ジャニオタ八十三番地

長く咲く花を見つめています

舞台『ジュリエット通り』が大変だった

 

完全にネタバレです。あと長い。

 

ツイッターに載せたものを、こちらに持ってきてみました。誤字脱字はなおしませんでした、すいません・・・

 

 

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現在シアターコクーンで公演中の舞台『ジュリエット通り』に何度か足を運んでいます。非常に主観的な感想、解釈、登場人物に関するまとめをメモしました。



ちなみに舞台を観劇するのは今年のIf or以来でした。その前もIf orで、その前が多分BOBで、その前はやはりイフオア…あとはもうギルバートとかSHOCKとかドリボとかエイトの舞台ばかりで、つまりジャニオタでしかない観劇歴(という言葉あるのかも知らないけど)です。


そのため舞台や演劇に関しては素人極まりないのですが、今回、安田くん3年振りの主演舞台『ジュリエット通り』を観ての感想や胸の中に残っているものを、ひとまず文章にしておかないと\難しかったなぁ…!けど安田くんがんばってたー!/で終わってしまう気がして、それは非常にもったいないと思えるほどの衝撃をあたえられはしたのです。
(安田くんの舞台は毎回行ってるので本作のニュースが出た時は正直「またそういう役かい!」と思いましたwすいませんでしたwwけど良かったです!)

 


さて月並みな言葉ではありますが、登場人物がとても印象的なキャラクターばかりなので、登場人物についてと彼らの行動・結末を記しながら自分なりにまとめていきます。間違っている部分もあるだろうし恐らく言葉もおかしいですがその辺りはスルーしてください…。

舞台全体の感想は多分いちばん最後に書きます。

あと、全然分からないとこも後ろの方に書きますので「アレこういうことだったんじゃない?」って見解がございましたら是非リプライ等いただければ嬉しいです!誰かと共有しないとわからない><

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〜その① 物語の舞台について〜

街はずれに娼婦館が残る土地。高級娼婦館『枯淡館(こたんかん)』と、その向かいに建つ『田崎家』の邸宅。それらに挟まれた道・通称『ジュリエット通り』。場所・舞台のセットとしてはその三つが殆ど。
※『ジュリエット通り』の名前の由来:昔(現在の『田崎家』が建てられるよりも前)、枯淡館の向かいにはとある会社の寮があり、枯淡館には「ジュリエット」と呼ばれた娼婦がいた。寮に暮らしていた貧しい男は、たった一度だけ買った娼婦「ジュリエット」に恋をしていた。男は「ジュリエット」が通りに現れるのを待ち、眺めていた。その内に「ジュリエット」は金を盗み、男に自分を買うよう金を渡した―――。そんな話の名残りで『ジュリエット通り』と呼ばれるようになった(はず)。

物語が繰り広げられる街一帯の土地は、主人公「太一」の父である「田崎」が持っている土地だが、『向こう側の街』は別の地主の土地であって、この街にある「田崎」の権力や地位といったものは特に発揮されないし、「田崎」自身も『向こう側の街』には行かない(行けない?)様子。また、『向こう側の街』にも『枯淡館』に似た高級娼婦館『流浪館(るろうかん)』がある。


まず長いし暗い、という印象を持つなという方が無理だった。舞台セットも服装も概ね落ち着いた色で一昔前のような雰囲気が漂っていて、でも「LINE」とか最近の言葉も出てくるしやっぱり設定は現代。初日を観た時はとにかく難しかったこともあって、設定が現代というのがどうもしっくりこなかった。現代という割に何か古くない?みたいな。けど二回目以降は、「自分の住んでる世界と違いすぎてるだけか…」と、印象が変化しました。一昔前のような雰囲気=廃退した雰囲気と頭の中で思うようになり、登場人物の普通ではない心理状態と重なっていく感じで、最終的にはあんまり気にならなくなった。まあそら高級娼婦館なんて、ただのジャニオタである自分が知っているはずもないし、シープ乗り回して戦争について言及している人達に出会ったこともないので、その辺はピンと来なくて当たり前かも。

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〜その② 登場人物の考察と結末〜


【田崎】


物語の舞台がある街の一帯の地主。父親の残した広大な土地と、莫大な財産を持って暮らしている。枯淡館の向かいに立派な邸宅を構えた。一人息子である太一を家に呼び寄せ、自分の会社や知人の会社を仲介し就職を斡旋するも、親の敷いたレールを歩くことを頑なに拒んでいく太一と度々衝突してしまう。前妻のヒデコ(太一の実の母)とは離婚し、枯淡館で娼婦をしていたスズと再婚。自らを『足長おじさん』と例えたりもする(そんな良心的じゃなくてさくっと言えばやらしいオッサンだろ、と思ったけど)。枯淡館の主人や女将、娼婦たちとは顔なじみで、枯淡館を訪れる時は一応客ではあるものの、身内のようにくだけた感覚で皆に接し、また接されている。ただスイレンだけは贔屓にしていて男女の関係も持っているし、スズの目を盗んで田崎家にも頻繁に出入りさせている様子。
この物語の中で重要な事柄の一つが、『スイレンが枯淡館のお金を盗んだ際、盗んだお金と同じ額を田崎が枯淡館に返済=肩代わりしてやっていること』。結末から言えば、それは田崎自身がスイレンに恩を着せることで貸しを作り彼女を手に入れるため、妻のスズをも巻き込みスイレンが枯淡館のお金を盗んだように仕立てていた。そのからくりは、物語が進むにつれてふわっと明らかになっていく感じ。
地主である田崎は国会議員のヤエシマと深く関わり贈賄もしてきた。が、『向こう側の街』の権力者や地主、それらと裏で繋がりを持った官僚(国家公務員)ウエダの策略によってヤエシマは逮捕、田崎にも警察の手が伸びることで間もなく財産や地位をすべて失ってしまうような顛末へ。
地主という割に横柄な雰囲気はあまりないけど、枯淡館の娼婦らに「お金のある人はたまに爆発する」と例えられる通り、自分の思い通りとは反する発言をするスイレンを叱ったり、大声を出す場面もしばしば。普段分かりやすく偉そうではない分、ここぞ(特にスイレンと二人きりの時)という時の偉そうな部分や怖い部分(権力を持った男性の当然の矜持みたいな)が際立って見えた。それにしても田崎さんが怒鳴ったり声を大きくしても、\ちょっともう、うるさい!/みたいな嫌な感じがないのが不思議だったな。声が通ってらっしゃるからなのか、田崎を演じてる風間さんの凄さなんだろうな~!
浮気やら贈賄やら悪いことはやってるけど、息子の就職手伝って一本立ちさせようとしたり(元妻との約束で)、ゆがんでたテーブルの脚直したり、別れた妻の商売を気にかけたり(都合いいけど)、普通の人間らしさは当たり前にある。他にも茶目っ気というのかユーモアというのか、そういう類いのオジサンらしさも感じました(スイレンの「途中っぽかったので」という台詞に対しての「そんな表現ある?」とか、中盤のエアカレーとかエスカレーターとか結構可愛らしいよね、と)。
ただまあ、結局は女好きというか…女の人がいないとだめなのかこの人…???ってことを思った。娼婦だったスズを手に入れて、次はスイレンを手に入れようとして、すべてを失う予感で弱っている時にはみんなで食卓を囲もうとしたり、前妻の様子を見てきてほしいと人に頼んだり。けど「金と権力さえあれば女なんて必要ない」って言うようなスタンスのキャラクターじゃないからこそ人間らしいのかな。だからこそ「あの人は一人じゃだめな人だから…」的な情が働いて、スズやスイレンはあんなオッサンに惚れてしまったのかもしれないよなぁ…男の情けない部分が母性本能うんたら系。観ていた私も例外ではなく…、決して見習える人ではなくて権力さえなければ非常に\クソジジイ!/なんだろうけど、力があるゆえ佇まいもダンディに思えたし、年の功なのか言ってることも太一やトモの若者の主張よりどうも筋が通ってる。まったくもって最高ではないけど、最低の父親でもないし。ただ夫としては最低です。
話の最後はスイレンの言ってた通り一人で別荘に向かったのかな?その辺りが曖昧だけど、果たして逮捕されるくらいなら自殺するような人なのか、私には結論付けられないな〜。


【スズ】

元枯淡館の娼婦で現在は田崎の妻。太一の義理の母だが、母親になろうと接している様子は特にない。おそらく娼婦をしていた頃に田崎に見初められてそのまま妻に。若くはないけど愛敬があって可愛らしい女性という印象。田崎がスイレンに入れ込んでいることには話の最初からきっと気付いているものの、何を言うでもなく田崎家の奥様プレイを悠々とやってのけている(ように思い込もうとしてる可哀想な人なのかも…)感じ。また、田崎の指示でスイレンが枯淡館のお金を盗んだようにみせかける手伝いをした。それについては物語の終盤で「(田崎に)従いたかっただけなのかもしれない」と話すけど、その辺りの場面が、物語では描かれていないスズが田崎の妻になるまでの時間を感じさせて良いなと思いました。自分を選んだはずの夫が別の女を手に入れるための罪を、目的を分かっていながらも手伝うってそんなね。けど、勿論好きだから妻がいた田崎と結婚したわけだしね…。女の人の情にもろい部分や、本能的に男性に尽くす部分がスズの行動を通じてなんとなくずーんときた気がしました。別に田崎に依存している感じではないのに自然と。
さて物語の中で、何か大きなことを引き起こすポジションではないのに存在感がすごいスズさん。高岡早紀さんが美しいのも一因だろうけど、ある種ムードメーカーみたいに思えた。買い物して、掃除して、読書して、クルーザーパーティーの出し物考えて、太一と小話して、夫が贔屓にしているスイレンに少し冷たくあたったりして。無論働いていたこともあり枯淡館の人々には好かれているけど、みんな田崎が枯淡館にしょっちゅう来てるもんだから気を遣われていなくもないのか…。
田崎に従ってスイレンを嵌めたことが太一にも明るみになった後は、どこか目を覚ましたような雰囲気になり、いつの間にか誰にも相談せず家を出ていく決心をしちゃってるスズさん。田崎も枯淡館の人も誰も、それを止めないのはスズさんの意思の強さを知っているからなのか、スズさんを思ってなのか、みんなそれどころではないのか何なのか…。とにかく混沌とした『ジュリエット通り』から一抜けしちゃうスズさんはちょっとかっこよかった。元娼婦で愛人だった立場を経験し、逆の立場も経験し、母にも妻にもなりきれなかったスズさんの弱さや脆さは、家を出ると決めたタイミングからまるっと女の人が持ってる強さに変わってった感じがしました。だから登場人物が軒並み破滅の方向に向かっていく中で、最もプラスの方向に変わっていったのはスズさんなんじゃないのかな?
最後は、警察の手が伸びる前に別荘へ向かう田崎の見送りを太一に任せてどこかの街へ行ってしまう。立つ鳥後を濁さず…。最後は太一とはちょっと分かりあえたのかな?「アンナカレーニナ」のシーン含め、別に仲良くはないけど太一との相性は悪くないんじゃないかと思った。


【太一】

田崎家の一人息子で物語の主人公。父の再婚相手であるスズとは血の繋がりはなく、兄弟もいない。隣町で洋服屋を営んでいる実の母・ヒデコに会いに行っているのかも分からない。大学を出たものの就職に失敗し、しばらく父が建てた家で将来を見つめ直していた。が、娼婦だった女性を妻にした上、さらに娼婦の愛人をつくる父を軽蔑し度々衝突。家にいる時は邸宅の離れにこもりがちで、周囲の人間には露骨に冷たい態度と口ぶり。就職するため面接に行った帰り、の設定で舞台に登場する太一だが、その面接も父の手回しだと知ったようで「親のコネで入った会社でコキ使われたくねえよ」等と拒否している。
ある時、家に出入りしていたスイレンに「枯淡館のお金を盗んだのは自分じゃない」と告白され、そこに隠れている真実が気になり始める太一。スイレンが隠していること、父が考えていること、そしてこの街で何が起きようとしているのか。舞台上に出てくる度登場人物らとよくわからない喧嘩になりながら、太一が少しずつ何かを突き止めて行っている様子で話は進む。
太一自身がバタバタと動き出すのは物語が佳境になってからかな。ヤエシマの逮捕で田崎家の雲行きが怪しくなり、その内警察の手が伸びて家にいられなくなることを悟り、今まで目を逸らしてきた現実から目を逸らせなくなった段階で、あれほど頭ごなしに拒んでいたのに父の会社で働くと思い直し(思い直したというか、そういう発想は心の中にあったけど不純な気がして反抗していたのかな)、喪失の渦中で精神的に弱っている父親を自分の行動で救おうとする。ただ田崎にもプライドがあるから、ただいきってるだけの息子には頼らないよね…wでも最後らへんで「あんたの会社で働く!」と太一に言われて、田崎にうれしい気持ちは少しでもあったと信じたい(笑)
物語が動き、二幕の終盤では田崎の地位や財産は失われる寸前、枯淡館も隣町の流浪館に間もなく吸収され、いつも軒先でヴァイオリンを弾いていたキキさえ消え、ウエダらの陰謀に包まれた『ジュリエット通り』で、真実を知りながらも何もできることがない太一。周囲の変化に焦りや恐怖を感じでもしたのか…何をされたわけでもないけど結構頭がおかしくなっていく??よね???自問自答して、逃げるように別荘へ行く予定の父と父についていくスイレンが、心中してしまうと頭の中に矢印ひっぱってきちゃった太一。街を離れるスズの代わりに父の見送りに行こうと田崎を探し、やっと自分の思いを伝えるも(そもそも田崎さんいつの間にか消えるし幻覚かもしれないような演出だよね)、思い通りの展開にはならない。そこでいなくなった田崎の代わりに、枯淡館のバルコニーに札束を持ったスイレンが現れて「このお金で自分を買って」と太一に話す。太一は、スイレンはてっきり田崎と共に別荘へ死にに行くもんだと思っていたから、驚きながらも、会話をする内に、スイレンが持っていたお金で流浪館から彼女を買おうとした自分にはっとする。(あらすじにもあった”愛に目覚めた”っていうのを、私はラスト5分のこのシーンでやっと感じましたよ…。)だからと言って、そのお金で太一がスイレンを買い、二人は愛とも情けともとれぬずぶずぶの関係になっていく………んじゃないんだよなぁ…うーん。難しい!!
今度は自分に救いを求めるスイレンを前に、向かいの田崎家に黒幕であるウエダとそれに従うトモの姿を見つけ、意識がそっちに傾く太一。父の安否を思ってか、彼らを追いかけようとした矢先で雨に濡れた地面にスイレンから受け取った札束を落とし、お金の散らばった地面にしゃがみこむ。で!そこでですよ…この舞台を見終わった後『???』を脳みそに浮かべさせた個人的最大の要因、「蟻だ…。蟻が這ってる…」の台詞。暗転して物語もおわり。


…さてまず、いつからそんな子なの太一くん??ってことが気になる。登場した時は「DQNごっこかよ!」と思ったwwけどいたって普通の青年っぽい部分が見え隠れするあたり、そんな遅い反抗期やっちゃってるのは何が原因でいつからなのか、明確でないから難しい。父親が、愛人が原因で自分の母と離婚したせいなのか、就職できないせいなのか。「アンタのほんとのとこはどこにあんだよ」とか「戦争がどうこう」とか「あんたは裸で歩いてる」とかそれなりに精神論なことを言う場面もあり、トモとも友人でジープの連中にするっと感化されてもおかしくなさそうな立場なのに結果そうはならないし。
あと、女性に対しての過剰な態度もすごい。父親が娼婦の愛人をつくって離婚したことからくるコンプレックスでしょうか。自分より年下で立場の弱いキキにお前の母親は娼婦だとわざわざ言うし、スイレンに話しかける時もやけに攻撃的。サクラさんに詰め寄るシーンは怖いし、いつもだいたい眉間にしわ寄ってる太一くん。キツイし言葉遣い悪いし、でも別に何ができるわけでもないっていう…。女の人に嫌悪を抱いてきたからこそ、その反動で、スイレンとのバルコニーのシーンで彼女を欲しいと気付いた自分に「俺は…今なにを…!」みたいなリアクションなのかな。そこはすごく良いし見所だと。

舞台が始まってから、よく見聞きしたのは『ヤス全然出番がない』問題。確かに主演と聞けば、3時間の公演時間に対して登場が少ない印象は残るよね。純粋に演劇を観るものからすれば「そういう問題じゃない」のかもしれないけど、できることなら一分一秒でも自担が長く舞台に上がっているほど嬉しいジャニオタ的には「思ってたより出ないな…」は思う、と思う。私も初日行った帰りは友人と「ヤス主演だけどそんな出ないね?!」ってなりましたけど(主人公ってなると何かすごく大きいようなことをしそうな先入観があるから、主演として見せ場がどどーん!とあって、素人的には度肝を抜かれるようなことをするんじゃないか…ってハラハラ感を抱いてしまうから勝手にハードル上げちゃっててw)。けど、自分でもびっくりしたのだけど、観劇二回目以降はそう思わなかったんだなぁ。それはまた後にも書くけど、一回目より二回目の方が全然楽しいからだと思う。
この舞台の物語って、仮に『もし太一が出てこなくても成立しちゃってる』んじゃないかなぁとも思った。上手く言えないけど、ヤエシマやヒデコみたいに「太一」も名前だけ出演でもそこそこ話は通じるというか…キャラクター自体としてはそんなにインパクトが残らない太一くん。でもそれがよかったんだろう。で、最終的に思ったのは、対人関係や立場が変わっていく登場人物の誰か一人に視点を偏ると、難しい話が余計とわけわかんなくなっちゃうってことでした。何も企んでいない。何も隠していない。何も掴んでない。そういう、ある種出来事を傍観してるばっかりの太一が主人公として動いているからこそ、観ている方も一緒になって「何?何なの?何が起こってるの?!」感をより味わえてる。枯淡館と田崎家の間に挟まれた『ジュリエット通り』的役割こそ太一というか。渦中にいながら『ジュリエット通り』の変化を見てるのは主要人物の中で特に太一だから、太一はやっぱり主人公だなー、と。

あとやすくんってほんと素敵な役者さんになったよね…。タップダンスのとこの可愛さしかり、壁登る身体能力しかり、そういったオタク的見どころもいくつかありますが、劇中での表情がとても良くて感激だったのでそこは是非双眼鏡で!(前に乗り出したり腕広げたりと迷惑行為をしなければ、双眼鏡は別にNGじゃないよ。)あ、双眼鏡覗いてると話がわかんなくなっちゃうかもって思ってたけど、やすくんが出ている場面は割と大丈夫だと思う。…脱線しました。


スイレン

枯淡館で働く娼婦。勤めてどれくらいなのか描写がないけど、枯淡館の中ではおそらくいちばん最近入った若い子で他の娼婦に比べて謎めいた部分がある。病弱な男を夫に持ったことで金銭に困り、お金を稼ぐため枯淡館で働いている…というテイに最初はなっているものの、それは嘘である(結構さっさと判明する)。金に困っているわりには仕事を休みがちなので、枯淡館の面々はやや不思議に思っているようだが、スイレンが田崎に気に入られ、また愛人関係にあることは知らない。ただスズは気付いているし、太一も知っている。
スイレンが盗んだお金を全て田崎が枯淡館に返済したため、盗んだ後も枯淡館に身をおいているスイレン。枯淡館は田崎家が所有する土地を借りて営業しているから、地主である田崎がスイレンをかばっていることで、縁あってやってきたスイレンをただ頭ごなしに責めるわけにもいかなかった。田崎に呼ばれ、田崎家の邸宅に頻繁に出入りするスイレンは、ある時同年代でもある太一に「お金を盗んだのは自分ではない」「あなたのお父さん(田崎)のために嘘をついた」等と意味深な発言をする。特に家族や友人といった大切な身内がいる様子もなく、生きるために悪いこともしてきたスイレンは(ひょっとして両親は死んだとかワケアリなのかも…って、ウエダに押さえつけられてるとこで思ったけど)、田崎に従い従うことで求められ、不確かだった自分の存在意義を確認することを選択しながらも、本当の私はそんなんじゃないんだ…!と、どこか自分の運命に抗う気持ちがあったのかな。太一にちょっと話そうとしたのは、自分を変えてほしかったのかもしれないと感じました。
一幕。田崎と共に別荘で過ごす約束をしていたスイレンは、同じ日に議員のヤエシマが主催するクルーザーパーティーに参加すると枯淡館の人々に話したことで、田崎の反感を買う。田崎の怒りを鎮めるためか、自分自身を納得されるためか、腕を差し出し「噛んでください」と言うスイレン。二幕。物語が進むにつれ、実は夫はおらず、また田崎の愛人であることを枯淡館の女将らに知られる。その時既に枯淡館は今まで通りの経営が難しい状態にあり(ウエダらの陰謀で今頃警察が風俗うんたらと言い始めていたし、田崎も権力を失いそうだったため)、隣町の流浪館に引き取られることになりかける。田崎の愛人であるスイレンはそれを拒むも、すっかりウエダの息がかかり人が変わってしまった女将はかばってはやれない。そしてスイレンを迎えにきたウエダと一悶着。唯一あたたかい人の心を失っていない枯淡館の主人を思い、主人に暴力を振るうウエダを包丁で刺そうとしてしまう(主人がかばったので未遂)。ウエダに罵られ、それでもやはり殺意を抱いたことを悔やめなかったスイレンは、自分なんてこの世からいなくなればいいのにと泣く。女将に「あんな田崎さんに惚れてんね」と言われたことを否定しないけれど、最後はすべてを失う田崎と共に別荘へは行かなかったスイレンスイレンにとって最も大切だったのは、善くも悪くも自分を見つけて救ってくれた田崎に添い遂げる事よりも、本当の自分を見いだすことだったのかなぁ…。父親を救おうともがく太一に盗んだ札束を渡して「私を買って」と言うスイレン…田崎に従って店のお金に手をつけた罪を被りつづけていたのに「私が盗んだんです」といいはるスイレン(どっちやねん\(^o^)/)…太一に腕をさし出し「噛んで」と言うスイレン…。そして流浪館へ行ってしまったのか、はたまた別荘へ行ったのか、分からないまま。

いやー、もう一言で言うならメンヘラヒロインだよね。自分が何なのか、自分はどうして生きているのか、自分はどこにあるのか、もうとりあえず分からない。分からないし、どこへ行って何をすれば答えが見つかるの?誰がそれを教えてくれるの?的な精神グラグラ+依存体質…と見せかけて、結構自分の意思はちゃんとある女性なんだなと。その辺含めてメンヘラ。よく言う、もう無理死んじゃうって言って泣いてるひと程大丈夫なパターンのやつww
田崎さんには心底惚れていたのかなぁ。自分を見初めた金持ちのオッサンにあれこれ振り回されはしたけど、振り回されることで生きていることを実感していたから、やっぱり田崎は自分にとって必要不可欠だった。金銭に困り安心安定のない日々の中、ふと生まれる虚しさを埋めてくれるのは男性のそういう強引さや、たとえ愛人だろうとも人に必要とされることだったのかも。スイレンはどうなってしまったんだろう〜、けどどこかへ行ってもまた誰かに「噛んで」って言ってそうw
わ〜誰も救われないじゃんこのお話…せめて太一と幸せになってほしいよ〜みたいなミーハーな希望は全然叶えられなかった(笑)ていうか大政絢ちゃんかわいいなオイ…。水球ヤンキース見てたからキャラ違って良いギャップだったし、悲しそうな表情と悲劇のヒロイン感がすごくすてきだった!


【ウエダ】


国家公務員で枯淡館の常連。娼婦・ダリヤの客だが、ダリヤの出勤時間外にやってきてサクラを選んだことからダリヤに怪しまれる。物語のひとまずの黒幕であるウエダ。偉そう感とクズ野郎感と頭良さそうな雰囲気のバランスが絶妙すぎる(笑)
どんな形の係わりかは不明だが、ジープの連中(色々な職業の人間が属しているようなので、ウエダと並ぶような大物もいるのかな?)とは既知である様子。ヤエシマはジープの連中から反感を買っていたから目をつけられ、足元すくわれたのかしらという。『ジュリエット通り』の人々には隠れて隣町と繋がり、ヤエシマを失脚させ、田崎の土地を巻き上げることを企み実行した。枯淡館ではダリヤを贔屓にしながらも上手くサクラに近付き、枯淡館を流浪館へ吸収するためサクラや女将を唆していった。けど、以外とサクラさんに本気になっちゃった?サクラに亭主と別れてくれるよな、とか言ってましたし…でも自分が奥さんと別れろって言われるとごまかす、分かりやすい調子いい男じゃんウエダさん…。それでもしたたかで賢いからこそ、土地を奪う計画をやってのけたんだろうけれど。二幕の鏡でのサクラさんとのシーン&娼婦のみなさんの踊りに囲まれる演出は、女性に翻弄される男性の雰囲気なのかな〜。街からヤエシマや田崎を追い出した後は、ウエダがどんどん権力を握っていくのかもしれないけど、どうなってしまうんだろう。いずれウエダさんも誰かに足元すくわれそう。


【ヤエシマ】(名前だけ出演)

国会議員で、田崎から金を受け取っていた。クルーザー宴会などと、金遣いは派手であった様子が伺える。ウエダらの陰謀によって悪事を暴かれ逮捕された。街頭演説でジープ
の連中に対し言及していたことから、彼らと衝突していたことも劇中で話されている。


【ヒデコ】(名前だけ出演)


太一の実の母親。田崎の土地ではない隣街で洋服屋を営んでいる。それ以外のことは特に話されていない。


【キキ】


枯淡館で働く娼婦・ボタンの一人娘で高校生。ヴァイオリンを弾く事ができる。田崎がボタンを介し、太一にキキの家庭教師を促したことにより半年前まで太一の教え子だった。その縁で物語の序盤では太一に恋をしているが、メールを送っても返信がなく、まるで相手にされていない様子。
面接帰りの太一が持っていた拡声器をジープの連中に返しに行ったことをきっかけに、トモと共にモリオカと知り合い、次第に深い繋がりを持ちながら影響を受け、ついには母であるボタンの元から離れていってしまう。モリオカから外国製の煙草をもらい、それも吸うようになる。学校では母が娼婦であるが故にイジメにあっていたが、やけに大人びているせいもあってか加害者の行動に対して漠然と疑問を抱き、また、母の職業を軽蔑してはいないと明言していた。物語中盤でジープの連中の所持品である拡声器を使い『恋の季節』を歌うことから、その時点でモリオカを含むジープの連中らの元に随分入り浸っている様子が伺える。しかし、終盤ではモリオカをマシンガンで撃ち殺し、更には亡骸を目下に煙草に火をつけるといった想定外の展開に。登場人物の中で最も若く若いらしい部分もあり、感情を大声にしてぶつける印象ながら、単純なキャラクターではない二面性をものすごく感じさせる。同じくキキもどこへ行ってしまったのやら。トモやウエダに付いてくのかな。
キキはほんと、キャラクターも濃いしインパクトも大きい。まさに裏ヒロインみたいな感じ。


【ボタン】

枯淡館で働く娼婦でキキの母。恐らく田崎と同年代で、田崎の父親や古き良き時代を知っている。枯淡館の若い娼婦たちのお局・女手一人で娘を育てる母としてのしっかりした部分と、正反対とも言える脆い部分の二面性が、キキの母であることと自然にリンクするように思える。感情を込めて話すと次第に田舎のナマリがでてくることや、意地を張っても後にきちんとあやまること、親元を離れていくキキに対して「母さんを軽蔑しているかどうかだけが知りたい」と思いのまま口にするなど、根っこは思いやりにあふれた非常に素直な人物である印象。だけど不器用で、ジープの連中に影響されそちら側へ行ってきまうキキを引き止められない。キキが自分の元を去って行っていってから、もうボタンの精神が心配だけど、暗い道にふらふら消えて行ってからもう出てこないので結果やはり心配…。枯淡館も多分なくなってしまうしね…。


【サクラ】


枯淡館で働く娼婦だが、周囲と異なり少々クールで賢い雰囲気。一応先輩であるボタンに淡々と嘘をつき、後輩であるナデシコも上手く従えている。行く行くウエダやジープの連中と繋がっていたことも明らかになるが、客として枯淡館に来たモリオカについたカンナの「よろしく言ってましたよ」や、隣町のヒデコの店に洋服を買いに行っていたりと、確かにそれを頷ける行動はちょこちょことっている模様。スズとは親しい様子だったけど、ウエダやジープの連中との係わりは別に話していないのでスズとは単に友人的な感覚の付き合いに思えましたが。
淡々としていて、裏で物事を牛耳るウエダをも手玉にとっているような雰囲気のサクラが、モリオカやジープの連中(ひいてはその先のウエダ)との繋がりを持っていることを知った太一に詰め寄られ、本質を突つかれることにより初めて取り乱したような様子を見せる場面は印象的でした。トモやキキにマシンガンを平然と渡すあたり、思考は随分ジープの連中に寄っているしサクラさん自身も力があるのかな?ある種枯淡館を売ったサクラは、この先ウエダと不倫してお金や権力に溺れて行ってしまうのだろうかね…出てこないけど旦那さんはどうなるのや…。


【ダリヤ】


枯淡館で働く娼婦。分かりやすい恋愛体質で、怒ったり甘えたり泣いたり喚いたりと素直な人物。客のウエダにすっかりのめり込み、それ故サクラと衝突するも、結局選ばれなかったダリヤは気が触れてしまったようで非常に可哀想。自分を離れたウエダを探して、裸足で枯淡館を飛び出してしまうほど精神面からやられてしまっているダリヤ姉さん…。裸足で通りをうろついていることに見かねた太一に靴を貸してもらったけれど、それからどうなってしまったのか、こちらもまたよく分からない。全然悪い人じゃないから幸せになってほしいけど。


 

【モリオカ】


街にある酒屋の息子。店を継ぐ気はなく、ジープの連中の一員として活動し『ジュリエット通り』の人々には何か迷惑されている。最初はカンナの客として枯淡館を出て行く場面で登場するけど、その時点でカンナが「理屈っぽいのよね」と語っていることから既にジープの連中の中にいるのだろう。度々通りに出てきてはマシンガントークで思想を述べていなくなり、急にトモをボコボコにしたり、フランス語しゃべったりして、もう…慣れないう内はすっごい奇妙で怖い(笑)モリオカが話している事は分かるような分からないような感じだけど、物語の進行とはあまり関係ないというか、Aさんの水田Bさんの水田どうこうとかはそんなに気にせず聞いてればいいと思う。そんなに重要じゃないことだよね多分。内容より大事なのはモリオカがガチってこと(ざっくり)で、トモやキキやサクラに比べると、戦争反対や世界平和を本気で考えている。何も成せない政治に疑問を抱いてウエダに言及し、それで反感を買ったことから撃たれてしまうのかな。正直、モリオカが死ななきゃいけなかった理由がピンと来ないけど…一応個人的な結論としては、ウエダらにとって『目障り』になったってことでFA。二幕終盤の基地みたいなところでは、もう殺すテイ・殺されるテイでそこにいたもんね。キキとはどこまで愛情が育っていたのか分からないけど、キキがモリオカを撃ったのはキキ自身の感情から来るもので、別にサクラやウエダの指示ではなかったと思いました。思いましたっていうか思いたかった。だって、ジープとか銃とか怖いですけど、やっぱちゃんと意志を持って活動していたのに権力者に生意気いったせいで撃たれて死ぬなんてさながら処刑で可哀想すぎる。キキに撃たれてよかったと思う。でもなんで死ぬ必要があったんだろうな…。


【トモ】


街に暮らす若者。と、いうこと以外に基礎情報はありませんが、一応太一の友達でキキとも知り合いの若者。最初は太一を好きなキキに仲を取り持つよう頼まれているけど、いわゆるクソガキ(って年でもないけど)でからかってばかり。キキ同様、モリオカと知り合うことで少しずつ影響を受け、気が付くとすっかりジープの連中に仲間入りしている。それにより太一との係わりもだんだん薄れていく。太一に「いい女だよな、スズさん」と話したり、田崎に向かって「犯罪者」と声を荒げたり、ぐらつく若者を雰囲気を太一以上に背負っている感じ。人に感化されやすい性格なのか、将来がちゃんと定まっていない若者だからなのか、心からモリオカを崇拝している風…だと思いきや結局は更に力のある方へついていってしまうことに。どういうきっかけでモリオカに見切りをつけたのか、それはよく分からない。田崎さんに「ジープを乗り回して楽しいか」と突つかれ、必死になって言い返している姿からは、モリオカのように自分の中にしっかりとした意志があるようには思えないけど、モリオカが死んだことで彼の中で何か価値観や考え方が変わるのかもしれない。トモは引き続きサクラやウエダと共にいるのだろうけど、せめてキキとも一緒にいてくれたらいいな〜。


【女将】


枯淡館の女将さんで、娼婦らにとっての「お母さん」。ちょっとキツそうでテキパキ、サバサバしていて、でも皆には慕われている感じ。突然、警察から風俗の営業許可をとるよう言われて今更なんだと最初は怒り心頭だったけど、物語の裏でいつの間にか乗っ取り勢力の息がかかり、枯淡館を売る方向へ傾いてしまった。先のない枯淡館や働く娼婦たちの行き場を考えて、また力のある人間を見極めて賢く生きる選択をしたのだと思うけど、ウエダに詰め寄られる自分の旦那さんを見捨てるところは悲しかったー。


【主人】


枯淡館の主人で、娼婦らにとっての「お父さん」。温厚な雰囲気で、癒し系といっても過言ではないくらいこの異様な話の中での善人。絆、恩といった人間のあったかい繋がりを重んじていて、娼婦たちやスイレンにも常に優しい様子。代々枯淡館に土地を貸してくれている田崎家には非常に恩義を感じている。不安定なスイレンに最後まで励ましの言葉をかけているけど、田崎がいなくなり、枯淡館の未来が見えない状態で、女将についていくのかどうなのか、案の定そこは描かれておりません。
とにかく唯一いい人すぎてお父さん担になったわ…


ナデシコ


枯淡館で働く若い娼婦。あっけらかんとした雰囲気で、ショートカットでドレスも寒色系、私服もカジュアルで、ダンスの練習シーンでは女将に色気が足りないと叱られることからも周囲に比べてはやや女っけに欠けるキャラクター。先輩娼婦であるサクラと仲が良い、というよりは肩を持っているのか、ダリヤに対してライターの置き場所をしらばっくれるサクラの嘘に対し、すぐに口裏を合わせる器用さも感じられる。


【カンナ】


枯淡館で働く若い娼婦。声が高くノリがよく可愛らしい、ナデシコよりも更に今ドキの若い女性の印象。物語の冒頭では客として枯淡館にきていたモリオカについた様子。重要な何かを担う人物ではないが、モリオカとの会話をいくつか話すので、その内容(・何故娼婦をしているかと聞かれて「お金が好きだから」等と素直に答えたらもっと違う答えを期待されていた。・枯淡館の軒先で会ったモリオカとサクラ姉さんの話をする。等)は少々キーワードのような雰囲気にもなっているのかな。


えーっと…全員書いたと思うので、次!
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〜その③ 難しいところと疑問点〜


(1)時間
まず、非常に時間が分かりにくい。何時なのか、何時間経ったのか、何日目のことなのか。家に帰ってくる田崎をスズが迎えるシーンから「蟻だ…」まで、どれくらいの期間なんだろう?それが分からないとダメってわけじゃないし、人が逮捕されたりしているからそれなりに時は経っているんだろうけど…分かった方が、分かりやすい。演劇ってそういうの考えるな!感じろ!系なのかね。季節も分からないけど、キキ夏服だし春なのかな…。

(2)消毒液のにおい
えーっと、何故そんな匂いがしてるの?その家から時々太鼓の音が聞こえてるって女将が言ってたけど、それだけだし、あんまり気にしなくてもいいのかな?……考えるのをやめた(カーズ)

(3)太一はいつ、ジープの連中とサクラの係わりを知ったの?
中盤、サクラに乱暴に詰め寄る太一ですが、どっちの内側にもいないはずの太一が何故それを知ったんだろう。カンナがサクラとモリオカの話している場面にいたからかな。それだけであんなに詰め寄るほど何かを掴むかね?
この舞台って裏でもあれこれ話が進んでるから、すっごく注視していたつもりでも気付いたらおいてけぼりになりがち。

(4)歯形について
スズさんがクルーザーパーティーの演目用に書いたお話にもでる、歯形と男女の関係性。台本にはスズさんの皮肉がこもっていて、殿様=田崎さんかと思ったけどよくよく考えてみればなんかそれは変。殿様は側妾と小性に歯形を残したわけで、側妾と小性が恋に落ちるんだよね?うーん。スズさんが最後、雨の中で触れている歯形はその昔田崎に残されたもの、で合ってる…のか…。
けど田崎さんやに太一に腕を出して「噛んで」っていうのはスイレンだし。歯形ってどういう扱いなんだろう、この作品の中で。うーん。

(5)鏡の演出
鏡の演出ですが、何狙いなんだろう?鏡を使う事で混沌とした状況が現れているのかな?何で鏡なんだ…結構前列で観た日はチラチラして眩しかったのと自分の顔が映って気になってしまった(笑)岩松さんの舞台では定番のやつなのかな〜。あとそこで太一の「優しいと言わないでくれ!それが真実だったことはない!」みたいな台詞もありましたけど、ダリヤが靴を貸してくれてた太一に優しいねって話した以外に誰かが優しいと言っていたわけじゃなかったから、よく分からない台詞だった。

(6)蟻
そして最大の疑問……最後、なぜ蟻???
スイレンを買うことで太一がスイレンの存在を証明する役割であったはずの札束は、スイレンを手に入れることができない今、一切の価値を無くし、何も語ることのない虫が這っているかの如く無意味になってしまった…のか。すごく単純に考えて、太一が、父親やスズさん、スイレン、家を失ったショックで頭おかしくなったってこと?別荘へ行ったはずの田崎さんが再び出てくるのは時間軸を無視した太一の幻覚??
とにかくポカーンってなりまして。冒頭の田崎とスズの会話(男の子が蟻をつついていて~)とか、太一登場時の拡声器での台詞(蟻の行列に聞いてみたけどうんぬん)が伏線になって繋がってる?のかもしれないんだけど、蟻=価値のないものって表現があった感じでもないし、このラストが非常に観劇後の『???感』を強めるんだよなぁ……。
パンフレットで、『シダ』観たヤスが「着地点がわからない」って書いてたけど、まさにそれでした。演劇って観終わってからアレコレ話したりするのが醍醐味なのかもしれないけど、もう最後の意図だけは岩松さんに聞けるものなら聞きたい…w

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〜その④ 全体的な感想〜

どっかにも書きましたけど、一回目より二回目の方が断然楽しかった『ジュリエット通り』。話の展開や結末がわかっているから、舞台上にいる人物の行動一つ一つに意図を感じられて面白かったです。演出に台詞の意図にも断然気が付けるし。特に枯淡館で娼婦や田崎が、誰かの台詞に反応してとる態度だったり、仕草だったり。その辺はとても繊細な感じした。だから二度目を迷っている方は、もう一度観劇されることを強くおすすめいたします…!
演劇になれていない身からすると岩松舞台は非常に難しく、やっぱり観方が下手で汲み取れない部分もまだまだあるんですが、数を重ねると不思議と中毒になってく感はある…。個人的にはフランス映画っぽいなーと思いました。長いし、悪く言うと退屈なんだけど、でもなんか見ちゃう(笑)
素敵な台詞や、素敵な場面はほんと沢山あります。私はやっぱりジャニオタなので、スズと太一のやりとりが可愛くて好きです。四人そろってのエアカレーのところは、田崎さんの思い出にすがりたくなる部分や四人それぞれの考え方と精神状態をふわーっと感じられて、なくても話しは伝わるシーンだけど、その深い意味を感じない部分が緩急?になっていて、そこも好き。あのシーンが終わったらもうなし崩しだし、あとみなさんかわいらしいし。スズさんの「…吸っちゃお」とかね。客席から笑いが出るのもこの辺がいいばんだったと思う。初日は「え、これ笑っていいの?!いいのかな?!」って感じでしたけど、笑っていいみたいですw
太一の行動そのものを振り返ってみてふと思ったのは、エイト好きな人しか分からないやつだけど、PUZZLEのエイトレンジャーのナスレンジャーみたいだなって…wwでもほんと変わってく両者(ブラックチームとレッドチーム)を見ていて、「あれ……俺まで歌ってしまいそうー!さまよいながら〜♪」ってなるとことか。中立ってほど真ん中でもないんだけど、枯淡館(スイレン)と、田崎家(父)を見ながら自分も感情を突き動かされていく感じが。そう考えると非常に難しい話
のようで流れはシンプルなのかも。

登場人物がみんなそれぞれ理不尽なようであって、なかなか的を得た事も言うところも楽しかった。田崎が太一に言う「働いてみてもいないのに」とか\それな!/ってww太一くんは太一くんなりに悩みを抱えているけど、でも甘えてるよね。みんな正しくて、みんな間違ってて、みんな自分を持ってて、みんな自分が見つかっていない。全体としてそういう印象をすごく受けたし、その曖昧さというのかなぁ…結論が全然出ない感覚が、人間味なのかなと思った。あと、男女の愛よりは、きれいじゃなくても切る事ができない親子の絆の方をより感じました。親子って親がクズでも子供がクズでも切れない縁とか情とかあるからなぁーと。自分は子供はいませんが、思春期に散々親とばちばちして暴言吐いてきたことをなんか振り返って反省してしまいました。
ある程度大人な年齢でこの作品を見られてよかったです。自分が中高生だったら、多分ちんぷんかんぷんだったわ…

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まだ何回か観劇するので、まだ気が付くところがあるだろうし、また心境も変わりそうです。
難しいことに代わりはないんだろうけど、簡単=良いってわけでもないのだろうな。

分かりやすくて親近感があり、自分に近くキャラクターにも共感しやすい作品ってやっぱりすぐ響くから、もっと現実に近しいお話なら一言で「よかった!!!」とまとまるかもしれませんし、ミーハーなのでそういう大衆向けの作品も大好きですが、今回はそうじゃない良さもあることを感じることができました。観劇して、意味分からなくてああだこうだ言って、さも自分が頭がよくなったような気持ちになって(笑)演劇や舞台の大人な楽しみ方をジャニオタは痛感しましたよ^^

観客は圧倒的に女性が多くて自分含めオタばっかりだろうけど、観に来た偉い方がやすくんに興味を持って下さって、また次のお仕事に繋がるといいな。

 

東京公演は折り返しですが、怪我なく楽日を迎えることを誰おまな感じで祈ります。
ありがとうございました、おわり!