症がゆえに人前ではまともに歌を歌えないのだ!!(なのに歌手を目指している)

 

結局、北野プロに笑い者にされてしまったコージ。「もう来んなよ」と大橋に貼っつけたような笑顔で吐き捨てられて(^▽^)←こういう顔、「いっつもこうなんだ…」と一人で打ちひしがれる。せっかく歌の才能があるのに、笑われんのもこりごりだ…という上京時の台詞を思うと、これまでも散々笑われたりして悔しい思いをしてきたのだろうなぁ。

オキナワは、その場を切り替えようと凹んでいコージを飲みに誘う。しかし「じぇんこ(金)がねぇです」という返事。

「あぁ?!俺だってねぇんだぞ!」

「おまけに宿もねぇです…」

仕方なく、オキナワは上京したてほやほやのコージを〝俺の城〟へ連れていってやることに。そこはオキナワいわく、「東京でいっちばんいい場所だぜェ!」

 

 

♪みれん横丁のテーマ(舞台オリジナル曲)

オキナワに連れられて着いた場所は、見るからにさびれたみれん横丁。当たり屋ちゃん、夜逃げさん、放火魔くん、皇族のふりをした結婚詐欺師(通称・陛下)などなど…社会のはぐれ者たちの巣のような場所で、ちょっとした洗礼を受けつつ……例えば身ぐるみ剥がされそうになったり、犬肉と知らずにバーベキュー毒味させられたり、とりあえずオキナワの友達として、歓迎された? コージ。

そこへ他の住人が「外人の女が落ちてた〜!!!」と、ブロンドヘアの女性を担ぎながら大騒ぎで帰ってくる。ものめずらしさに一同が騒ぎまくっていると、奥から、ガシャーンと缶を蹴り倒してヤクザが三人登場…でっかい声(しかも高い)で「あーーーー!いたいた!」

 

外国人女性はテレサと言う名前で、いわゆるヤクザの商品だった。脱走してきた途中らしく、ヤクザたちに引っ張られて連れ戻されながら、十字架のネックレスを手に神に祈って泣いている。それがまためっちゃ悲痛な声…。住人たちがどうしようもなく見ている中で、テレサを助けようとして「よくわがんねえけど、その人連れていかれるのなんか嫌だなぁ…」と、ヤクザを引き止めてしまうコージ。反感を買った上、全然歯も立たず、止めに入ったオキナワ共々ボコボコに殴られてしまう。全然反撃できないし…。そしてヤクザの一人が去り際、コージに唾を吐きかけて、ばっちゃんがくれた大事な背広が汚れてしまう。

 

「待て!!……ばっちゃんの背広に謝れ!!」

 

ヤクザを引き止めて「謝れ!!」と連呼するコージ。その声はさっきまで「その人連れていかれるのなんか嫌だなぁ( ´ ▽ `; )」っていうのと全然違う、低くて凄みがあるものに変わっている。殴られても殴られても立ち上がって、この背広にばっちゃんと故郷(くに)しょってんだ!と口にするコージ。でも無慈悲なほどにさらにボコボコにされるつらい…あ〜そう!とかテキトー言わないで…もうやめてあげて…。ついにコージは、謝らないなら殺せ!!!!と叫び、角材で思いっきり頭殴られて満身創痍になる…それでも諦めないコージ。まだ立ち向かうのかと住人たちが心配そうに見つめる中、コージは不思議なことを口にする。

 

「おらの番だ…!次はおらが、おらの武器であんたらを殴るど」

 

そして息切れしながら、突然「凍てつく…ような……港で…ひとり…」と演歌を歌い始める。コージの武器は、歌だった。この場面、まさに歌で殴っているというか…それ通り越して刺し殺すぞくらいの気迫で、横丁(というか劇場全体)は息を呑むような空気でいっぱいに。オキナワがコージの歌に動かされて、途中からなんとかギターで伴奏を弾き始めると、どんどん盛り上がっていくコージの『港』。髪の毛からおでこから首筋から、もうものすごい汗。このあたりはちょうどWSでも沢山流れていた場面なんですが、上手く文字にできるはずもない…!

 

♪港/吉幾三

http://j-lyric.net/artist/a000457/l005c65.html

叫ぶみたいにサビを歌いきって、コージはそのままバタリと倒れた。ヤクザの親玉が追い打ちをかけようとする子分たちを制して、気を失っているコージに向かって、「2番まで歌われたら、謝っちまうところだったなァ…」と一言。「助けなきゃ…!」と慌てるテレサを怒鳴って連れて行き、ヤクザたちはみれん横丁を後にする。横丁の住人たちは手当をするためコージを奥へと運んでいく。オキナワは持っていたギターを握りしめて、何か確信したような顔をしてその後をついていった。

 

 

 

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◆感想言いたいタイム

※物語の内容だけ読みたい方は次の青線まで飛ばしてください

 

初日観劇時には、ここまでの展開で呆気にとられてだいぶ呆然としてました。それくらい『港』にはパンチ力があった…。『港』の歌唱シーンは、みんなが初めてコージの歌に殴られる場面。みんなと言うのは、オキナワや横丁の住人たちもそうだし、ヤクザもだし、テレサも。それから我々観客も。あのシーン、ヤクザと喧嘩になってボコボコにされた挙句急に歌を歌い出すなんて、殴られすぎて頭おかしくなったような不自然な行動なのに、話の整合性がどうこうとか、有無を言わせない説得力がコージの歌にあるので、気付いたら既に歌に巻き込まれてるんですよね。原作にも同じようなシーンがありますが(しかも手を刺されるからもっと痛そう><)、そこもコージが歌い出すことに「何?!」と思いつつ息をのんでしまう感じがあって。線の書き込みがすごくって。

 

この『港』は最初アカペラですが、歌い出し前の「スーーー」っていう効果音とか(キー確認用なのかな?)言わば集中線みたいだし、殴られても血こそ滲んでないけど、息遣いや声色はどんどん傷を負っていて、なんというか…漫画での絵の効果を反映しているという意味でも二次元が立派に三次元化してると思います。意外と三次元化することに相性が良い作品だったのではと思う反面、そもそもこの設定で原作が二次元であることがすごいんじゃないかとも。どうしたって誌面から音は鳴らないのに、その熱量を画で描ききるってとてつもない。原画展すごかったなぁ。トーン数種類しか使われてないんじゃないのかな?

 

舞台『俺節』、とりあえずまずセットがすごいんですが、特にみれん横丁のクオリティはびびりました。ここでも、原作の横丁がそのまま三次元になったの???スナックやら喫茶店やらの看板の再現率の高さ!もう原作愛ですよね〜〜福原さんの俺節への思いがめっちゃ伝わってくる。私が自分の好きな作品を他媒体で表現できるとしたら、できるできないではなくて、あそこまで随所をこだわりぬきたいですもん…。

そして、そのクオリティ高い舞台セットもあいまって、始まりから終わりまで通して思ったこととしては、場面や場所の転換にまるで違和感がないってことです!!みれん横丁に始まり、ストリップ小屋、楽屋、アパート、パン工場、北野波平の豪邸、拘置所、橋、野外コンサート会場、レッスン場などなど…本当にものすごく色んな場所が出てくるけど、それらの舞台装置が変わっていく時に、よく音楽や歌を歌っている人の存在があって、耳や目線の誘導がとても無理なくつくられているし、状況説明も自然です。

 

例えば、先に内容を書いた、オキナワがコージを初めてみれん横丁へ連れていくシーン。

東京の道端で、オキナワとコージが下手側にはけていくタイミングから『みれん横丁のテーマ』のイントロがはじまる

歌のAメロが始まると、住人たちが『みれん横丁のテーマ』を歌いながらゴミ袋やベンチや小道具を運んできて、同時に看板や他のメインセットも現れる

歌が終わる(オキナワとコージが到着する)と、完全に舞台上にみれん横丁が出来上がっている

その上『みれん横丁のテーマ』の歌詞そのもの、例えば最後の「いいも悪いもあきらめて苦笑いで飲もう」とかで、みれん横丁がどんな場所が既にある程度説明されている。すごくないですか?すごいです(自己完結)。舞台上のセットが移動しているところって、普通は暗転したりしてむやみには見せないと思うんですが(そういう暗転してるところも普通にありますが)、歌と歌詞とがあいまって、見せていることも見事な演出になってるという…!また、舞台全体を通して、歌が前後のシーンの心情や情景を表しているから=場面が変わるつなぎの役割を果たしていること・そのナチュラルなハイクオリティがめっちゃ好き。後で出てくる『鳳仙花』とか『逢いたくて逢いたくて』の、前シーンの代弁っぷり+次へのバトンっぷりなんかもすごい。公演時間も長くてあれだけ場面転換があるのに、物語からさめない理由のひとつがそれにあるんじゃないかなぁと思います。

 

時代が平成初期の1990年なので、もちろん街並みや衣装や小道具はその時代のテイスト。セットや場面の転換は、今言ったように人が運んでくる場合もあるし、もちろん暗転が明けて出来上がっている場合もあるんですが、プロジェクションマッピングもすごく上手くさりげなく使われていて素晴らしいと思いました。最新技術が…!

覗き魔さんのように双眼鏡ばかり覗いていると(俺節ギャグ)最初は気がつかないこともあったんですが、プロジェクションマッピングの主な使われ方でいうと、

・『新大久保』『1990年』『北野プロダクション』など、場所の説明

・記憶のフラッシュバック、景色が鮮やかになっていく様子、外の雨など、話を盛り上げる効果的なもの

・曲の歌詞

・家の中、街並みなど、場所の背景や外観

と、物理的なセットだけでは足りないものを上手く補完して、より話をわかりやすく盛り上げている感じです。プロジェクションマッピングったら…好き! (なほ先生)

 

そして忘れちゃいけないのが、コージくんの津軽弁誰に確認したらいいのかわからないけど、めっちゃ上手ですよね?すごくないですか?すごいです!春頃にコージくんの故郷を感じようと津軽旅行に行きましたが、そこで話した現地の方の話し方と同じだよ…。

舞台なので発音はとてもハキハキしてますが、音としてはハキハキしてるのにしどろもどろしてるのがすごい。安田くん何度も舞台主演こなしてきただけあってストレスなく声が耳に届くし、いいですよねぇ津軽弁。ほんわかする…!!っていうかコージくんが愛らしすぎるので…初登場シーンで、吹雪の中寒そうに電車を待っているコージくん…満を持して言いますがコージくんがめっちゃかわいいんだ。もう本当にかわいいんすよ…無理すぎるコージこんな…こんないきなりこんなかわいいのかって……ばっちゃん…ばっちゃん…うっ…かわいい……かわいいんすほんと…。駅でばっちゃんに背広をもらった後に、ばっちゃんにゆっくり抱きつこうとするんですが、その「ばっちゃん…♡」とか至極のかわいさで??!!!「だども」「なぁんね」「したばって」「へば」「〜べしゃ」「〜けろ」とかもう全部良い…。いきなり頭の悪い感想が出てきましたけど、かわいいから仕方ない。

コージの、不器用だけど頑固で、でも一生懸命で純粋で、自分の情けない部分を飾らない愛嬌あふれるキャラクターがそもそも最高です。そう愛嬌がすごくて。原作のコージくんも普段はめっちゃかわいらしい人なので、そこも見事な三次元化。自信なくてもじもじしてるとことかよく出てるなぁ。

 

だけど、ただ二次元の三次元化に成功しているだけじゃなくって!!!原作の世界観を壊さず倣いながらも、より進化した舞台作品に昇華している、福原さんの手腕と演者さん・スタッフさんたちの力がすごい。パンフレットで高田聖子さんのインタビューにもありましたが、原作をその通りになぞるだけじゃなくて、ご自身の言葉でこの俺節の脚本を書いている福原さんがスゴイということ、それってすごくエネルギーがいるし、作品への愛なんだなぁと感じられています。

ああ福原神(そう呼んでいます)……!!!福原神が安田くんにメロメロになる気持ちすごくわかります…私わかります…(CVテレサ

 

 

 

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↓続き

 

所変わって、ここはストリップ小屋。セクシー系下着姿の女性5人が、歌ったり踊ったりとショーをしている。途中から、そこにヤクザに連れ戻されたであろうテレサが合流。ブロンドヘアと白い肌にターコイズブルーのきわどい衣装で、テレサの美しさはとても目をひく。

 

カスバの女/エト邦枝

カスバの女 - エト邦枝 - 歌詞 : 歌ネット

ショーが終わって、6人の踊り子たちは楽屋でおしゃべりをしている。みんなのアネゴ的存在でブラジル出身のマリアン姉さん、その相方で気さくなブラジル出身・エドゥアルダさん、若くて元気な中国福建省出身のシャオ、ダミ声が超いい味を出してるフィリピン出身のアイリーン、唯一の日本人・橋本さん、そしてウクライナ出身のテレサ。彼女たちの楽屋は、ちゃぶ台と小さな冷蔵庫とラジオ、それぞれの荷物や衣装が置いてあるだけの質素な畳の部屋。そこにマネージャー(小屋主)と呼ばれる男がやってきて、踊り子たちに罵声を浴びせたり、スリッパ(ティッシュの箱だったり新聞紙だったりもする)で頭はたいたり、なんならキスしてから殴ったりと、もう絵に描いたようなゲスマネージャーっぷりを発揮する。テレサが脱走したことで怒っているにせよ、ゲスすぎてすがすがしい。すごい。そしてキャラが濃い。

踊り子仲間たちからもちょっと叱られてしまうテレサ。そりゃみんなにも迷惑がかかったもんね…とばっちりが…。

「パスポートとられてんのに逃げたって、どこへも行けないよ?」

「いっぱい稼いで国の家族助けるんでしょ?」

テレサは故郷の家族の生活のために、体を売る仕事をしているよう。「私はお金を稼ぐ人。家族はお金を使う人」って台詞がすごくかなしい。仲間達に改めて、膝をついてまで謝ろうとするテレサ

「この度の件につきましては!!!すべてわたくしの不徳の致すところでゴザイマス!!!!」(あのうるわしい見た目から出てるのほんと??ってなる野太い声で最初の爆笑ポイント)仲間達が、もういいよいいよ〜って笑って許してくれて、よし出前とろうってわいわいしてくれるのが救われる…これで踊り子たちが仲悪かったら救われないもの。

それから、みれん横丁でコージが歌っていた『港』のメロディをうろ覚えでハミングするテレサ

「いいメロディだね」

「この歌知ってますか?」

「曲名はわからないけど、多分演歌ってやつだね」

「演歌…」

「ええんか?」「ええのんか?」

『港』のサビがピアノで流れる中、暗転。 

 

 

それから場面はまた、みれん横丁へ。

あのヤクザ襲来からは多分数日経っていて、やることがないのか、矢沢永吉『アイ・ラブ・ユーOK』の替え歌を口ずさんでいるオキナワ。\アイ・ラブ・ユーOK…♪暇すぎるぜぇ〜♪/

働かないオキナワに対して、コージは歌手志望のはずが住人の紹介で土方仕事を始めていて、汗と泥と埃にまみれた横丁ライフにすっかり馴染んでいた。住人とも随分打ち解けているけど、それでも歌を歌うのはまだめぐせえ様子。この時点で、オキナワはコージとの歌手デビューを想像していた。ヤクザの一件で、コージの本物の歌にびびっときたのだと思う。

 

そこへギターを背負った一人の男が通りかかる。「大野の旦那〜!」と住人たちに大人気の大野は流しの歌い手で、通りかかっただけだとクールに言いつつも、「飯食って荷ひいてるだけじゃ動物と変わらない。俺たちを(歌で)人間にしてくれ!」という横丁の住人たちの切なる言葉に、結局は一曲歌をやってくれる。

 

♪暖簾/五木ひろし

五木ひろし 暖簾 歌詞

大野の歌はすぐに聞く人の心の中に入り込んで、まるで、自分だけのために歌ってくれているような気分にさせてくれる、そんな歌だった。コージはしみじみと感動しながらも、どさくさにまぎれて大野の財布をスっていたオキナワに強引に連れられて、飲みに出かけることに。

「たまには景気のいい店いくべ!」と、オキナワに連れてこられた先は、なんと《なにわ橋ロマン座》だった。そこは御察しの通り、テレサたちが働いている非合法感あふれるストリップ小屋。ショーのプログラムが終わると、その後にいわゆる売春タイムがもうけられていて、あのゲスいマネージャーの司会のもと、「60分○○円!」と、これまたゲスい客が踊り子を買うために金を競っていた。「見損なったぞオキナワ!」とプンスカして帰ろうとするコージ。が、ステージにテレサの姿が現れて、思わず足を止める。あの時の…!と言わんばかりの顔でテレサを見つめるコージ。テレサが、1万5千八百円で他の客に買われそうになった瞬間、コージはいてもたってもいられず、声を上げてしまう。

 

「1万6千円…!おらが、1万6千円払うべ…!」

 

その声に、店中の視線がコージに集まった。テレサも「あれっ…」という顔になる。思いもよらなかった再会!思えばヤクザの一件で、お互いが一目惚れしていたようなものだったのかもしれないなぁ。

先にテレサを競り落とした客はもちろん憤慨する。そこから、その客とコージの競りがヒートアップ。「1万八千!」「2万!」「2万五千!」……でもそんなにお金を持っていないとマネージャーにバレて、再びお買い上げら最初の客に決まりかける。そんな中、突然テレサがばっ!と手をあげて、

「私貸します!!!!」

その場の人間の頭に「???」が浮かびまくる…。もうコージに気持ちが向いているテレサは、「私(を買うための)お金貸します」とトンチキなことを口にしてしまった。その言葉に背中を押されて「五万!!!」と手をパーにして叫ぶコージ。でもテレサが客に金を貸すなんてマネージャーが許すはずもなく、結局は最初の客に買われて、奥へ連れてかれてしまう。それを追いかける諦めの悪いコージに客も困惑。(そらそうだ)

「なんなの!?君お金持ってないんでしょ!?」

「堪忍してけろ!歌で堪忍してけろ…!5万円分歌うから!!

コージは店のボーイにつまみ出されそうになるものの、テレサを買った客がそれを止める。

「いーよ!俺聞いてみたいもん!5万円分のうたぁあ…?歌ってみろよ青年!」

「……オキナワ!『北国の春』!」

スイッチが入ってしまって、もうやったる気満々になったコージ。「知らねえからな!!(><)」と言いつつ、ギターちゃんと弾いてくれるオキナワは本当にやさしい人だな…(※オキナワは出かけてても大体ギターと一緒)

 

北国の春千昌夫

http://j-lyric.net/artist/a000686/l00142c.html

「白樺〜青空〜南風〜♪」

この『北国の春』は、コージとテレサにとっても、物語にとっても大事な鍵になる曲なんですけど、でもやっぱりここでもコージは歌えないんですよねぇこれが!!!えー!ちゃんと歌えないのかい!!!っていう(笑)普通は、ここでばしっと決めてヤクザの時のように全員を黙らせ、テレサを救い出して、ヒューヒューッ!って展開かと思いきや、また歌えなくてバカにされる。でもここで歌えないことが、コージのあがり症や自信のなさゆえの、これまでの生きにくさや悔しさをよく表している…。

でもって、歌えなくてもどかしさが爆発したコージは客やボーイを殴り(ホントすぐ殴る)、殴られ(そしてすぐ殴られる)、ストリップ小屋は客も店員も交えた乱闘騒ぎになってしまう。テレサと踊り子仲間は、コージとオキナワを楽屋にかくまってくれようとする。コージは騒ぎの最中、テレサを買えたはずだった客の胸ぐらを掴んで、耳もとにむかって、「あのふるさとへ帰ろかなーーーーー帰ろうかなーーーーーー」と大迫力で『北国の春』のサビ部分を熱唱。ゲスマネージャーのウクライナー!!!/テレサのこと)って怒声が響いてフェードアウト。

 

そんな中、勢いでコージとオキナワを匿うため楽屋へ連れてきてしまったテレサ

コージとテレサはお互いに好意を抱いているようで、なんだかそわそわと会話をしている。テレサは、さっきコージがちょっと歌った『北国の春』をもう口ずさむことができて、それを「上手だよ!(*'▽'*)」と嬉しそうにほめるコージ。一応ストリップ小屋という場所にもかかわらず、外では乱闘騒ぎが続いているにもかかわらず、えっ??思春期の中学生だっけ???みたいな初々しいハッピー空間に早変わり…!

そんな楽屋に帰ってきた踊り子の一人・エドゥアルダさんは、顔に怪我をしていた。自分を買った客にやられた(多分ひどい性癖の客なんだろう)と手当を始める中、コージは、ここの踊り子たちが不法就労ゆえに救急車も呼べないし、ヤクザたち支配下におかれている悲しい現実を思い知らされる。そしてコージとテレサがきゃっきゃして話す『北国の春』は、「ふるさと」という言葉が歌詞にあって、そんな状況にいる彼女達にとってはある種つらい歌だと。テレサを思うがゆえ、テレサに厳しいマリアン姉さんに、コージは「中途半端にやさしくしないでくれないかな!こっちはそういう心とっくに捨てて戦ってるんだよ!」と叱られてしまう。すごくささる悲しい台詞…。

でも『北国の春』は、「ふるさと」には帰れないからこそ「ふるさと」を思って歌う歌(コージも自身そうだし)。とぼとぼストリップ小屋を後にしながら、「おまえがしっかり歌ってれば伝わったよ!」とオキナワにも指摘されて、落ち込むコージ。そのまま二人はスナックへ行き、呂律がまわらないくらいに泥酔する…。

 

 

酔ってしばらく、二人がベロベロになっているスナックには、あの流しの大野がやってきた。ここは大野の馴染みのスナックらしく、さっそく常連客のリクエストで一曲歌う大野。

 

♪いっぽんどっこの唄/水前寺清子

http://j-lyric.net/artist/a002072/l011fd8.html

すっかり酔っ払って出来上がっているコージは、大野の人の心に寄り添う曲を聞いて感動し、「弟子になります!師匠〜♡」と勝手に宣言して大野に抱きつこうとする。しかし大野は弟子はとらない様子で、すぐに断られる。でもやっぱり簡単にはゆずらない頑固なコージ。

「師匠です!!!」

「ではない!!!」

「師匠です!師匠です!師匠です!!!」

「ではない!ではない!ではなーーーい!!!」

「師匠だって言ってるべー!!!」(ドカーン)

勢いあまって、師匠って言ってるくせに大野を殴るコージ(笑)何すんだと驚く大野に対して、慌てて何か言おうとするも上手く言葉にならず、頭をかかえて「あーーー!!!」と混乱するコージ。よほど慌てたのか店の奥に走っていって隠れてしまうけど、また戻ってきて、そして、

「風の音が胸をゆする……泣けとばかりに………」

津軽海峡冬景色/石川さゆり

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一度歌い始めると、最後には大野の胸ぐらに掴みかかってすごい近さで熱唱するコージ。止まらずに、「なにがあってももういいの…」と『天城越え』まで歌おうとするも、驚いたオキナワに「なんで歌えんだよ!!!」と剥がされて怒られる。「おまえが歌える時と歌えない時の差はなんなんだよ!」と問われても「おらにもわがんねえ…」なコージ。すると倒れていた大野がそっと言う。

 

「言いたいことが上手く言葉にできなくて、やっと喉から出てきてみたら、歌になっちゃったんだろ…?」

 

し、師匠ー!!!(し、白雪ー!!!)はっとして顔をあげるコージ。「そんなんじゃ生きにくいだろ…」という大野の共感の言葉に泣きながら頷く。そんな生きにくい生き方をするコージに自分に似た部分を見た大野は、コージ、そしてオキナワを弟子にとってやることに。

「ついてきな…。おれのショバ…案内するわ」

「師匠〜!!」

かくして二人は大野(以下、師匠)に弟子入りを果たしたのだった…!

 

 

 

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◆感想言いたいタイム

※物語の内容だけ読みたい方は次の青線まで飛ばしてください

 

あーーー!!!酔っ払ってヘラヘラしてるコージくんかっわいいー!!!!

じゃなくて…、ちょっとここで役者さん方すごいよねっていう話をしたいんですが、いやもう本当にすばらしいんですよね……!キャラクターの一人一人がいちいち素敵で粋!しかも全員歌が超うまい。主人公のコージは言わずもがな、ベテラン歌手陣、スナックのママや新人アイドル、そしてオキナワやテレサまでも超歌うまい。歌唱力で選んだの?ってくらいコーラスも大合唱もうまい。

衣装100着超えてるし、だいたいの方が一人で何役もこなしてらっしゃいますが、同じ人だってわかっててもまるで違う人物がそこにいるから、私のような舞台素人じゃ舞台に長けた役者さん方の力には一発KOって感じでした。高田聖子さん、桑原裕子さん(ご結婚おめでとうございます🎉㊗️)、中村まことさん…みんながみんなかっこいいったらもう…!ふりきったキャラクターも多い中でふりきりまくってて、他の役者さん方も声から魅力的だし。でもただ個性だけがズバーンと出てるだけじゃない魅力や、キャラクターの芯が垣間見えて、一人一人に愛情だったり苛立ちだったり切なさだったりが持てる。コージとオキナワの師匠・大野さん=六角精児さんのわびさび感じる渋い歌声も素敵だし、流しの歌手ってことで、親しみやすい雰囲気もぴったり。後半にたくさん登場するけど、師匠と対比になっているような北野波平=西岡徳馬さんのパワフルな貫禄がまたすごいです。70歳とは信じられない。北野波平ったらちょこちょこチャーミングだし!!!徳馬さんと言えば、安田担的には笑福亭カ…じゃなくて「カゴツルベ」を思い出しますけど、それ以来の再会を喜んでいる安田くんと徳馬さんに、我々は喜んでいるよ!!(パンフ読んで号泣しました)

いい味出してる踊り子さんたちは、何よりマリアン姉さんとエドゥアルダさんのブラジルコンビが楽しすぎるし(マリアン姉さんは舞台上でM字開脚するしマネージャーに「腐れチンポ!」とか連呼するエキサイティングさ☆)、役者さんはみなさん日本人ですけど、外国人のカタコト日本語が上手い。テレサだけ本物のカタコトなわけですが、それと馴染む自然。それが馴染む自然なのかな。かといって大げさすぎず…バランスが絶妙だなと毎回思います。フィリピン、中国、日系ブラジル人って振り分けが上手いよなぁ。

 

原作のテレサウクライナ人ではなくてフィリピン人なので、髪も黒くて顔立ちも違うけど、舞台におけるテレサのビジュアルがブロンドヘアで色白なの、すごく効いてるんじゃないのかなと。原作テレサのビジュアルだったら、日本人の役者さんでも演じることができたと思うけど、そうじゃないところにリアリティがあって、台詞一つ一つに不器用ながらも伝えようとする効果が乗算になってとても響く。やっぱりシャーロットさんは綺麗で目を引くし、華があるのにテレサとしての悲壮感も漂ってて素敵だし。コージとテレサが並んだ時に、なんというか、無理くりじゃない?みたいな違和感を感じなかったのも不思議だったなー。だって普通の感覚では、ド田舎から出てきた訛りの強い青年とブロンド美女とか釣り合わないじゃないですか。でも二人とも、社会のカースト低いところというか、埃っぽいところでもがいている境遇が同じだから、自然と寄り添っているふうに見えるというか…。テレサのパワフルかつお茶目で飾らないところがまた、コージにしっくりくるし。テレサの出前アドリブ、いっつも楽しみにしていたよ。

あ、もうすっかり福士誠治さんのファンになったので日々ブログも拝見してますが、福士誠治さんってめっちゃおちゃめな方なんですね。全然そんなイメージがなかった。福士誠治ファンの友達を持つ友人いわく福士誠治さんは社交性オバケ」らしいので、今回の舞台は、社交性オバケと社交性オバケの共演なんだなってほくほくしています。

福士誠治さんファンのみなさま、安田くんも太陽の光をあびて光合成してますよ。同じだねぇ!!!(橋本さんボイス)

原作を読んだ時、個人的に一番驚いたのがオキナワの再現率の高さでした。完璧なオキナワの三次元化…。声質もぴったりじゃないですか?!オキナワの悪ガキっぽいところとか、憎めないキャラクターなところも、面倒見のいいところも、何もかも舞台上でいきいきとしていて…多分後で書きますけど最後のライブシーンでのオキナワの表情がすごく…うっ……

 

 

 

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↓続き

 

師匠に弟子入りを果たし、歌手デビューへの道に一歩踏み出した(?)コージとオキナワのコンビ。昼間は土方仕事、夜は師匠にくっついて師匠の仕事を間近で見ながら、流しの歌手の巧みさを実感していくコージ。※下の三曲は師匠がギター弾き語りで歌う歌たちです。

♪おふくろさん/森進一

おふくろさん 森進一 歌詞情報 - うたまっぷ 歌詞無料検索

♪紅い花/ちあきなおみ

http://j-lyric.net/artist/a002502/l006519.html

命くれない瀬川瑛子

http://j-lyric.net/artist/a00045a/l00682c.html

コージがおふくろさん歌わなくてよかった……じゃなくて、そんな中、昼間工事現場で働いている時にコージは偶然買い物帰りのテレサに偶然再会する。テレサは、昼間に橋本さんと一緒なら外へ出歩くことができるらしく、二人は出会う度おしゃべりをして、少しずつ親睦を深めていく。その過程もまるで中学生みたいで超イジらしいんだ。

ある時、「また、偶然会いたいです」と伝えるテレサ。嬉しそうにうなずくコージ。日々テレサの姿を見つけると幸せそうになるコージの表情たるや…!そして出来る限りのおしゃれ(ワンピース着たり)をしてくるテレサのあどけない乙女心…!いつしか橋本さんや、コージと働く横丁の仲間も、二人を親目線的にあたたかく見守っていく。二人の「また偶然会いたい」「偶然はいやだ、ここで待ってるから!」に変わる。似たような感覚を持っていることに、自然と共鳴して日に日に惹かれ合うコージとテレサ。もうめっちゃ好きじゃん!!!はやく付き合っちまえよ!!!みたいな気持ちに見てるとなってくる。

 

……ちょっと物語とは話が逸れますが。このシーン、観劇していない方にはどう伝えたらいいのか難しいんですが…主軸は、昼間にコージが横丁の人やテレサに師匠の歌について話をしている状況になっていて、師匠の仕事についているオキナワとコージの様子は回想として、同時進行で展開されているんですよね。

▶︎舞台の手前にコージがいて、師匠がここでああしたここしたと回想をしゃべっている

▶︎その回想が映像ではなくリアルタイムで舞台セットの上の方で進行している

▶︎師匠の流しの実演が、コージとテレサとの会話中にはBGMの役割を果たす。

現在と、回想と、音楽とが、全部舞台上で生で展開しているのにきっちりつながっていて、こんな演出見たことないなって思った…初見時感動を覚えました。

 

●突然の信玄餅ひとくちメモ●

コージとテレサがふるさとの話を通じて心をかよわせて、いい雰囲気になるところで、テレサの保護者役のような橋本さんがるるさと話に割り込んできて、彼女のふるさとの名物・信玄餅をコージに押し付けるシーンがあります。それに対してテレサ「タベナイデ…」とそっと言うので、コージは「ドウスレバ…」って呟いて、結果信玄餅を上手側にビュン!と投げます。俺節名物・信玄餅スロー!!二人がアドリブで遊んでる(むしろアドリブではなくなった)ところww

 

 

 

(↓話に戻ります)

コージとオキナワは、引き続き師匠について流しを巡る日々。ある夜コージに師匠の代打で歌うタイミングがやってくる。場所はいつもの馴染みのスナック!緊張しながらも、修行の成果か人前でもきちんと歌えるようにはなったコージ。成長したね。゚( ゚^∀^゚)゚。

 

♪北へ/小林旭

http://j-lyric.net/artist/a000d3b/l0014fc.html

客も盛り上がって拍手してくれる。(この『北へ』がまたのびやか〜な歌声で良い!!!)が、なんと客の中にはあの北野プロの嫌味な奴・大橋、付き人の女性の一人、そして北野波平本人が混じっていた。口の悪い大橋は、コージの歌を「のど自慢の若造」と揶揄する。怒ってつっかかるオキナワを北野が制し(オキナワはコージの歌を本当に信じてるよなぁ)、北野プロ面々は去っていこうとする。

しかし、それを引き止めるコージ。

「北野先生は、どう思ったんだべ?!おらの歌のど自慢だと思ったんだべか?!」

答えを求めるコージに、じゃあ一つだけと北野が言う。

「君は今誰のために歌ったんだ?」

「それはもちろん、あちらのお客さんのために…」

「ではお客さんのために歌った時、君はどこにいた?」

北野は返すが、質問が難しくてコージはうつむく。北野はコージの歌の表現力を褒めながらも、〝歌の中に君の姿が見えなかった〟と、なぜなら客のために歌いすぎたからだと話した。

 

「君の歌には君がいない!以上だ!」

 

それで終わると思いきや、さらに「客のため?何様だ!」と声をあげる北野。コージの歌には自分がなくて、まるで差出人のない手紙のようだと例える。そんな手紙気持ちが悪くて開けたくないと言う。歌の中に自分がないコージの歌では、客が歌い手の背中に自分を投影することができないのだと。歌の景色の中には、まず自分が立つべきだと。歌で嵐が吹き荒れるならずぶ濡れになるべきは君だ…歌で大地が引き裂けるなら奈落の底に落ちるべきは君だ…歌で誰かが死ぬのなら君が死ね!客を殺すな!北野の熱い言葉にコージは呆然と唇をかむ。

 

「今歌っている歌を否定されたら自分自身が否定される…そんな歌を歌いたまえ!」

 

去っていく北野プロの面々。北野の言ったことがよほど刺さったのか、コージはそのまま言葉をなくしてしまった。オキナワは「俺はおまえが、おまえの歌を歌ってるとこちゃんと見たことあるからな!」と励ますけれど、何も言わないコージ。そのまま暗転。

 

 

ラジオから男性アイドルソングのような曲が聞こえてくる。場面はストリップ小屋の楽屋に移った。

マリアン姉さんにテレサが最近明るいことを言われると、踊り子たちは口々に「テレサ買い物の度にこないだの男と会ってるらしい」「青森の男」「歌手を目指してる人」だと楽しそうに言った。橋本さんは、テレサとコージのことをちゃっかりみんなに話してしまっていた。内緒にしていたので慌てるテレサ。厳しいマリアン姉さんに怒られるかと思いきや「男と会うなとは言ってない」とのリアクションで、みんなテレサの恋を喜ぶ。しかし、マリアン姉さんは「惚れるなって言ってんだよ」と重たい言葉を重ねた。確かに、踊り子たちは巡業中でずっとここにいるわけじゃないし、熱海、名古屋、そうやって劇場を転々とする生活をしなくちゃいけないのだ……そうなのか知らなかった!!!!><

「マリアン姉さんは…恋をしませんか…?」

「しないね!したことないね!」

いいや、姉さんも本当は沢山恋愛で失敗してきた…だからこそテレサに厳しく言っているのだった。それでもコージに恋するテレサは、「私も失敗したいです」と切実に話す。家族のために、お金のために、今までずっと失敗できなかった。自分の恋のために失敗してみたい。切ないなぁテレサ…。どんな覚悟で日本に来たんだろう。

 

そんなテレサを思って、こっそり動く橋本さんやエドゥアルダさん。みれん横丁を訪ねて、コージに一座が巡業でここを離れてしまうことを伝える。そして「あの子と失敗してやってくれないかな?」と、テレサを連れ出してくれるように頼んだ。コージは咄嗟にオキナワを見るけれど、相手はヤクザだし、どうせ失敗すると反対するオキナワ。実際パスポートはヤクザに管理されてるし、取り返したところでビザだって切れているから確かに詰んでる。(覗き魔さん…‼︎)

「無理でもいいの、あの子に失敗させてあげたいんだよ…。うしゅうしゅ(うすうす)ダメだって気づいてることでも、飛んび込ませてやりてえの。あの子と失敗してあげてくれないかな?」

ああ〜〜〜エドゥアルダさんのすごく思いやりがあふれた言葉が良いんですよこれがまたね。一緒に覚悟きめて働いてる仲間だもんね。

でもって、テレサに心底惚れているコージはもちろんもうテレサを連れ出す気満々だった。でも一人じゃどうにもできないから、オキナワを頼る他に手立てがない。コージったら上京したての時からオキナワに頼りっぱなし。

「オキナワ…!」

「勝手にしろ!俺はしらねーかんな!」

「オキナワ!!!」

「やあ〜っぱり出るのなぁ声〜!テレサのことになると〜!」

(ほんまそれ)結局、今回もコージの世話を焼いてしまうオキナワが折れて、横丁のみんなを集めて作戦会議をすることになった。

「これは大勝負だぞォ!」あぁぁオキナワほんとやさしいよ;;

 

 

さてさて!その日の深夜・ノラ犬が鳴いているような午前二時、テレサ奪還作戦は決行される。

踊り子たち一座は、あのゲスマネージャーに連れられてヤクザ(冒頭でコージをボコボコにした人たち)への引き継ぎで夜道を歩いていた。パスポートが入ったバッグはヤクザのリーダーの手に渡っている。突然、エドゥアルダさんが前へ出て、「この辺チカンが出るから、お巡りさん多いよ?」と、裏道を通ることを提案。マリアン姉さんだけが驚いていた。反対されると思って踊り子たちはマリアン姉さんにだけ作戦を内緒にしていたのだ。そして裏道と言って一行がやってきたのは、かのみれん横丁

一同が横丁にやって来ると、そこでは真夜中にも関わらずデモ行進が行われていた。これはテレサ奪還作戦のためなので「なにもかも反対だー!世の中腐ってるぞー!」という、特に中身ないデモがオキナワの先導の元で繰り広げられている(笑)

 

騒ぎの隙を見て、テレサを連れ出すコージ。王子様みたいにはスマートじゃないけれど、「どこへ行くの?」というテレサの問いかけに、「どこでもいいよ」とやさしく力強く言うコージがすこぶるかっこいい。かっこいい超好きだ!(どさくさ)この奪還シーンのコージ、本当に超絶かっこいいんです、ありがとうございます福原神!!!状況を把握したマリアン姉さんの協力もあって、無事テレサのパスポートを取り返した二人。そのまま手を取って逃げようとするも、マネージャーに「その男もダメになるぞ!」と大声で引き止められ、テレサの足が止まる。ひつこいジャパニーズマフィアやだ( ⊃_⊂) 気にせず、「行こう」とまっすぐにテレサを見つめるコージ。でもテレサはその手を離してしまう。

「…やっぱり行けない。家族大事だから、まだまだ働かなくちゃ」

「仕事なら他にもあるから!」

「コージも大事だから…私が我慢するのがコージを一番幸せにできるみたいだから」

「おらのことはいいから…!テレサはどうしてんだべ?!」

それでもコージを離れてヤクザの方へ歩いていくテレサ。あともう一歩を躊躇っていると、オキナワの「いいのかよコージ!」と言う声に押され、コージは「ああああーー!!!」と感情を爆発させる。そしてオキナワがギターを鳴らして、コージは歌を歌い始める。まさか上手にある舞台と客席の間の階段で歌うとはなあぁ…!!

 

「生まれるーー前からーーー……結ばれていたーーー」

命くれない瀬川瑛子

http://j-lyric.net/artist/a00045a/l00682c.html

その歌は、前に師匠が流しで歌った時のエピソードをテレサにも話していた『命くれない』。命くれないの意味は「死ぬまでずっと一緒っていう愛の歌」だと、コージはテレサに教えていた。なんてロマンチックなんだろう…目頭が熱い…

コージの魂の歌声に再び心を動かされたテレサ。ヤクザとマネージャーに向かって「アバヨ!」みたいに軽快な敬礼をかまし(おちゃめ)コージのもとへ走っていく。(大阪公演では丁寧なお辞儀だったよ。)思いっきり抱き合う二人と、その様子に喜ぶ踊り子や住人たち。ヤクザとマネージャーは二人を捕まえようと奔走するけれど、オキナワのギターと共に、踊り子や住人たち、そしてコージとテレサの『命くれない』の大合唱の迫力に気圧されてしまう。スキャナーの金子監督も呟いてたけど、レ・ミゼラブルのごとし。

みんなが見守る中、オキナワと一緒に、手を繋いだコージとテレサは逃げていく。三人を追いかけようとするヤクザを制るすのは、マリアン姉さんの大声だった。

 

「もういいでしょ!!テレサの分も、私たちが稼ぐからさあ!」

 

姉さぁーーーん!!!。゚( ゚^o^゚)゚。 ヤクザたちは追いかけることを諦めて、残りの踊り子たちに「行け!」と。テレサの幸せを思いながら、笑って歩いていく踊り子たち。マリアン姉さんは三人が去っていた方をじっと見つめて、「二人とも、幸せになんなきゃ嘘だからね…」と静かにつぶやく。ヤクザたちとはけていき、『命くれない』のアウトロとともに一幕の幕が下りていった。 

 

 

 

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◆感想言いたいタイム

※物語の内容だけ読みたい方は次の青線まで飛ばしてください

 

やっと一幕が終わりました。幕が下りた後の場内のざわめきたるや。えっ何、私何を見たの?的な呆気にとられた感でいっぱいです。ACT通い中は色んな(ジャニオタの)友人を連れて行きましたが、初見の人と観劇した時の、1幕後のリアクションを見るのが楽しくて楽しくて!(誇らしくもあり)

 

1幕ラストの『命くれない』、すごい。『港』で重めのワンパン喰らってたはずなのに、ここでも思いっきり殴られる…圧巻でした。あの小ちゃい階段で歌うなんてなぁ〜〜〜客席に背を向けてる形ですが、そんなな特に気にしてない(?)のも良い…もうコージはあの時テレサしか見てないのがよくわかる。スポットライトに照らされた横顔に光る汗が、髪の毛からぼたぼた落ちててもう…。

コージの本気の歌唱シーンでは、いつも客席のリアクションと舞台上の登場人物たちの気持ちがひとつになる。見守っているような気持ちだったり、お願いって祈っているような気持ちだったり、呆然としてしまったり。『命くれない』の2番では私も一緒にヤクザを糾弾しているような気分になってくる。観客はあくまで観客ですけど、巻き込むエネルギーがものすごいので…。

この舞台って、何気に伏線回収が結構ありますよね。 あの時の言葉が後々繋がるというか。命くれない』もその一つだと思っています。伏線がまた、音楽がらみだから憎い演出だな〜と思います。

 

 

 

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↓続き

 

♪ドンパン節(秋田民謡)

ドンパン節-歌詞(ドンパン節)-

ゆっくり幕が上がるのと同時に、祭り囃子と掛け声が気持ちいいニ幕の始まり!盆踊りを踊る人々の中心には、コージの歌とオキナワのギターがあった。お酒飲む人かわいいね〜♪って歌ってるコージあんたが一番かわいいよ…!!普段のコージのあどけない感じと、何かスイッチ入った時のコージは別人のようなんだなぁ…。

 

二人は流しの他にも、この祭りでの歌唱のように、師匠が紹介してくれる仕事を日々こなしていた。デビューを目指しているけど、その思いはオキナワの方が強くあるようで、優勝すればデビューができる歌謡コンテストへの出場について話し合っていても、コージは「あせるなよっ」とちょっぴりふわふわした様子だった。

「デビューしたからって、流しより偉いってことにはならねえべ?」

「バカ言え!偉いよ!」

「でも、流しだって風呂のついたアパートに住める。テレビもエアコンもないけど……素敵な人もいる♡」

焦って必死こいてそれでようやく世間に追いつける…そう思っているオキナワと違って、今コージがふわふわしている理由は、まさにその愛しい人ゆえなんだろう…。話している内にアパートに帰ると、ちょうどテレサが外に涼みに出ていて、どうやらあれから三人は三人で暮らしているらしい。まさか三人暮らしとは!お金ないものね。

コージは、それはそれはテレサにデレデレ。オキナワがいても構わず激甘バカップルっぷりを発揮している二人。冷えたビールで乾杯していちゃいちゃきゃっきゃしている。思わず外に出て飲んでくると遠慮するオキナワ。

「俺がいたらちちくりマンボが踊れねえってんだろ」

 「ええっ?」

「いまだにテレサとパツイチ決めてないんだろ?さっさときめちまえよ、この童貞野郎っ!」

パツイチ…ちちくりマンボ…(時代)そしてやっぱりコージは童貞か(でしょうね)。そういう話題が恥ずかしいのか、オキナワの言葉をはぐらかして「しょんべん!」と逃げるように一人部屋の中に入っていったコージ。

残されたテレサは(もちろん男子二人の会話は聞こえてないよ)、ため息をつくオキナワに「コージが全然歌に集中してない。私でもわかるよ」と思っていることを伝える。おっしゃる通りで、浮かれたコージは自分に比べてデビューへの執着心も薄いように思える。オキナワは、「そっちも大問題だよ」と、ポロポロとギターを弾きながらみれん横丁のテーマを口ずさんだ。しかもオキナワもふつーに歌がうまいんだよね…。

テレサも良い曲だねと褒めてくれた横丁のテーマは、オキナワが作った曲。本当はコージにも曲を作ってやりたいけど、無名の流しがオリジナル歌っても…と少し謙遜もしていた。テレサは、トイレから戻ってきたコージに姉さん女房の如くびしっと言う。

「コージ!次のコンテスト出なさい。賞金、デビュー、両方持っておいで!」

「おまえが出るなら師匠に(コンテスト出場のことを伝えておくの)は今度でもいいよ」

「はあ〜い」

「はあ〜いって…軽いなぁ」

 「なぁんね〜!」

この、なぁんね〜は至極の可愛さなので今すぐ着ボイスにして配信してほしいです。

とまあ、ふにゃっとした返事にふてくされるオキナワ。焦るオキナワの気持ちに気付かず、コージは相変わらずのご機嫌だった。コージ浮かれてる…

 

 

後日。紳士服の青山駐車場特設会場・《東向島歌謡コンテスト》のステージでは、ゲスト審査員である往年のアイドル・寺泊行代(39)が黄色いフリフリのドレスで歌を歌っている。

 

♪デリケートに好きして/太田貴子

デリケートに好きして 太田貴子 歌詞情報 - うたまっぷ 歌詞無料検索

審査員の挨拶も終わり、コージとオキナワは気合たっぷりに歌を披露する。が、結果は審査員だった区議会委員の娘・よしこちゃんが優勝するという出来レースで、二人はデビューのチャンスをあっさり逃してしまった。\123よしこーっ!/

 

♪十九の春/田端義夫

十九の春 - 田端義夫 - 歌詞 : 歌ネット

帰り際、また次があるさと楽観的なコージとは反対に、「おまえがそんなんだから優勝できなかったんじゃないのか?」と闘志に燃えるオキナワ。

「もう人の歌を歌うのやめようぜ。自分の曲で勝負してぇよ!オリジナル作ってよ…。俺たちの歌だよ!

コージは「おお!それやるべ!!」と喜んで、二人は早速作戦会議だと大盛り上がりする。

 

と、そこへ一人の男がやってきて二人に声をかけた。男は、さっきのコンテストで審査員をやっていた内の一人で、(多分結構弱小だけど)芸能プロダクションの社長・戌亥辰巳だった。すごい名前だ…(笑)サングラスをかけて、いかにも業界人っぽい出で立ち。

何のひやかしだと最初は無視する二人も、戌亥の「俺はおまえたちに一票入れたんだぞ〜?」という言葉に足が止まる。振り返った二人に「おぉ?急にギラつくねぇ」と歩みよる戌亥。なんと言うか……この人の、これから二人の運命を変えそうフラグがすごい。戌亥はさっきの歌を聴いてスカウトにやってきたと言う。

「しちゃおうよデビュー!なんでしないの?あんな歌えて?ほら顔だって悪くない!キレてなーい♪」

「オキナワ…!きたべチャンス!!」

「おおぉ!!!」

アヒル口ありがとうございます。

ついにやってきたデビューのチャンスに、大興奮のコージとオキナワ。戌亥と食事をしながら話をつめることになり、それはそれは嬉しそうに後をついていこうとするけども…

 

「おっと…ここからはビジネスの話だからさ。伴奏の方は遠慮してくれるかな?」

   

なんとも残酷な言葉をかけられる。あーあ…あーあ!!!そんなことを言われるとは想像してなかった二人はキョトン。コージが「オキナワも一緒に…」とあたふた返すけど、「演歌で二人組なんか聞いたことねえだろ」と戌亥はバッサリ。スカウトは二人じゃなくて、コージ一人だけに対するものだった。話を聞いている内、最初は笑っていたオキナワも笑顔がぎこちなくなって、コージもどんどん笑えなくなる。

これまでニコイチだったコージとオキナワ。コージにとってオキナワは、上京して初めてできた友達で(ということは人生で初めて友達と呼べる相手かもしれないし)、いつもギターを弾いてくれて、おごってくれて、色々と助けてくれた恩人。でも、それって音楽をやる上でなくてはならないのだろうか…???良い友達ってだけで、デビューすることに必要なのか…??言葉をなくす二人を見て、戌亥は「ややこしいのは嫌いだ。二人でナシつけてから来てくれ」と名刺を残して帰ってしまった。コージはオキナワに答えを求めるけれど、オキナワは何も言わないまま去ってしまう…。仲良しだった二人に亀裂が走った瞬間だった。もう少し早くオリジナル曲で戦ってれば、オキナワの才能もアピールできたかもしれないのに…。オキナワは、悔しかったり虚しかったろうなぁ。

 

 

一方、テレサパン工場でサンドイッチを作るバイトをしていた。来る日も来る日も、ピクルス…ピクルス…ピクルス…。安月給と単純作業にストレスを溜めながらも、コージを支えようと頑張っているテレサ

そんな中、彼女を苦しめる出来事が起きてしまう。なんとこれまた工場長が酷いゲス男で、テレサがビザが切れていると知って、体の関係を脅してくる。(シュイン‼︎)ビザ切れてるテレサのことを入国管理局に連絡すれば、彼女は日本を強制退去になるし、その上彼女をかくまっているコージまで捕まるかもしれない…管理局に連絡をしない代わりに自分と寝ろという話だった。このくそバターまみれ野郎!!せっかくストリップ小屋を抜け出したのに、どこへ行っても「はたから見たら売春婦だ」と差別を受け、絶望的な気分になるテレサ

 

♪鳳仙花/島倉千代子

鳳仙花 島倉千代子 歌詞情報 - うたまっぷ 歌詞無料検索

「やっぱり器用に生きられないね……」まさにテレサの心情を表しているような歌と共に、場面は変わっていく。むしろ俺節、器用に生きてる人なんて一人もいないんじゃ…。

『鳳仙花』を歌っているのは、なじみのスナックのママで、お客さんとデュエットを楽しんでいるのは店にカラオケを導入したからだった。こうして場面はスナックへ。

時代はどんどん新しいものの波にのまれている。カラオケすげー!とはしゃぐママとお客たちの元へタイミング悪くもコージと師匠がやってきて、流しとカラオケとの対峙により、なんだか気まずい空気になってしまう店内。カラオケが普及すると、流しの出番は減ってしまうのは分かりきっている。カラオケにそそくさ布をかけて、マイクをいそいそしまうママやお客たち。気まずいよね〜><

 

コージはと言うと、戌亥からのスカウトと一人でのデビューの件について、一体どうすればいいのか師匠に相談をしていた。一人じゃ決められないんだろうな。

「おまえ成功するつもりでいるから後ろめたいんだよ…。おまえと別れた方が、オキナワには幸せな将来があるかもしれねぇじゃねえか。そういう可能性も含めて、あいつの将来背負う覚悟があるのか?」

「いやぁ…」

と頭を垂れるコージ。

「なくていいんだ、そんなもん。だから一人で決めろってんだ。だいたい相談してる時点で、華やかな世界に行きたいってのが本音だろ?」

「けど後ろめたいまま行きたくないっていうか…」

「世の中そんなふうにはできてねえよ。後ろめたさのかけらもなく生きて、それで望むものが手にはいるなら、演歌なんて必要ねぇんじゃねえのか?」

「………なら、なおさら歌だけは正直に歌いたいじゃないですか!」

「そうだ!歌には正直でいろ!!歌があればまっすぐ生きられる!歌にすがるしかねえんだ。すがるのはオキナワじゃねえ」

師匠の深い言葉に、「わかりました」と言いながらもテレサにも相談して…」なんてまだまだ優柔不断でいるコージ。コージはまっすぐだけど、本当不器用でしょうがない奴…。

呆れた師匠がママにお勘定を頼むと、ママは「今日はお代いいから!」と慌てて返事をした。いつも流しの歌で賑わっていたはずのスナックも、カラオケにどんどん場所を奪われている。気まずい思いからか、申し訳なさからか、ママはお代をいらない言ったけれど、「もう来るなってか…餞別か」と師匠は呟き、酔いも乗じてか「機械なんかと歌って何が楽しいんだよ!」と喚いてしまう。店を出ましょうと言う弟子の言葉にも振り向かない。

「一人で帰れ」

「じゃあ、また連絡します」

「もういい!どうして俺をおいてけぼりにしていく奴の相談にのらなきゃいけねぇんだよ…!」

師匠゜゜( ⊃_⊂)°゜流しよりデビューした歌手が偉いってことにはならないってコージは思ってるはずだけど…でも、やっぱり華やかな世界と流しは違うものな…。コージはしばらく立ち尽くして、座り込む師匠の背中に「ありがとうございました…」と弱々しく頭を下げると、店の階段を上がっていく。デビューへの道に進んでいこうとする弟子に、師匠は言った。

「あいつと本気で繋がってるなら、また会えると信じてさよならをしろ…」

 

 

その頃コージたちの住むアパートでは、オキナワが一人ギターケースの中に荷物をまとめていた。四畳半?!みたいな狭さ…。悲しいけど、オキナワはやっぱり出ていくつもりらしかった。三人が暮らすボロいアパートは線路が近くて、電車が通る音が大きい。

そこにテレサが先に帰ってきた。スカウトやデビューの件もまだ知らず、オキナワが出て行こうとしていることも気付かないテレサは、突然「私ジャマかな?」と聞く。「ジャマは俺の方だろ…」と返すオキナワ。テレサは工場長に「君のせいで彼氏くんのデビューもなくなるかもしれない」と脅された帰りだし、オキナワは自分がコージのデビューの枷になっていると感じてるところ。どっちも強い人だからそんなことは話さない…つらいけど、すごいよね…。

「誰かの重荷になりたくなくて…私家族が重荷だったから。いい人達だよ?嫌な人達だったら裏切れたけど、いい人達だから…。コージにも、私のせいで何かを頑張ってほしくない。自分の人生を生きてほしい」と、テレサが続ける。その言葉はオキナワにとって、ここを出てコージと別の道をいくことが間違いじゃないとふっきらせるものだった。

 

「ギターケースひとつに納まっちまうくらいの暮らしだったわ…」

 

部屋にギターを置いて出て行こうとしているオキナワの不自然さに気付いて、焦るテレサ。ちょうどそこへ帰ってきたコージ。テレサはオキナワを止めるように促すけれど、コージとオキナワは何も言わずにただお互いの顔をじっと見ていた。電車の音だけが響くアパートがつらい。もう、これ以上はどうしようもないと二人もわかってしまっていたのかもしれない…。オキナワはそのまま二人を通り過ぎてアパートを出ていった。コージは追いかけることなくうつむいたまま。

「コージ!オキナワは…!」

「わかってる!わかってっから……!一人じゃなきゃデビューできねえって言われたから…俺はデビューする。デビューして、おまえを幸せにする…」

「オキナワは?!仲間でしょ?!」

「そんなにしょいこめねえ!!そんなに、なんもかんも幸せにできねえべしゃ…」

 

何度思い出しても涙が出てくるシーンすぎる別れ…誰も悪くないよ…誰も悪くない…テレサは何か言おうとするけど、テレサだけは離さねえから…おまえがいれば戦えっから…」とすがるように話すコージにはやっぱり何も言えず、後ろからそっと、泣いている背中をやさしく抱きしめてあげた。悲しいシーンではあるけど、アパートのセットが下がっていく中で、この時のコージの泣き顔がたまらなくエモい…。

 

 

♪逢いたくて逢いたくて/園まり

逢いたくて逢いたくて - 園まり - 歌詞&動画視聴 : 歌ネット動画プラス

明くる日、コージはデビューを控えて事務所で歌のレッスンを受けていた。(逢いたくて逢いたくて』は、ハイテンションでナイスキャラのなほ先生の歌唱!)なほ先生のもとレッスンを頑張るコージ。

そこへ戌亥がやってきて、一人の女性を紹介する。女性は、歌謡コンテストの時アイドル姿で歌っていたあの行代だった。戌亥は「仲良くな!コンビが仲悪いなんて昭和までの話だ」と笑っている。なんと、コージのデビューは行代とのデュエットCDデビューだと言う。そんなの寝耳に水のコージは、ならオキナワでも…とついこぼす。まあ、それが聞き入れられるわけもなく。

 

しかし、デュエット相手の行代の方がまるでやる気がない。平成の世にわざわざ演歌なのが気に食わないのか、やらないから!と言って外に煙草を吸いに行ってしまう。今回二人が出すCDは、流れる規模こそ小さいものの引っ越し屋のCMタイアップになる予定。戌亥は行代を追いかけて、同じ銘柄の煙草に火をつけて彼女を説得していた。

「板の上で見せものになるためには、隙間がなくちゃいけない」

その隙間と言うのは、客が自分の思いを託す隙間のことだと。年をとった行代は、それ相応のプライドや経験で隙間を埋めてしまっていると戌亥が言う。どうやら、戌亥と行代は長く恋人同士のようだった。

「コージとやれよ。あいつの隙間にゃ人が集まる。おまえはそれを踏み台にすればいい」

 

踏み台に利用されるかもしれない…そんなことは全然知らないコージ。訛りを直せだ…その背広はダサいからもう少しマシな服を着るようにだ…なんだかアイデンティティを否定されるようなことばかり言われるけれど、それでもやるしかないし、歌うしかない…!

♪一番星ブルース/菅原文太愛川欽也

http://j-lyric.net/artist/a04f188/l013933.html

マイクを持ち直して、また歌うコージ。

 

その頃、テレサは工場長と待ち合わせをしてホテルにいた。コージに迷惑をかけられないとまた体を売ることを決断したけれど、「やっぱりごめんなさい!」と部屋の中を逃げまわる。そりゃ嫌でしょうよ〜そんなシュイン奴〜!!「おまえみたいな奴はどこにいっても同じなんだよ!」と、言い争いの末に心ない言葉をかけられるテレサ。灰皿であんな殴るのもすごいけど(笑)

そして、ギターを置いてアパートを出て行ったオキナワはと言うと、ヤクザ絡みの仕事に関わっていた。闇金の回収や暴力で、どんどん悪い方へと転がり落ちていく。あんなにムードメーカーだったお調子者のオキナワの闇落ちは結構しんどいものがある…。心のよりどころをなくして自暴自棄になったオキナワは、借金回収での暴力とストレス発散の暴力の見境をなくし、ついには仕事仲間であるはずのヤクザたちからも見離されてボコボコにされてしまう。野良犬の遠吠えみたいに、悲しく叫ぶオキナワ。もう見てられないよ…。゚( ゚^o^゚)゚。 

 

二人がそれぞれ辛い思いをしていることをまるで知らないコージは、ただ一心不乱にレッスン場で歌を歌っている。これまた、歌っている『一番星ブルース』とそれぞれの葛藤がリンクしすぎてて、すごい。〝一番星〟って、一番星Tシャツを着てるオキナワであり、コージでありテレサであり、歌であり夢であり目標であり…色んな解釈ができる。デビューしてテレサを幸せにする。その想いが溢れすぎてか、コージの歌には余計と力が入りすぎていた。それぞれの気持ちが重なっているような、バラバラになっていくような…演出がすばらしすぎて…!

がむしゃらになっているコージに、なほ先生は言う。 「コージくん、自分のことだけで精一杯の人でしょ?余計なこと抱え込んでちゃもたないぞ」その通りだ…

 

 

……とある橋の上。

すっかり日が暮れた中、北野波平と大橋、いつもの付き人たちが談笑しながら歩いている。酒を飲んだ帰りなのか、北野と大橋はその辺で立ちション(北野波平の体どうなってるんだ問題)。そこに、立ちションも立派な罪ですよ〜と絡んできたのは、あのオキナワだった。ヤクザにボコられた後なのだろう、傷だらけでふらふら。大橋は追い返そうとするけれど、「一緒に坂道転げ落ちてくれる奴を探してる」と、オキナワは引かない。覚醒剤の入った袋を掲げて、これを持って自主してやろうかと恐喝を始めた。

「北野波平の元弟子が覚醒剤所持!事実はどうであれ、週刊誌は飛びつくぜ!」

落ちぶれてしまったオキナワを見て、北野は意外にも「ウチへ来い。ウチで話をつけよう」と誘う。望むところだと北野についていくオキナワと、それを慌てて追いかける面々。

 

 

レッスンを終えたコージがアパートに帰ると、真っ暗な部屋でテレサがぼんやりと座っていた。外は雨。部屋の電気もつけずに、どこか暗い声をしているテレサを心配するコージ。するとテレサ「なんで(私を)抱かない?」とたずねる。結局は工場長を灰皿で殴って逃げてきたけど、あんなことがあったんだもの…キツいよねテレサ…甘えたいよねテレサ゜゜( ⊃_⊂)°゜

「おかしいべ!オキナワがいるのに」

「もういないよ?」

と、せっかく誘ったのに笑ってごまかすコージを見て、あきらめて缶ビールを飲み始めるテレサ。するとコージは急に立ち上がって、ドタバタと背広を脱ぐ。突然始めようとするのでびっくりするテレサだけど、きっとすごく嬉しかったんだろうなぁ…ビールを置いて布団に寝転がる(こぼれちゃうから!→思いっきり仰向け!の流れかわいい)。いそいそ服を脱がせるコージ。でも、テレサに触れている最中、コージの頭の中にはストリップ小屋での競りの光景や声が思い浮かんでしまう。ここのプロジェクションマッピングが怖いったら(人の顔が浮ぶ)!そのフラッシュバックを振り払うかのように、テレサから離れちゃうコージ。察しのいいテレサはすぐに気が付いてしまう。

「私汚い?売春婦の体は嫌?それでずっと抱かなかった?」

何も言えないコージ。

「だまっちゃった…」 

「嫌なんてことはねえ…絶対にねえ!」

「でも勃たない!!」

…」

「いや……いいんだよ…コージはdelicateだから……。頭に浮かぶよね?私がどんな仕事してきたか」

テレサの声から、自分でも自分が嫌みたいな感情がすごく滲み出ている。別にコージを責めたいわけじゃないんだよね。

「情けねぇ…こんなに自分のチンポ情けねぇと思ったことねえよ…。だって、すっげぇ抱きてぇんだ」

確かにめっちゃ情けないんだけど、あれこれ言い訳しないところもコージらしい。その後何を思ったのか「ああもう!言うこときけ!」って自分の股間を自分で殴る暴挙に出るコージ。ちょっと落ち着いて!ww

急にそんなことするのでテレサが驚いていると、コージはテレサの手を取って必死になって言う。 

「だけっから!チンポがなくても、だけっから!おまえのこと何もかんも抱くから……今だけじゃねえ、過去も未来も、全部だけっから!!

 

コージよく言ってくれた…。゚(゚´ω`゚)゚。かっこ悪くてもなんてかっこいいの…コージはかっこ悪いのにかっこいい人なんだった…。

電車の通る音と、その黄色っぽい明かりに照らされるアパートの窓と二人の横顔や影が美しい。知ってたけどコージの中の人の横顔がたまらなく美しい。暗転と共にここで流れるメロディは、この舞台の中で一番おだやかでやさしいピアノな気がするなぁ。

 

そして、次のシーンではコージが爆睡してる、いわゆる朝チュンなんですが………テレサがいない。のに、知らない警官が2人部屋いる。トンカツ屋の大根おろしがうまいから名店、とかどうでもいいこと話してるし。

目覚めたコージはもちろん「なんだアンタたたち?!」ってびっくり。そらそうだよ。コージは起き抜けで、テレサさん、出入国違反で強制送還だから。あのお嬢さんのおかげで、我々はあなたのことは知らないことになってるから」と警官の説明を受ける。ちょうどそこに、テレサが買い物から帰宅。これからいなくなるから、食料品を買ってきてくれていた。「(警察から)逃げろ!」と叫ぶコージをたしなめるテレサ

「私が呼んだの!」

「……はい?」

「自分で呼んだの」

「わ、わかんねえよ…」

「ここにいても、コージに迷惑かけるだけだから」

警察に声をかけ、アパートを出て行こうとするテレサ。わけがわからず、パンツとタンクトップで泣きそうになっているコージはテレサをひき止める。

「何が迷惑よ?!どんな迷惑がかかるのよ?!迷惑だっていい…テレサの良いも悪いも全部しょうつもりで…」

「それがだめなの!!!」 

家族が重荷だった分、自分のために犠牲になってほしくないテレサ。コージの口調も切実だけど、テレサも切実。「コージが私のために何かするのを見たくないの。自分のためだけに生きてほしい」そう言って、持っていた十字架を渡す。

 「ありがとう。昨日のことはいい思い出になったね」

去っていくテレサをあきらめられず、無理やり連れ戻そうとするコージ。

「コージ!落ちついて!」

「落ちつけねえべさ!!」

この顔!!

自分の顔を指さして、やさしく微笑むテレサ

「この先コージが私を思い出すことがあったら、この笑顔で思い出してほしい……。売れてね!立派な歌手になってけろだ!」

そうして笑顔で、本当に去っていくテレサ。コージはしつこく追いかけるけど、警官にアパートに戻され、暴れるのでみぞおちに一発くらってしまいうずくまる。うわああああ!!!!と泣き叫ぶコージ。ボロアパートの布団の上で、パンツとうっすいタンクトップだけ着て、涙やよだれや鼻水も拭くこともなく、泣き叫ぶみたいに歌う。

 

♪引越しをするなら教えてよ/What's Love? 

引越しをするならおしえてよ / What’s Love? ダウンロード・試聴 | オリコンミュージックストア

 

 

 

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◆感想言いたいタイム

※物語の内容だけ読みたい方は次の青線まで飛ばしてください

 

『引越しをするなら教えてよ』が大好きです。どのシーンも、どの歌唱も、無意味な瞬間がなく、話の流れとしても歌としても素晴らしいんですが、引越しを〜のコージを見ていると、どんなことも及第点以上の結果を出す安田くんだけど、もしかしたら一番の武器は芝居という表現なんじゃないのかと思わされるのです。それくらい今回のコージは当たり役だし、この歌唱シーンは、芝居と歌とが感情をつなぎにして境目がなくなっているというか、ひとつになってコージの気持ちをこれでもかと表しているふうに感じる。気持ちを上手く言葉にできなくて歌に乗せてしまう、歌にすがるしかない、不器用なコージがとても愛しく思えるシーン。

舞台見るまで知らなかったけど、この曲自体もめっちゃ良いですよね。なんでカラ俺…じゃなくてカラオケにないの!!サビ後の間奏もまた素敵なんです。暗転の中で鳴り響くあの繰り返しのメロディが、コージの感情をたたきつけられた後の余韻を引き立てているなと思います。普段あんなに見ることができないふとももが沢山見られるからってだけで喜んでいるわけじゃないよ!!!でもありがとうございます!!

 

 

 

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↓続き

 

 

いざ、コージの明るい闇落ち編へ!

今日もレッスン場で歌に励むコージ。テレサと別れて背負うものがなくなり、プレッシャーから放たれたせいか、色々な面が変わってきていた。きつかった津軽弁の訛りもなくし、口調は「そーかな?そーだといいんだけどサァ」みたいに急にかっこつけた感じになる。歌い方もなんだかスタイリッシュになって、いつだって着ていたあのばっちゃんの背広も脱いでおしゃれな麻のスーツを着たり。ヘンプ!/着てみせたって〜着てみせたって〜

 

しかし、デュエット相手の行代は相変わらず真面目には練習しておらず、妙に張り切るコージにちょっとした意地悪も言う。

「あんた私の踏み台だって。一発当たったらコンビ解消。そういう算段だよ、戌亥は」

「……踏んづけられるのはいつものことだべ。それでも、行く道行くしかないって気持ちです」

「………訛ってるよ」 

行代は、アイドル歌手として実際レコ大のステージまで上がった経歴の持ち主。5歳の頃からずーっとアイドルを夢見て、コタツの上をステージに見立てて、アイドルになった自分の自己紹介だって考えていた女の子だった。「福岡県出身、寺泊行代です!好きな色はピンク!好きな食べ物はプ〜リンです!将来の夢は、フワッフワの雲に乗って世界一周旅行することです☆」。そんな昔の話をしながら、戌亥の言った通り、まだまだ青くて隙間だらけのコージを見ていると、行代も何か思い出したり感じたりするのか、しょうがないから本気出すか!という気分になってくるのだった。「よろしく!相棒」とやっと握手を交わす行代とコージ。う〜ん!がんばろ〜ね〜!!

 

 

その頃、北野を恐喝しかけた(むしろしてた)オキナワはなんと北野邸の地下室に閉じ込められいた。外に出してもらえないので、食事以外にやることもなく曲を口ずさんだり、ほうきで掃除をしたりの日々。

で、テレサの方はというと、まだ強制送還されておらず、日本にいた。拘置所で生活しながら、密入国ブローカー壊滅のためにと警察に話をする日々。

 

 

ある晩。

コージと行代のCDを出すにあたってスポンサーになってくれる引っ越し会社の社長との、会食が開かれていた。何人もの引越し屋社員を引き連れた社長その愛人(オツム弱子って役名)、戌亥、行代、コージは、豪華な食事をしながら談笑していた。と言っても慣れないコージは正座してちょっと借りてきたねこ状態だけど…。

社長は行代のファンだったらしく、「憧れの行代ちゃんにお酌してもらえるなんて、仕事頑張ってきてよかった〜!」とご満悦。一方でコージの事は気にくわないのか、「野郎のパートが多すぎる」「あの子必要?地味だし」などと失礼に遠慮がない。お酌しようとしたコージを急に殴り、「リアクションしてよ〜!じゃなきゃこっちが弱い者イジメしたみたいじゃ〜ん」とむちゃくちゃをふるう。シンプルに腹立つ何こいつ!(笑)

それから、デュエットのコージは「着ぐるみでいこうか」と言い放つ…引っ越し会社のキャラクターである『ブット』の着ぐるみを着て歌えと。不安気にコージを見る戌亥だったけど、コージは「なんでも、やらせていただきます」と笑った。ただ、それは顔に貼付けたような笑顔で、テレサやオキナワと楽しく暮らしていた頃の笑顔とは似つかなかった。こういう顔を見るのはしんどいものがあるなぁ(フラジャイルの小早川くんが諦めてる時に似たあれを思い出すんだ私は)。

コージが着ぐるみを快諾したので、なんとか場がおさまったと思いきや、この社長も本当ろくな奴じゃなくて…。社長が「まあ(CDはどうでも)いいでしょ?メインは写真集なんだから」と口にしたことが気になってしまうコージ。「写真集…?今〝脱ぐ〟って…」と戌亥に詰め寄る。コージは聞かされていなかったけれど、行代はCD以外にも、社長に金を出してもらってヘアヌードの写真集を出す事になっていた。具体的に問い詰めようとするコージ。戌亥とコージのやりとりを見ていた社長の愛人が、コージと行代が付き合っていて=それでコージは行代のヌードを反対しているんだと大声で勘違い発言をする。なるほどオツム弱子だ!それで社長も半信半疑になってしまう。付き合ってないですよぉ〜と笑って否定する行代に、社長は「あわよくば芸能人でも寝れちゃうのかなって夢が見たくて(スポンサー)やってんだよ?金で落とせそうな落ち目な芸能人って考えた時に、行代ちゃんだって」とひっどい本音をぶつける。それに怒ったのは行代でも、戌亥でもなく、コージだった。「何言ってんだあんた!!!」と立ち上がる。マジで何を言ってるんだ社長…金出すからってそんな…

 

「本気出すって言ったじゃないですか!こんな男のために脱ぐのが、行代さんの行く道ですか?!」

 

社長はコージに侮辱されたと憤慨して(いや侮辱したのお前やろがい!!)、つれてきた引っ越し屋の社員たちにコージを担ぎ上げろと命令する。なんか寄ってたかって担ぎ上げられるも、邪魔を振り払い、行代と戌亥が恋仲だということも隠さず、思うことをぶつけまくるコージ。

「惚れた女でしょ?!だいたい行代さんが(ヌード)やるって言っても、あんた(戌亥)が止めるのが筋でしょ!!」

社長の前で、行代を惚れた女と言われて慌てる戌亥。

「それ(ヌード)が本当にやりたいことなら何も言いません…!それが五歳の頃からコタツの上でみてきた夢なら邪魔しねえべ…!

切ない台詞そしてここで出てくる津軽弁…(ここはコージの台詞だけど、コージ自身にも言えることな気がする。)

行代は、小さい頃からキラキラした世界を夢見て、一時は栄光のステージに立っていたアイドルで。でも年齢や時代におされて活躍できなくなってきて、それでもきらびやかな世界に生きることを諦めきれなくて体を張る。コージはテレサのことがあったから、いっそう強く止めるべきだって訴えるのかもしれないな。なんでヌードなんだと喚くコージに、ヘアヌードは(当時)解禁したばかりで波が来てんだ!と言い返す戌亥。

「流行り廃りの話はしてねえです!惚れたはれたの話です!」

コージも譲らないけど、かと言って、行代もそこで本当は嫌なんです!と泣き出すような弱い人ではなかった。

「きれいな服着て、お化粧してもらって、満員の客席でちやほやされて。田舎の女の子が魔法をかけられて二十数年、時計の針が12時まわってもまだ輝いているためにはさぁ!ヘアのひとつも出さなきゃいけないわけ!!!」 

ダン!!!と脚をテーブルに乗せる行代。我関せずでテキトーに話を聞いていた愛人が、バカにしたように鼻で笑う。えぐい演出だ。

 

「…本当に魔法なら、そんな必要ないでしょう?!」

「じゃあ呪いだな」

「そうね…いくつになってもスポットライトあびたいっていう呪い」

夢みる呪いだよ……。こっちは呪われる覚悟でやってんだ!着ぐるみひとつで奥歯噛み締めてるような奴に邪魔されたくねぇんだよ!」

 

行代の気持ちを汲んだ上で、惚れてるからやってるんだという戌亥。惚れてるからこそ、夢みる呪いにかかった恋人のために、頭下げて、注目度の高いヌードの仕事をとってくる。自分とはまた違う、二人の強い覚悟を目の当たりにして何も言い返せなくなるコージ。

戌亥と行代は躊躇なく社長に土下座をするものの、機嫌を損ねた社長はそれらを見向きもせず帰ってしまう。スポンサーを怒らせては出るものも出ない。漂う絶望的な空気に、原因をつくってしまったコージは泣そうになりながら二人に声をかけるも、怒鳴ることさえせず二人は行ってしまう。去り際に行代が残した言葉は、トドメの一撃のようだった。

 

「あんたさ、踏み台にもなれないんだね」

 

オキナワと別れ、テレサと別れ、デビューのためだと一心不乱に飛び込んだ先でも道が折れて、真っ暗な中でズタボロになったように泣きわめくコージ。かわいそうだけど、助けを求める相手だってもういなかった。コージは、会食から帰っていく社長の車を無茶して引き止めると、我を忘れたように泣きながら暴れてしまった…。

 

 

そんな中、北野邸の座敷牢に閉じ込められていたオキナワには転機の時がやってきた。

閉じ込められて一ヶ月(長っ!)。オキナワが一人ほうきをギター代わりにたずさえ作曲をしていると、北野がやってきて、オキナワに曲をつくることに奮い立たせようと話を始める。何もない座敷牢の中で、でも何をしてもいい座敷牢の中でオキナワがやったことは、作曲だったのだ。

「お前は歌を作る人間だ!恐喝犯ではない!」

「……もしかして、それを言うために監禁したのかよ?それどんなおせっかいだよ!」

「北野波平は貴様のような人間を見捨てない。なぜなら、貴様のような人間のために演歌があるからだ!貴様を見捨てたら、俺は演歌を歌う資格がないと思ったんだ!」

「貴様貴様って…」

「オキナワ〜!俺は嬉しいんだよ!おまえが〜〜〜その〜〜あのその〜〜」

あのその、と言葉をつまらせたと思いきや、北野の感情は「ああああ〜〜〜!!!」とそのまま爆発。勢い余って座敷牢の扉を引っ張り壊す。そしてオキナワに詰め寄り、そのまま大声で『三百六十五歩のマーチ』を歌い始める北野。わけがわからず驚いて目が点になるオキナワだったけれど、気持ちが高ぶるままに歌いきった北野を見て、思い出すのはコージのことだった。コージも、感情がわあ〜っとなって歌になっちゃう人。

「俺おっさんみたいな奴もう一人知ってるよ……おもしれぇ奴だったよ…」

「そうか。そいつの話も聞きたいがな…まずは曲を完成させろ。出来がよけりゃ、この俺が預かってやる!」

そうして、ぎりぎりで本当の自分は曲をつくりたいんだと認めることができたオキナワ。よかった。本当によかった!!!ギターがわりのほうきを構え、曲作りへのエネルギーを放出する。

「うおぉぉ〜!!!!」

「よっ!オキナワ!かっこいいぞ〜!まるで!俺のようだ〜〜〜〜!!!

そして突如見事な見得を切る二人(笑)なんやかんやと、結局は面倒見がいいおっさんな北野波平が粋だ!オキナワを見捨てないでくれてありがとう北野波平!!

 

 

そんな頃、拘置所にいるテレサは、2人の刑事とすっかり打ち解けてしまっていた(ヴァレーニキ〜!)。これまた一ヶ月も拘置所で過ごしているテレサを気遣い、刑事たちは「この部屋の中でなら何かひとつくらい好きな事をしてもいいんじゃないか」と提案してくれる。テレサ「演歌が聞きたい」とささやいて、『北国の春』を口ずさんだ。『北国の春』は、コージとの思い出の曲でもある…。「上手い上手い!」テレサの歌をほめる刑事たち。

「歌詞の意味を知らない時からこの歌が好きでした」

「確かにメロディも秀逸ですからねぇ」

「きっとこの歌じゃなくても好きになっていたかもしれません…。だって、歌詞とかメロディじゃなくて、気持ちが飛んできたんです…!私、あの人が歌っている時の気持ちを好きになったんです。あれは私の気持ちでした。どうしてあの人の中から、私の気持ちが出てきたんでしょう…?」

あの人=コージだとわからない刑事たちは、あの人=千昌夫のことだと勘違い(ひと笑い起きるとこ)。で、でた〜!名台詞(?)千昌夫の連絡先わかるか…?」

 

 

さてさて。

久しぶりのみれん横丁は、以前よりさらにさびれてしまっていた。こんなところにも地上げ屋が来て、人が減ったらしい。前はボロボロでも歌があって人がいて、活気があったのに、今はさみしくなっている。町でもカラオケの普及で流しの登場が減り、師匠(大野)さえ、仕事を紹介してくれないかと横丁を訪ねてくるほどに。

師匠がやってきたその日はちょうど、人生どん詰まったコージも横丁に帰り着いたタイミングだった。スポンサーの社長を殴ったことでCDデビューの話はもちろんおじゃん。その辺のゴミ山に埋もれながら、テレサもオキナワもいなくなった。残ったのは、冴えない仲間と落ちぶれた師匠だけです」とあきらめモードになり、逆にへらへら・ふにゃふにゃしているコージ。頑張ってなおしたはずの訛りも復活。ここで『港』を歌っていた熱いコージはもうどこへやら…。

「僕の人生もう終わりです」

「めんどくせーなぁ…!そう簡単に終わってたまるかよ。人生ってのはな、すっぱり終われりゃ楽だけど、じわじわ枯れてくからやりきれねぇんだ」

「もうじゅ〜ぶん歌いました!で、届かなかった。力不足です」

意外とさっぱりした気分で、もう十分歌った。そう言うコージに、師匠は「おまえは本当に〝歌〟を歌っていたのか?」と問いただす。流しも散々回ったし、コンテストにも結構出ていたと返すコージ。でも師匠の言いたいことは、そういうことではない。

「(曲が)俺の頭のなかにあるだけじゃ、楽譜だ。俺の口から出て、それは初めて音になる。おまえの耳に届く…まだ歌じゃない!お前の心に届く…惜しい!まだ歌じゃない!おまえが日々のあれこれに打ちのめされて歯を食いしばっている場面で、頭の中で、いつかの俺が口にした詞とメロディーが鳴り響いたのなら、その時初めてそれは〝歌〟とよばれるものになる。俺はそう信じてる。だから自分の歌が歌だったかどうかなんて、すぐにはわからねえ……。十分歌ったなんて簡単に口にするな!!」

「だども…だれになにをどう歌っていいのか、もうわかんねぇんですよ……」

確かに色んなことがあって、目標や歌う意味を見失っててもおかしくない…。隅で力なくうつむくコージ。

 

「そんなコージくんにとっておきの歌があります!」

 

突然、大声と共にみれん横丁に現れたのは、あの北野波平だった。しかも師匠と北野は、大ちゃん・平ちゃんとお互いを呼び合うライバル的な仲だったことが明らかに。

北野が横丁へ来たのは、他でもない、オキナワが作った曲の楽譜をコージに渡すためだった。あれからオキナワは、歌詞を書きメロディをつくり、しっかりと曲を完成させていたのだ。が、今のコージは失意のどん底にいてまともに歌が歌えない心境。「おら色々あって今は…」と首をふり、受け取れないと断るコージ。そこへ対岸から、聞き覚えのあるギターと溌剌とした声が!

 

「何もったいぶってんだよ!カッコつけずにさっさと受け取れ、この田舎モン!」

 

オ、オキナワー!!!!!オキナワを見たコージ(´;ω;`)←こんな顔

 

「よう…。デビューなくなったらしいじゃねーか」

「耳が早ぇな…」

テレサは?」

「国に戻ったよ…」

「なら、もろもろ丁度いいわけだ。おまえが夢も希望も女もプライドもなーんもなくなったら、俺とちょうどよくなると思ってたよ」

北野から1枚の楽譜を手渡されるコージ。それはオキナワが作った渾身の一曲だった。

「気軽な気持ちで見るなよ!俺の思い全部のせたからな!」

「……じゃあ見ねぇ!」

「ちょっとぐらい見ろよ!」

「ちょっとも見ねえ!どうせいい曲なんだべ!」

楽譜を地面に叩きつけるコージ。

「帰ってけれ!!………おら、余計なこと捨てて身軽になって…なのに、自分のことだけでも重荷に感じてるんだ…」

だから、今さら何かを新しく背負い込むなんてできない。泣きそうというかもう泣いてる。這い上がれずにうつむき続けるコージを、オキナワは「情けねえこと言ってんじゃねえよ!」と思いっきり殴る。吹っ飛ばされて、住人が持っていた空き瓶を咄嗟に構えるコージ。

「おーおー!そういう顔してる時の方が好きだぜ?」

オキナワは挑発するけれど、コージはどうしても楽譜を見ないと一点張り。二人は殴ってもみくちゃになって、見ろ!見ねぇ!の繰り返しに…。コージには、どうしてもオキナワが魂込めてつくった曲を受け止める覚悟が持てない。

「自分で歌えばいいべしゃ!」

「俺じゃだめなんだよ!俺一人じゃ、どんなに心をこめてかいた曲も客の心には届かない。俺は誰かの助けを借りないと、自分の思いを伝えられねえんだ!」

「離せ!」

「北野のおっさんも言ってたろ?!…歌は!自分自身でなくてはいけない!それを否定されたら、自分の全てが否定されるような歌を歌えって!」 

(あんなカッコイイ台詞をスナックでめっちゃ大声で言ったのに、「そんなこと言ったっけ?」とか言っちゃうおとぼけ北野波平。こんなシリアスな場面でも笑いが出る舞台…。\ほんじゃ言ったー!!/

 

「これが伝わらなかったら、自分の全てを否定されるような歌を書いた!なのに…歌う前から否定しないでくれよ……!」

土下座みたいにうずくまっていたコージは、オキナワを少し見上げて、楽譜を受け取ろうと葛藤する。一度はそっと手を伸ばす。でも、やっぱり受け取ることができなかった。受け取ってほしいけど、うけとれない気持ちもわかる。しんどい。

「堪忍してけろ……」

「……こっちはもう吐いたゲロだ…今さら飲み込めねぇからな…!これは置いていく!」

うずくまるコージの背中に、ばしん!と楽譜を叩きつけるオキナワ。そのまま(陛下に八つ当たりして)横丁を去っていく。(この時の陛下の殴られて転がるアクションうますぎるwwたまに空中で回転してるw)

横丁の住人たちが「どうすんだ?」と問いかける中、北野はコージに、オキナワに自分とコージが似ていると言われたことを話す。オキナワ、北野波平にコージの話をしたんだね。それを聞いていた師匠は、「奇遇だなぁ。俺もコージは俺に似てると言ったことがある」と微笑む。

 

「じゃあ大丈夫だな。どっちに転んでも、歌は捨てない。存分に悩め」

 

そうして一同は、焼肉を食べに横丁を去っていった。動物愛護団体から苦情が来るくらい食うぞぉ〜!!!/(北野のおっさんは本当いちいちおもろい)

 

 

一人横丁に残され、涙をすすりながらやっとこさ起き上がろうとするコージ。と、近くのトタンの扉がバーンと開いて、「ほっとしてんじゃねーぞ」とすごい早足で戌亥が現れる。びっくりして後ずさるコージ(と観客)。あれ以来CDデビューはなくなったけれど、コージは事務所を解雇になったわけではなかった。戌亥に、「仕事だ」と言われるコージ。行代とコージのデビューソングお披露目のために、戌亥が必死に頭下げてとってきた野外コンサートでの枠が残っていた。歌えないと断わるコージだけれど、こちらの必死に対して、せめてもの穴埋めをすべきじゃねえのか?」と割と真っ当なことを言われてどもる。

「それは…そうだども…」

「逃げんなよ!」

再び一人になり、またすすり泣くコージ。物理的にも精神的にも一人。あんな風にコンビ別れしてしまったし、簡単にオキナワにすがるわけにもいかないのもわかる…。コージはぐずっぐずの声でテレサ……会いてえよぉ…」とこぼした。オキナワが置いていった楽譜が地面に落ちていて、おそるおそる拾い少しだけ見つめると、コージはそれをくしゃくしゃにしてポケットにしまった。

 

 

所変わって、拘置所前。

そこには久しぶりの顔ぶれがあった。橋下さん、アイリーン、そしてマリアン姉さんの姿。三人はテレサの証言によりヤクザから解放され、結局は今日強制送還になるテレサ見送りのため集まってくれていた。警官は、テレサ(≡(/^o^)/テレちゃんさん‼︎)にせめてものお礼にと夜の飛行機までの自由時間をくれる。久しぶりの仲間との再会に、女の子のようにキャーキャーはしゃぐテレサと橋下さん、アイリーン。マリアン姉さんは背を向けていたけれど、テレサはその背中にそっと抱きついた。泣ける…!テレサにこう言うマリアン姉さん。

「なんで私達なの?!見送りに呼ぶべきはあの男でしょう!」

テレサは、沢山考えた結果コージに今日のことを知らせていなかった。拘置所で過ごしている間にいっぱい考えていたという。

「いつもいつも、いつもいつもいつもいつもいつも、頭の中でコージの歌がなってました…」

「なら、なおさら!」

「でも……会うのは怖いです」

そんな中、橋下さんが一枚のチラシを取り出す。テレサが帰国する今日、コージは、プラネットギャラクティカというアイドルグループの野外コンサートで前座をつとめることになっていた。チラシには『演歌歌手・海鹿耕治』の文字が(書いてなかったけどこういうフルネームでしたね)。プラネット↓ギャラクティカ↑????

 

 

♪今夜はプラネット/プラネットギャラクティカ(舞台オリジナル曲)

野外コンサートの会場では、人気の5人組新人アイドルグループ・プラネットギャラクティカがリハーサルを終えたところ。入れ替わりでリハのコージと戌亥にしゃかりきな挨拶をしてはけていくプラネットたち。

本来は行代とのデュエット曲(引越しをするなら教えてよ)を披露する予定だったので、コージは歌う歌が決まっておらず、戌亥がスタッフに渡していたカラオケテープの一曲目『星影のワルツ』を歌うことに。野外会場は天候の雲行きが怪しく、雨が降り出しそうな湿った空気。結局、前座のコージはリハもろくにできず、本番もプラネットの邪魔をしないよう一番だけ歌って終わることになった。そうなっても、もう何も言わないで突っ立っているだけのコージ。「みなさまに迷惑はかけるなよ」と言う戌亥の言葉に、また貼り付けたみたいな笑顔で頷くだけ…。

 

コージも、テレサも、天気も、オキナワが書いたあの曲の行方も、全部不安だらけの中、プラネットギャラクティカの野外コンサートが幕を開けた。

熱烈なプラネットオタ(プラネットTシャツやファンサうちわ装備)がステージのすぐ下まで何人も駆けつけて、プラギャラコール&早くしろと野次をとばす。プラオタ民度低すぎる(笑)このオタク役のみなさん(女性の役者さんは踊り子役とかで結構出払ってるからほぼ男性が女装してるんだけども)がまあ面白くて面白くて。出来レースの歌謡コンテストで優勝したよしこいるし!ドルオタだったのかよ!!

天気もどんどん怪しくなる中、司会者が呼び込んだのはプラネットではなくてまず前座のコージ。プラネット待たせんなよ!!!とキレ気味のオタクはコージの登場に大ブーイングをこれでもかと飛ばし…。

「海鹿耕治です…」

「誰なのよアンター!!」「アシカ?」「ブー!!」

なんなら空き缶とか投げつけられる始末。そんな中、「すぐ終わりますんで」と、気持ちのなさそうな歌をぼんやり歌い始めるコージ(いや普通に上手なんだけどね…)。「別れることはーーつらいけどーー仕方がないんだーー君のためーーー」という最初の歌詞…カラオケテープからてきとーに選んだ割には気持ちがリンクしすぎだよ…。

 

♪星影のワルツ/千昌夫

http://j-lyric.net/artist/a000686/l001034.html

歌の途中、会場にギターを背負ったオキナワがやってくる。どこまでもコージのことを気にかけてくれるやさしいオキナワ。ステージで何の熱もない歌を歌い、客に野次られるコージの姿を目にして、「ちゃんと聞けよ!!コージおまえもちゃんと歌え!!!」と激をとばす。コージはオキナワに気が付いて、ぐずぐず泣き出しながらも続きを弱々しく歌う。1番をどうにか歌ったところで音楽がぶつっと切れて、司会者のむりくりMCでコージは「どうも、すいませんでした…」とつらい笑顔ではけて行こうとする。

だけどオキナワは引き止め、こいつにもう一度歌わせてくれと会場に訴えステージに乱入。激怒するプラネットオタともめながら、「あの歌歌え!!頼む!みんなに聞かせてやれ!」とコージを焚きつけようとするけれど、コージはまるで燃えない。するとついに、ステージを去りかける背中に、

「待って!!!!」

の大声が。ステージ右上のバルコニーに、テレサと、踊り子仲間と、付き添いの警官たちが到着した。「私からもお願いします!もう一曲歌わせてあげてください!」と声を張るテレサ。想像していなかったテレサの登場に、呆然と彼女を見上げるコージ…ウクライナに帰ってると思ってたもんね。

突然の外国人女性たちの登場と、オキナワの乱入、始まらないプラギャラのステージ、わけのわからない状況に客席はざわめきに包まれる。コージはマイクに向かって「すいませんちょっと静かにしてけろ!!!」と叫んだ。久しぶりのコージのちゃんとした声。やっぱり出るのなーーーテレサのことになると!!相変わらずKY気味な橋下さん(だがそこが良い)からテレサの代わりに、これから強制送還で成田に行く途中だと大声で知らされる。

手が届かない場所に立つテレサを見上げるコージは、反対にステージ上のコージを見つめるテレサは、もう、まるでロミオとジュリエット…。

「さっき、久しぶりにコージの歌聞いたけど、よくなかったね…。前は、歌詞の意味がわからなくても、気持ちだけは伝わったよ?頭の中で、いつもいつも鳴っていたコージの歌は、そんなんじゃなかったよ…!」

「頭の中で…いつも鳴っていた…?」

「そもそもコージにはコージのことだけを頑張ってほしくて、私は私のことをって……じゃあ私は何なんだろうって思ったりしてて……」

しどろもどろ、なんとか自分の思いを言葉にしようとするテレサ。でも上手く言葉にならない。なんだか、まるでコージのようで。二人を一番近くで見守ってきたオキナワは必死になって言う。

テレサ!全部言えよ!」

「うまく言えないよ!!」

「うまく言えなくてもいいから!おいコージ!お前もなんか言え!!」

何も言えないコージ。黙ってろよー‼︎なんて野次も飛ぶ中、

しらかばーーーーーあおぞーーらーーみなみーーかぜーーーー…こぶしさく…あのおかきたぐにの…ああきたぐにの………

テレサの大声での『北国の春』が響く。バルコニーの柵から身を乗り出して、届かないコージに向かってテレサは手を伸ばした。

あーーーーーーー!!!あーーーーーーっ!!!!

静寂の中に、テレサの心の叫びみたいな声が広がって、しーんとするコンサート会場。

あーーーーーーーー!!!!!!

黙って彼女を見上げていたコージも、その叫びに共鳴して突然叫びだす。

あーーーーーーー!!!!!

あーーーーーーーー!!!!

あーーーーー!!!!

あーーーーーー!!!!

 

二人だけがわかってる、二人だけが通じ合ってる、めちゃくちゃ感動的なシーンなのに、「何これ何なのぉ?!」ってプラギャラオタのリアクションと台詞でめっちゃ笑いに包まれる(笑)観てる方が泣き笑いとはこのこと…。 

 

「ほら、さっきの歌もう一度!さんはいっ!!!」

「……今でもーー好きだ…!死ぬほーーどーーにーーー!!!」

『星影のワルツ』のサビの最後。コージがコージの歌を歌うと、そこで天気が一気に崩れて雷が鳴り、雨が降り出す。映像じゃなくて、本当の雨。ステージの上でさらさら雨に濡れていくコージ。頭の中でいつも鳴っていた歌…それは、師匠が言っていた、楽譜でも音でもない、まさに…!

「今わかった…足りないもの。それは私です…!」

そう言って手をあげるテレサ

 

「コージは、コージと私でコージだから、私が足りないとコージの歌じゃない。私も、私とコージで私だから!コージがいないと私じゃない!」

 

その言葉に、はっとしてオキナワを振り返るコージ。スーツのポケットにちょっと触れる。そう、丸めてポケットにつっこんだ、オキナワがオキナワの全部をかけて書いたあの曲…。

「オキナワ、あの歌、テレサと一緒に書いたのか?」

「いや…俺一人で書いた…」

離れていたそれぞれ思いが共鳴したかのように、テレサの言葉とオキナワの曲の歌詞はまるでリンクしていて同じ思いのようだった。

「……オキナワ、ギター!!」

雨の中でコージが叫ぶ。いつまでやってんだよー!というプラネットオタの野次は続いている。「おう!一発かましてやろうぜ!」と言うオキナワに対し、「一人で背負わせてくれべしゃ」と一人でギターを弾き歌うことを訴えたコージの目には、さっきまでは失われていた、歌を歌う覚悟のようなものがあった。

「安物だ…濡らしてかまわねぇぜ」

コージの気持ちを汲み、ギターを渡す…託すオキナワ。どんだけやさしくてかっこいいの、オキナワ…。

「改めまして海鹿耕治です!もう一曲歌わせてけれ!」 

 

俺節(舞台オリジナル曲)

一人で生きていけるのと つよがり離した手だけれど

夜と朝の境目辺りに見る夢で お前の名前を呼んでいた

……

ギターを弾き、歌うコージ。物語の佳境、ここで『俺節』を歌うんだなぁ…曲のタイトルであり、物語のタイトルでもある『俺節』。心ないオタクたちはどんどんゴミや物を投げつけるけど、構わずまっすぐに歌い続ける

……

俺が俺と言う時は 俺とお前で俺だから

俺の俺節 おまえ節

コージは間奏で、ステージ後方のオキナワを振り向いて、バルコニーのテレサを見上げた。うん、うん、と頷きあう。歌は2番に入り、コージの歌の迫力に押されて会場の野次やゴミを投げる行為は徐々に止んでいく。自分が作った魂の歌でステージに立ち、本物の歌を歌うコージの背中にそっと涙を流すオキナワ。途中からはその背中を見ることができずに目を逸らしてしまうほど。胸が締め付けられるような男泣きで…。それから、楽しそうに嬉しそうに微笑んで、本物の歌を歌うコージを見守るやさしいテレサ。スポットライトが当たる中、雨はどんどん酷くなって、コージはずぶ濡れになっている。

そしていよいよ2番のサビ…

 

「俺の…俺節ーーー…」

「すいません!!!!」

 

遮ったのは刑事の声。「時間です…ほんとごめんなさい…」飛行機の時間に間に合わないと、刑事たちに連れて行かれるテレサ。本当の本当に行ってしまう。でもテレサは最後まで、この顔を思い出してと笑ったあの笑顔でコージを見ていた…。

テレサがいなくなり、会場の全員がステージのコージを見つめる。テレサがいなくなった方をしばらくは呆然と見つめて、やっとマイクを握ると、

おまーーーえーー…ぶーーしーー……!!

 

コージは最後まで、ずぶ濡れになって泣きながらも『俺節』を歌いきった。ゆっくり暗転する会場中は、次第に大きな拍手に包まれる。居合わせたプラネットオタだけじゃなくて、マリアン姉さんたちだけじゃなくて、客席も。

 

 

 

明るく日のみれん横丁。

住人の一人が拾ってきた新聞には、昨日の、あの大雨野外コンサートの記事が載っている。住人たちは声高らかに記事を読み上げるも、そこにはプラネットギャラクティカのことしか書かれていない。あれだけのことがあったとは言え、無名で前座のコージのことが新聞に紹介されているはずもなかった。それでも、コージの歌を聴いて震えた気持ちは伝えてやろうと口々に話す横丁の住人たち。盛り上がってくるも、肝心の二人の姿が見えない。すると、双眼鏡を見ていた覗き魔さんが声を上げる。

 

「来たぞ!横丁の星だぁ〜!!」

 

ばっちゃんの背広を着たコージと、ギターを背負った横丁にオキナワがやってきた。二人は、コージのデビューステージの記事なんてまるで載っていない新聞を見ながら、あれこれ言いつつ帰ってくる。途端、歓声をあげて出迎える仲間たち。

みれん横丁は相変わらずさびれた場所のはずだけど、最後の景色は最初よりずっと鮮やかで賑やかになり、空もきれいに晴れている。 オキナワは、コージが手に持っている新聞を指差して合図する。

コージは晴れ晴れとした笑顔で、その新聞を空高く放り投げた。

 

 

 

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俺節、本当に本当に楽しい舞台でした。笑って泣いてあっという間の3時間半。ただ感動しただけじゃなくて、舞台にあった台詞や言動のひとつひとつが、ものっっっっ凄く楽しかったんです。ここにはもう書ききれない。
四六時中も好きと言っ\てー♪/も、全部燃えちまえばいいんだー!!!も、いい人だなっ!よく言われるよ!も、どうしたそんな大金?!も、色々あってクビよぉ!も、バターがっ!も、でっきっるー!も、ぽかぽか!も、口が悪いわ臭いわで困ってるのも、青函トンネルの北の入り口北海道上磯郡うんぬんも、カバン投げられて痛えー!!!も、大橋巨泉も、チケット持ってます?も、ヤン坊マー坊も、あんよがじょーず♪も、ちらし寿司も、オッサンの盗撮を見たよね?!も、ぐわーってカバンを胸に抱くのも、ペットの猫ぐるぐるも、ワニに噛まれてるのも、止まらないんですかぁ?!も、じゃんけん勝っちゃうのも、北野波平サングラスも、バイク買って!も、自分のペースで飲みたいのも、覗き魔さん全部除いてたろも、大好きうちわも、あそこにいるの全部地元のダチも、まだ続きますね?も、コージとテレサが喋ってる時周囲警備してる橋本さんの動きも、姉さんツバつけたの?!おかしいんじゃねーの?!も、オホホホホオホホホホも、テレサちゃん悪くないわよーガンバローも、プラネット赤のハァァァーーーー!も、からあげマヨも、なれないよーんそのままじゃよーん!も、ニッポンジンみたーーーい!も、キングペレをペレペレペレペレも、5000円かしてくれるオッサンの4649帽子も、この世界から戦争がなくなるというのなら答えてあげてもいいのも、オメガドライブみたぁ〜い!白鶴〜まる!も、ブット!!!も、ジャミロクワイも、うまいターローメンも、薄めの水割り濃いめも、私の青リンゴサワーも、訛らない訛らなぁ〜い!も、二人で一本でいいすぃ〜も、316円!足りねーじゃねえか!も、麻っ!!!も、戌亥さんのエアドラムも、もうキリがないくらいネタが散りばめられてて、本っ当に楽しかったんだ!!!最後の公演は、もう見れないんだと思うとそういう全部が全部泣けてきて仕方なかったです。


俺節』を歌う前、師匠が言っていた歌についての台詞が蘇るところの回収がとても鮮やかで素敵でした。歌っていた歌が果たして本当に歌だったかどうか、それはすぐにはわからない。大きな挫折を経験して、誰に何をどう歌っていいかわからなくなってしまったコージにとって、テレサの「頭の中にいつも流れていた」っていうあの言葉は、どれくらい彼をどん底から救ってくれるものだったのか…。そして、その気持ちを受けとめて歌う歌があることに、その歌がまた『俺節』であることに、それまでの物語の全部が全部繋がってひとつにまとまるあの感動。ラストにコージが『俺節』を歌うより前に、もう『俺節』のメロディは後半の暗転時などに使われていて、オキナワが座敷牢で口ずさんでいたりもするので、無意識の中ですでに聞いたメロディでもあって。『俺節』を歌い始めた時はタイトルを話したりしていないけど、歌詞にも使われているし、ああこれが『俺節』なんだってスーッと理解できました。

 

 

6月30日に、オリックス劇場で大千穐楽を見届けきました。すごく幸せな千穐楽で、もう千穐楽という記憶を永遠に上書きしたくないくらいだった!

稽古期間で痩せ、公演期間でも痩せ、魂削ってどっぷりコージになっていた安田くん。マチソワ見てるだけで私も痩せるのに、色んな仕事や創作活動をこなしながら、どれだけのエネルギーを注いでいたんだろう…想像もつきません。でも、私はそんなに安田くんが心配ではなかったというのが正直なところでした。だって、いつもカテコで見せる笑顔がすごく充実していて楽しそうで眩しかったので!(ご飯はちゃんと食べてほしいと思ってるけども…)

千穐楽後の挨拶で、舞台上にいらっしゃった福原神が「この芝居を作り上げた、やり遂げた、今日この瞬間のおまえの顔を一生忘れない。かっこいいぞ!ヤス!!」と力強くおっしゃっていました。その時の、安田くんの、ぶわっと感情がこみ上げたような嬉しそうな涙目の顔を、私は一生忘れません。あんな顔私は見たことなかったよ…。徳馬さんが、北野波平の「まるで俺のようだー!!」を付け足してくださって、場内があったかい笑いに包まれて、安田くんは福原さんと抱擁して写真を撮って。カンパニーのみなさんに、会場に、割れんばかりの拍手や歓声を浴びる姿があまりにもきらめいていました。確かにすごく大変だったことは言っていたけど、あんな素晴らしい笑顔を目の当たりにしたらもうファンとしてはただただ幸せでしかなかった…おめでとう、お疲れさま、ありがとうの三つがぐるんぐるん頭を駆け巡りました。両腕をめいいっぱい上げて、両手で思いっきりピースして、達成感にあふれた顔で舞台の真ん中に立って…俺節は、もうこれ以上はないんじゃないかな?というほど今の安田くんの力が全部つまった舞台でした。一生のカンパニーだと言ってました!一生ものの経験を得た安田くんをわたしは見届けた!ファン冥利につきる!サンキューっす!この後うまいチューハイ飲めそうっす!

 

雑誌やパンフレットや福原さんご本人のお言葉にもありましたが、福原さんが学生の頃から好きだった原作の俺節…物作りの世界に入られて、その原作を題材に舞台をつくるとなった先で土田さんが亡くなられて、それでも奥様や編集者の方があたたかくて、何年もかけて形になって…そんなお話を聞いていると、俺節の脚本には福原さんの思いが沢山乗っていて、それってまるで、あの曲にすべてを乗せたオキナワみたいだなと勝手に思ったりして…コージを背負って俺節を届けてくれた安田くんは、本当にコージみたいだなって勝手に思ったりしてました。

山盛りの喜怒哀楽に、夢と出会いと目標と、挫折と努力と決断と根性と絆と希望と…小学生の書き初め課題みたいにきらっきらした言葉たちを詰め込んだような、ど直球どストレートな舞台だったなぁ。

 

しがないオタクの人生にも山あり谷ありで色んなことが起きるけど、一生懸命頑張ってやっていこうと思いました。安田くんの言葉を借りれば、俺節の幕は下りたけれど、心の中にこれからも感じたことを耕していきたいです。

 

本当にお疲れさまでした。
ありがとう俺節!ありがとうコージ!

今度は北海道で関ジャニ∞の安田くんに会えるの、楽しみにしています。